W杯で逆転トライを 日本ラグビーに熱いエール作家・池井戸潤さん

――日本代表をどうみていますか。外国出身選手が多く選ばれています。

「もっと日本人選手がそろってないと人気は出ないと思う。ベストは全員が日本人。外国人は母国を離れて日本のために戦ってくれるんだからと、現状を前向きにとらえることもできますが、ラグビーをよく知らない一般の人には違和感があるかもしれません」

「海外の人材を入れて日本の代表を強くすることに、どんな意味がありますか。(国際リーグ「スーパーラグビー」所属の)サンウルブズみたいに、スタメンに日本人が3人程度しかいないのを、日本チームだから応援しろって言われてもね。それで勝てばいいけど、よく負ける。それなら日本人選手をもっと入れて、国際経験を積ませてやればいいのに」

W杯初戦のロシア戦の勝利は「五分五分くらい」(19年6月、東京・渋谷)

――W杯の日本代表にはどんな期待を。

「初戦のロシアには勝てるだろうと言う人が多いけど、そんなはずはない、危ないぞ、と。五分五分くらいじゃないかな。僕のそういう厳しい予想を裏切って勝ってもらえたら、もう最高ですけどね」

――アイルランド、スコットランドといった強豪国との対戦はどうですか。

「前回W杯で強豪・南アフリカを破った試合は、すごく感動的でしたよ。こんなこともあるのか、と。だけど力が互角とは思えなかった。もう一回やって勝てるかといったら、勝てないと思う」

「だけど、この大会で勝てば、すごくファンが増えて、盛り返す可能性がある。W杯は日本ラグビーにとって最後のチャンスですよ。50歳前後のラグビー好きのおっちゃんファンが最後の砦(とりで)のように残っていて、応援している。悲観的なことを言いましたが、勝てば一発逆転です」

――競技そのものに感じる魅力は。

「『やったるでえ』的な格闘技の要素があるのは面白いですよね。ぶつかっていく闘争心。応援しているチームの選手が、相手をタックルで倒して『よっしゃー』みたいな、そういう盛り上がり方ができるのがいいですよね。タックルがバチーンと決まるときって、見ていても気持ちがいい」

――新著には試合前に選手たちが涙する場面など感動的なシーンがあります。どんな気持ちで書いているんですか。

「半分、泣きながら書いてますよ(笑)。だけど、ラグビーで試合前に泣くのは、日本だけなんだってね。日本ラグビーに特殊な光景と聞きました。初スタメンの選手や、ケガから復帰した選手に発言させ、話し手が泣き、聞いているみんなが泣いて、さあ頑張ろうと出て行く。泣かせる演出だけど、いいんじゃないですか」

――海外や日本のトップリーグにひいきのチームはありますか。

「とくにないですね。だけどニュージーランド(NZ)代表のハカ(キックオフ直前のグラウンドで選手が雄たけびをあげて踊る儀式)は見てみたい。動画サイトで何回見たことか。小説の中にも入れようと思ったんですけど、書かなかった。真剣な儀式だし、軽い気持ちで書くのはいけないと思いました」

「選手としてはNZ代表スタンドオフ(SO、司令塔役のポジション)のボーデン・バレットがいい。(作品に登場する若手SO)七尾のモデル。すごいキックパスを蹴るでしょ。ほかに実際のモデルがいる登場人物はいません」

――ラグビーやりたいな、と思ったことは。

「ないです。ラグビーボールにふれたのはきょうが初めて。(体格の大きな選手が多い)フォワードは無理だし。やれても(小柄の選手が活躍する)スクラムハーフくらいかな。だけど地面からパッと放る職人技のパスは難しいでしょうね」

池井戸潤
1963年岐阜県生まれ。慶応義塾大学卒。都市銀行勤務を経て、98年『果つる底なき』で江戸川乱歩賞を受賞し、作家デビュー。2011年に『下町ロケット』で直木賞。半沢直樹シリーズや花咲舞シリーズ、『空飛ぶタイヤ』『ルーズヴェルト・ゲーム』『陸王』『民王』『七つの会議』『アキラとあきら』など映像化された作品も多い。19年6月刊行の『ノーサイド・ゲーム』を原作にしたテレビドラマもTBSが7月からの放送を予定している。

(聞き手 天野豊文 撮影 瀬口蔵弘)

これまでの「W杯だ!ラグビーを語ろう」はこちらです。併せてお読みください。