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カリスマの直言

強い米国株 金融緩和とAI競争力がけん引(藤田勉) 一橋大学大学院特任教授

2019/6/17

対中国輸入関税引き上げによっても、米国のインフレ率が上昇する兆しはない。4月の消費者物価指数(食品、エネルギー除く)は前年同月比2.1%上昇だったが、そのうち財(同)は0.2%下落である(上昇しているのは主に家賃を中心とするサービス)。

■米企業、AI革命をリード

米国株高予想の第2の理由は、2020年代最大の投資テーマである人工知能(AI)において、米国企業が圧倒的な競争力を持つことである。世界のAI革命をリードするマイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、アルファベットなどは中国依存度が低いため、米中激突長期化のデメリットは小さい。米国で米中摩擦の影響を直接受ける主力企業はアップルのみである。とりわけマイクロソフト、アマゾンは世界のクラウドサービスにおいて圧倒的なシェアを持つ。さらにアドビ、セールスフォース・ドット・コムなどもクラウド化に成功し、急成長しつつある。ビザ、マスターカード、ペイパルなどのフィンテック企業も世界的なキャッシュレス化の恩恵が大きい。

さらに20年以降、本格的に普及が始まる次世代通信規格「5G」はAI、コンテンツの価値を高めるであろう。移動体での高速通信が可能になるため、ウォルト・ディズニー、ネットフリックスなど強力なコンテンツを持つ企業の恩恵は大きい。ちなみに上述の銘柄で過去1年間の株価上昇率が最も高いのがペイパルの35%、次いでマスターカードの32.9%、ウォルト・ディズニーの32.8%の順である。

米国株を取り巻く環境は依然として楽観はできず、20年11月の米国大統領選挙を控えてトランプ大統領は中国などに対して厳しい圧力をかけ続けるだろう。ただし対外強硬策は国民の支持を受けやすい。CNN世論調査(4月25~28日実施)によると、トランプ政権の経済政策に対する支持率は56%と過去最高を記録した(不支持率は41%)。共和党支持者による支持率は90%(同9%)、高卒以下の白人の支持率は66%(同32%)とコアの支持層から高い支持を得ている。

一方で日本株を取り巻く環境はたいへん厳しい。今後、米国の金利低下により、円高圧力がさらに強まろう。また自動車、電機、機械など主力産業の中国依存度は高い。成長分野であるAIではソフトバンクグループ、キーエンス、ソニー、リクルートなどが世界的な競争力を持っているものの、数は多くない。コンテンツなどにおいても世界で活躍できる企業は限られるため、有望な銘柄に絞りこむ必要がある。

藤田勉
一橋大学大学院経営管理研究科特任教授、シティグループ証券顧問、一橋大学大学院フィンテック研究フォーラム代表。経済産業省企業価値研究会委員、内閣官房経済部市場動向研究会委員、慶応義塾大学講師、シティグループ証券取締役副会長などを歴任。2010年まで日経ヴェリタスアナリストランキング日本株ストラテジスト部門5年連続1位。一橋大学大学院修了、博士(経営法)。1960年生まれ。

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