あちこちで目にする「老後破産」という言葉。老後の金融資産が約2000万円必要との金融庁の試算は波紋を呼んだ。自分も破産するかもしれないという不安を抱いている人は多いのでは? だが、将来のお金の出入りをシミュレーションする「ライフプラン表」を作れば、漠然とした不安は解消できる。シングル、DINKS(夫婦2人、子供なし)、2人の子持ち夫婦の場合に分け、標準型、節約型のライフプランで人生100年時代を展望する。
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少子高齢化で公的年金制度の改悪は避けられないのに、「65歳になった女性の半分は90代まで生きる」とされる現代。みんなが老後破産のリスクを意識するのは無理もない。ただ、リスクの具体的な大きさが分からないために、過剰に恐れている人が多いことも事実だ。
「年金が『今より』減るのは確実ですが、今の20~40代にとっても老後を支えてくれる存在であることは変わりません。誰もが老後破産寸前とは考えないで」と語るのは、社会保険労務士でFPの佐藤麻衣子さん。不安を取り除くために佐藤さんが提案するのは、「100歳までのライフプラン表」。いつ、どれだけの収入や支出が発生し、いくらお金が残るかを、100歳時点まで見える化してしまう表だ。受給額が減少した年金のもとでも成立するさまざまなライフプランの例を紹介する。
●年金などの将来はみんな不安ですが実は意外と大丈夫です
●自分の老後のお金がどうなるかプロに聞かなくても分かります
●現代はあなたの想像以上にいろいろな生き方ができます
【1】一生シングルでも安心なお金&住み方シミュレーション
おひとりさまのままで老後は大丈夫? 実は意外に余裕です
ここからは、さまざまな生き方、働き方のライフプラン表を作り、100歳までのお金がどうなるのかを検証してみます。まずは年々増えている、一生シングルで生きていく人の場合をチェック!

身軽さは魅力だけれど、老後に家族の助けもなく、年金も少なそうで不安な「一生シングル」。不安解消のために、早速ライフプラン表を作ってみよう。まずは、会社員のまま65歳まで勤めるプランから。
すると意外な結果に。給料は今後も上がらず、退職金や公的年金が現在の標準より大幅に少ない前提でも、100歳時点で500万円以上が残るという。病気や海外旅行など臨時支出は見込んでいないが、住居費以外の予算を月13万円確保してこの結果なら、十分な「余力」といえそう。
もう少し支出を抑えられれば、さらに自由な生き方ができそう。もう一つのプランは、シングルの強みを生かして、シェアハウスで住居費や生活費を抑制。今より収入を下げて「好きな仕事」をしても、資産額にはさらに余裕が出た。意外にシングル人生、無限の可能性が開けているかも。
■このプランの人生設計
【住まい】49歳まで月5万円のシェアハウス。50歳でオフィス兼住居を賃貸、70歳からは月6万円の高齢者向けシェアハウス
【働き方】50歳から時短などで会社の仕事を減らし(年収240万円)、51歳から自営業(年収120万円)と両立。65歳で会社員は定年だが自営の仕事は70歳まで継続
【生活費・保険など】月の日常生活費は49歳まで10万円、69歳まで11万円、70歳以降9万円。予備費に年5万円。さらに70歳まで年5万円の旅行予算。60歳まで就業不能保険月額5000円
【資産運用】iDeCoに60歳まで月2万3000円を拠出
いろいろな人と交流するためにシェアハウスを選べば、支出も抑えられて一石二鳥。その上で人生の一時期、会社員の比重を下げて好きなことも仕事にする複業生活の時期を用意。シングルの身軽さを生かした、変化のある自由な人生の一例!
注)収入は額面、支出には社会保険料や税金も含む。住まいが賃貸の場合、2年ごとに家賃1カ月分の更新料が発生する前提。ライフプランはいずれもFinancial Teacher System 6で試算。iDeCoは年1.5%で運用(次ページ以降も同)