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人材のおしながき、医師が呼ぶMRを目指す 中外製薬

中外製薬 チームCSK(下)

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NIKKEI STYLE

医薬品業界に長年続くMR(医薬情報担当者)の担当制度。若手の女性チームがその制度を根本から見直して「コンシェルジュ型営業」を提案、実験的に現場で運用してみた。その試みは2019年2月に開催された「新世代エイジョカレッジ(エイカレ)」のサミットで大賞に選ばれた。前回の「付き合いよりも役立つ情報を 中外製薬女性MRの挑戦」に続き、5人のメンバーに話を聞きました。

今までは見えにくかった中外製薬の魅力

白河桃子さん(以下敬称略) 前回、説明していただいた「おしながき」に掲載されている社員の皆さんは、営業職以外の方々なので、普段は顧客に接する機会はあまりないのでは?

深沢明子さん(以下敬称略) はい。これまでも顧客から要望があれば同行をお願いしていましたが、「こういうメンバーがいます」と積極的に紹介することはしてきませんでした。

白河 顧客からすると、今まで見えてこなかった中外製薬の価値ということになりますね。実際に配ってみてどんな反応がありましたか。

小林真由さん(以下敬称略) ドクターの中には「どうせ薬の宣伝ばかりしてくるんだろう」と、MRから積極的に営業されるのを嫌う方もいらっしゃるのですが、「おしながき」をお見せしたときには「薬剤の安全性について正確な情報を詳しく説明してくれる人もいるんだったら、ぜひ話を聞いてみたいね」と好反応をいただけました。「営業トークは好きじゃないけれど、こういう幅広い情報提供の窓口になってくれるんだったらいつでも来ていいよ」ともおっしゃってくださって手応えを感じました。

白河 新たな信頼関係構築の結果、自社製品の採用にもつながっていきましたか?

小林 はい。実証実験を実施した月のエイカレメンバーの実績は、前年同月比で106.3%になりました。「おしながき」の仕組みそのものに対しての感想もアンケートで集めてみたところ、「面会実施者満足度100%、継続希望96.8%」と高い評価をいただけました。うれしかったのは、「君たちが考えたの? そのアイデアを後押ししようとする文化があるんだから、中外製薬って面白い会社だね」というコメント。会社の魅力アップにも貢献できたことがうれしかったです。

深沢 「今すぐにお願いしたい情報提供のニーズはないけれど、こういうコミュニケーションが可能になるなら、今後も頼りにしていきたい」という反応もありました。

白河 まさに、多様なご要望に応えるコンシェルジュのような営業スタイルですね。ただ、これを可能にするには、他部門の理解・協力が不可欠ですよね。実際の同行の要請にも応えていただかないといけないわけですし。そのあたりに苦労はなかったですか。

深沢 そこが一番大変でした。おしながきに掲載許可をもらいたい担当者ご本人との交渉に至る前に、「他部門の仕事を増やしてもいけないから」と上司からストップがかかってしまって……。交渉の段階にも進めない場合もありました。

現場に出て顧客の声が聞けてよかったという評価も

白河 従来の常識を壊して新しいことを始める時には、どうしても抵抗が生まれるものですよね。どうやって説得していったのですか?

斎藤真美さん(以下敬称略) やはり上長から順に承諾を得ていく方法をとりました。

白河 説得するには、掲載される側のメリットを伝えることが重要だったのだろうと推測します。実際に協力してくださった方からは、どんな反応が?

小林 「現場に出て顧客の声を直接聞けたのはすごくよかった」と喜んでいただけたのは私たちもうれしかったです。営業職以外の社員が顧客と接する機会はただでさえ限られる上、昨今のルール厳格化でますます難しくなっていますので、貴重な機会ととらえてもらえたようです。

安藤千尋さん(以下敬称略) 当社の強化ポイントである「部門間連携」を促進するきっかけをつくれたのではないかと、私たちも自信を持てました。

白河 実証実験の結果が出て、エイカレで見事大賞もとられ、その後の社内での横展開はいかがですか?

小林 全社的な導入につながるにはまだまだステップが必要ですが、私の所属している支店では継続のご要望が強かったので、さらなるブラッシュアップに取り組む動きが始まっています。

深沢 「おしながき」への掲載を協力してくれた他部門の担当者も手応えを感じたようで、「このプロジェクトの成果について、部門の社員にも詳しく説明してほしい」と言われて、社内講師として話す機会を何度かいただきました。私たち営業職発の問題意識から始まった取り組みでしたが、協力先となった部門からも促進の流れが生まれています。

小林 顧客向けに実施していた研究会や講演会の運用も、よりニーズに寄り添えるものになってきました。今回の「おしながき」を通じて、医療制度の担当者を連れて、がん患者の就労支援にかかわる診療報酬の制度改定について説明に行ったときに、現場の医師の方々から非常にニーズが高まっているテーマなのだという感覚をつかんだんです。制度をすでに運用している近隣施設や自治体の担当者、大学講師の方々にも集まっていただいて講演会を実施したところ、「こういう企画をしてくれて助かった。とても感謝している」とのお言葉をいただけて。単に「当社の薬を使ってください」と説明する研究会ではなく、長い目で見て顧客をサポートする視点で企画することが、信頼にもつながっていくのだと確信できました。

社内のネットワークが広がる

白河 MRの皆さんにとっては、情報の守備範囲が格段に広がりますよね。ご自身にとってのメリットも感じられましたか?

深沢 社内のネットワークが広がったし、深まったことは大きなメリットだと感じました。部門間連携を取りやすいツールがあることで、入社してまもないMRでも「困ったときにはこの人に相談しよう」というルートを持つことができます。経験年数を重ねなければ培えなかったノウハウを短期で獲得できるので、とても効率がいいと思います。

白河 なるほど。「おしながき」があれば担当者が交代しても引き継ぎもしやすくなりますよね。労働時間に関しても改善のきっかけになりそうでしょうか? MRは女性に人気の職種ですが、研究会対応などで夜遅くまで仕事をすることも多く、ライフイベントと両立しづらいという声もよく聞くのですが。

深沢 私は子育てで時短勤務中なので、これまでも夕方以降の研究会対応は他のメンバーに代行をお願いすることが多かったのですが、他部門にも顧客と面識のある社員がいると、「先生をお見かけしたら挨拶しておくね」と言ってもらえることが増えました。自分が不在のときのフォロー体制が広がるという意味で、子育て中も両立しやすい環境づくりにつながるのではと感じます。

斎藤純子さん 5回、10回と通ってやっと発掘できていたニーズが、「おしながき」を見せて選んでいただくだけですぐにつかめるという変化だけでも、労働時間圧縮にかなり効果がありそうです。

白河 今回のプロジェクトを推進した皆さんの所属は、北海道から大阪までエリアがバラバラなので、足並みをそろえるのも大変だったでしょう。この取り組みを通じて、皆さんご自身の働き方の効率を高める工夫も生まれたのではないでしょうか。

深沢 私たちも「よくやったなぁ」と思います(笑)。

小林 頻繁に集まることは難しいので、対面で集合したのは立ち上げの1回だけ。あとは月1~2回ペースのスカイプ会議で意見交換をしていました。

深沢 限られたミーティングの時間を濃密に活用できるように、事前に議題を共有してそれぞれの意見を準備しておき、1時間内にスムーズに意見集約できるように全員で意識して進めていました。細かな進捗報告は、随時「LINE(ライン)」で共有する形に。

白河 素晴らしいですね。エイカレは通常業務とは別の活動としてチャレンジするプロジェクトなので、「参加することで結果的に仕事の効率化につながった」という話はよく聞くんです。人的資源管理の分野では、「週に2日、帰宅する時間を決めるだけで、他の日の残業も減る」といわれています。皆さんの「一人働き方改革」もこの機に進んだようですね。

斎藤(真) たしかに「今日はスカイプ会議があるから、それまでに絶対にこの仕事を終わらせよう」という締め切りの意識は高まって、時間管理のトレーニングになった気がします。

白河 MRのような「長時間労働が当たり前」と自他共に思い込んできた職種から「仕事そのものの価値を改革する」という動きが生まれてきたことは、社会全体にもよい流れを生むと期待しています。

小林 はい。視野を広げて自分たちの仕事を見つめ直したことで、これからの時代に合った役割や学ぶべきテーマがより明確になりました。これから個別化医療が進む流れに合わせて役立てるように、患者さんの疾患だけでなく、その方がどういう生活を送りたいかというパーソナルな部分にも意識を向け、一人ひとりの生活になじむ薬の提案ができるMRへと成長したいです。

安藤 業界の規制も厳しくなる中で勝ち残っていくためには、やはり部門間連携が必須ですし、1人ではなく組織単位で顧客に向き合うことの価値の大きさを、今回のプロジェクトで感じることができました。

深沢 今はインターネット上にも医薬品の情報はあふれていて、ドクターはいつでもアクセスできます。それを目の前の患者さんにどうフィットさせていくかという最後のジャッジで、MRを頼りにしていらっしゃると感じています。私たちの目線も患者さんに向け、ドクターと一緒に悩めるような存在にならなければ「選ばれるMR」にはなれない。そんな思いを強めています。

白河 医師の働き方改革も社会課題になる中で、「それでも呼びたくなるMR」を目指して、頑張っていらっしゃる姿がとても爽快に映ります。ぜひ継続していただいて、業界に新しい風を吹かせてください。

あとがき:この連載では毎年エイジョカレッジの大賞受賞者を取材しています。今年は、従来「長時間労働が当たり前」のビジネスモデルや風土を持つ業界が、課題解決に挑むという発表が多く見られました。MRの働き方改革にかつて関わったことがあるのですが、ヒアリングしてみると「MRという仕事が好き」という女性は多数いました。その理由は「健康に貢献するという社会的価値」や「数字ではっきりわかる評価」「高収入」などでした。「好きな仕事だから長く続けたい」と思う女性が多いのに、現実は「実際は難しい。管理職にもなれない。なぜなら長時間労働だから」という面がありました。中外製薬のチームが高い評価を得たのは「当たり前を壊す」「自らの価値を疑う」ことから働き方を見直したからだと思います。エイジョに参加するとパワフルな働く女性たちにたくさん出会えます。来年もそんな女性たちに出会えることが楽しみです。

白河桃子
 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)、「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「ハラストメントの境界線」(中公新書ラクレ)。

(ライター 宮本恵理子)

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