人材のおしながき、医師が呼ぶMRを目指す 中外製薬中外製薬 チームCSK(下)

斎藤純子さん 5回、10回と通ってやっと発掘できていたニーズが、「おしながき」を見せて選んでいただくだけですぐにつかめるという変化だけでも、労働時間圧縮にかなり効果がありそうです。

白河 今回のプロジェクトを推進した皆さんの所属は、北海道から大阪までエリアがバラバラなので、足並みをそろえるのも大変だったでしょう。この取り組みを通じて、皆さんご自身の働き方の効率を高める工夫も生まれたのではないでしょうか。

斎藤純子さん(入社4年目・北海道支店旭川オフィス所属・ゼネラル担当)

深沢 私たちも「よくやったなぁ」と思います(笑)。

小林 頻繁に集まることは難しいので、対面で集合したのは立ち上げの1回だけ。あとは月1~2回ペースのスカイプ会議で意見交換をしていました。

深沢 限られたミーティングの時間を濃密に活用できるように、事前に議題を共有してそれぞれの意見を準備しておき、1時間内にスムーズに意見集約できるように全員で意識して進めていました。細かな進捗報告は、随時「LINE(ライン)」で共有する形に。

白河 素晴らしいですね。エイカレは通常業務とは別の活動としてチャレンジするプロジェクトなので、「参加することで結果的に仕事の効率化につながった」という話はよく聞くんです。人的資源管理の分野では、「週に2日、帰宅する時間を決めるだけで、他の日の残業も減る」といわれています。皆さんの「一人働き方改革」もこの機に進んだようですね。

斎藤(真) たしかに「今日はスカイプ会議があるから、それまでに絶対にこの仕事を終わらせよう」という締め切りの意識は高まって、時間管理のトレーニングになった気がします。

白河 MRのような「長時間労働が当たり前」と自他共に思い込んできた職種から「仕事そのものの価値を改革する」という動きが生まれてきたことは、社会全体にもよい流れを生むと期待しています。

小林 はい。視野を広げて自分たちの仕事を見つめ直したことで、これからの時代に合った役割や学ぶべきテーマがより明確になりました。これから個別化医療が進む流れに合わせて役立てるように、患者さんの疾患だけでなく、その方がどういう生活を送りたいかというパーソナルな部分にも意識を向け、一人ひとりの生活になじむ薬の提案ができるMRへと成長したいです。

安藤 業界の規制も厳しくなる中で勝ち残っていくためには、やはり部門間連携が必須ですし、1人ではなく組織単位で顧客に向き合うことの価値の大きさを、今回のプロジェクトで感じることができました。

深沢 今はインターネット上にも医薬品の情報はあふれていて、ドクターはいつでもアクセスできます。それを目の前の患者さんにどうフィットさせていくかという最後のジャッジで、MRを頼りにしていらっしゃると感じています。私たちの目線も患者さんに向け、ドクターと一緒に悩めるような存在にならなければ「選ばれるMR」にはなれない。そんな思いを強めています。

白河 医師の働き方改革も社会課題になる中で、「それでも呼びたくなるMR」を目指して、頑張っていらっしゃる姿がとても爽快に映ります。ぜひ継続していただいて、業界に新しい風を吹かせてください。

あとがき:この連載では毎年エイジョカレッジの大賞受賞者を取材しています。今年は、従来「長時間労働が当たり前」のビジネスモデルや風土を持つ業界が、課題解決に挑むという発表が多く見られました。MRの働き方改革にかつて関わったことがあるのですが、ヒアリングしてみると「MRという仕事が好き」という女性は多数いました。その理由は「健康に貢献するという社会的価値」や「数字ではっきりわかる評価」「高収入」などでした。「好きな仕事だから長く続けたい」と思う女性が多いのに、現実は「実際は難しい。管理職にもなれない。なぜなら長時間労働だから」という面がありました。中外製薬のチームが高い評価を得たのは「当たり前を壊す」「自らの価値を疑う」ことから働き方を見直したからだと思います。エイジョに参加するとパワフルな働く女性たちにたくさん出会えます。来年もそんな女性たちに出会えることが楽しみです。

白河桃子
少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)、「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「ハラストメントの境界線」(中公新書ラクレ)。

(ライター 宮本恵理子)