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インカ帝国から500年以上続く 草のつり橋架け替え

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/6/19

できたてのロープを使い、新たな橋をつる「ケーブル」を編む男性(PHOTOGRAPH BY JEFF HEIMSATH)

「ここでは500年前に起源をもつ生きた文化を、目の前で見ることができるのです」とバレイロ氏は言う。

バレイロ氏によると、この文化におけるもっとも重要な要素は、「共同の労働」という考え方だという。複数のコミュニティーが集い、力を合わせて事業を行うが、人々は労働に対する対価を期待しない。最後には村や地域全体が利益を得ることを、彼らは知っているからだ。

橋づくりに取りかかるため、長くて重いロープを峡谷まで運ぶ人々(PHOTOGRAPH BY JEFF HEIMSATH)

橋を作る作業は長い草を集めるところから始まる。次に、それを撚り合わせて細いロープを作る。この細いロープを撚り合わせて太くしていき、最終的には橋を固定する重くて太い「ケーブル」を編み上げるのだ。こうして出来上がったケーブルを、一帯の村から集まった人々が力を合わせて古い橋の上に渡していく。

つり橋を吊るケーブルが頑丈な礎石にしっかりとつながれたら、経験豊富な橋づくりの職人たちが、橋の両端から中央へと移動しながら、草と木の棒を使って橋の側面と床を編んでいく。職人たちが橋の中央で出会い、床用に編んだマットを敷いたら、新たな橋の完成だ。

アプリマック川の上に新たに架けられたケスワチャカ橋(PHOTOGRAPH BY JEFF HEIMSATH)

この架け替えに関して最近大きく変わったことがある。それは「架け替えの頻度」だとバレイロ氏。道が整備され、ケスワチャカ橋へのアクセスが良くなって観光客が増えた。渡る人数が増えたことで橋の安全性を高めるとともに、毎年架け替えることで、たくさんの観光客を呼び込める。そのため、かつては3年に1度だった架け替えが毎年の行事となったのだ。

橋が完成したら、村人たちは音楽、祈祷、ごちそうでお祝いをする。こうして、新しくなったケスワチャカ橋の1年が始まる。

峡谷を割いて流れるアプリマック川。インカ帝国時代、昔から村々はつり橋によって結ばれていた(PHOTOGRAPH BY JEFF HEIMSATH)

次ページでも、インカ帝国時代から途絶えず受け継がれるつり橋の架け替えを写真で紹介する。

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