仕事はできるのに「困った社員」パターン別対策(下)こちら「メンタル産業医」相談室(34)

日経Gooday

やる気にあふれているのはいいが、過重労働が常態化している社員も会社にとっては困りもの。写真はイメージ=(c)Elnur Amikishiyev-123RF
やる気にあふれているのはいいが、過重労働が常態化している社員も会社にとっては困りもの。写真はイメージ=(c)Elnur Amikishiyev-123RF
日経Gooday(グッデイ)

雨に濡れたあじさいの青が涼やかな季節、あなたの心と体はお元気でしょうか?こんにちは、精神科医・産業医の奥田弘美です。さて前回は、「仕事はすごくできて会社の利益には貢献している」にもかかわらず、人事や上司に「困った社員だ」と嘆かれてしまう残念な例を2つご紹介しました。

ケースその1は「部下をメンタル不調にするクラッシャー型上司」、ケースその2は「会社に対する批判を声高に繰り返す社員」。それぞれ産業医としての視点とともに解説を加えました。(詳しくは前回記事「仕事はできるのに『困った社員』 パターン別の対策」をご覧ください)。今回は後編としてさらに2つのケースを挙げたいと思います。

【ケース3】仕事を手放さず、自ら過重労働してしまう社員

月80時間超えの残業が発生すると産業医は過重労働者面談を要請されます。その中で人事担当者や上司から「この社員は、仕事はできるのですが、残業を減らそうと指導しても本人が勝手に残業してしまうので困っているんです。先生からも何とか助言してやってください」と頼まれることがあります。

詳しく聞くと、「ほぼ同じ仕事を任せている同僚は、長時間残業しないでこなしている」だとか、「仕事を軽減してもほとんど残業時間が変わらない」といった状況がしばしば人事や上司の口から語られます。そこで、産業医面談を行うわけですが、結論として彼らが長時間労働を続けてしまう原因は次のようなパターンに大別されます。

(1)「一つひとつの仕事を過度に丁寧に仕上げようとする」
例えば社内会議の資料用の表やレイアウトも、そこまで凝る必要はないのにと思うほどきれいに仕上げようとする。そのため1つの仕事を仕上げるのに時間が人一倍かかる、といった過剰なこだわりパターン。

(2)「クライアントの要求を全て受け入れてしまう」
契約外の仕事もNOといえずに何でもサービスで引き受けてしまう。もしくは、そこまで丁寧に対応しなくてもよいのに、と思えるほど事細やかに他部署の要望に対応する、といった過剰サービスパターン。

(3)「1回のチェックで十分なところを何度も何度もチェックする」
部下に仕事を任せられず、結局は自分で最終的に全てチェックして手直ししないと気がすまない、といった過剰な心配性かつ完璧主義パターン

当該社員本人と面談して、さりげなく水を向けてみても(1)の「過剰こだわりパターン」や(2)の「過剰サービスパターン」の場合は、ご本人は「そのやり方で普通」「ここまでやらない人の方がよくない」などと思っている場合が多々あります。

このような場合は上司から仕事のやり方を何度か指導して「やりすぎ」部分を自覚してもらう、さらにどうしても改善が難しいところは作業の一部を引き受けるアシスタントを付けるなどの措置がとられることが多いようです。しかしこれらの対策をしても長時間労働が改善しない場合は、結局のところ任せる仕事や責任を大幅に減らさざるを得なくなってしまいます。

(3)の「過剰な心配性・完璧主義パターン」の社員にもしばしば遭遇します。実は仕事ができる社員には、完壁主義でかつ心配性な性格の人が少なくありません。細かなところにまで目配りができて、ミスを先読みして予防する。休む時間を犠牲にして、何度も何度もチェックを繰り返し、あらゆるシチュエーションを想定して何パターンもの資料や報告書を準備する……。だからこそ彼らは仕事の成果を着実に上げられるわけなのですが、やはり毎月毎月長時間労働者のリストに上がってくるようになると、会社としては労働法に抵触するため非常に困るわけです。

またこうした「過剰な心配性・完壁主義パターン」の人が上司になった場合は、それを部下にも押し付けてしまう傾向があります。「○○さんが上司になってから、『そこまで想定して準備する必要ある?』と首をかしげたくなるほどの資料を多量に作らされたり、心配だからといって臨時で作業を何度も追加したり変更されたり。無駄な仕事や残業が増え、身が持ちません」などと体調不良を訴える社員に何度か出会いました。

こうした過剰な心配性・完壁主義パターンの社員の過重労働に対しては、何度か指導が繰り返されたのちに改善が見込めないとなると、任せる仕事の質や責任・量を下げる、部下を持たない部署に異動させるなどの措置をとるしかなくなってしまうようです。

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