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認知症の親が心配 他人の損害、保険でカバーできる?

2019/6/9

Q.離れて暮らす母が認知症と診断されました。母が誤って他人の物を壊すなどして迷惑をかけないか心配です。他人に損害を与えるリスクに備える保険があるそうですが、補償内容を教えてください。

A.自分や家族が日常生活の中で誤って他人にケガをさせたり物を壊したりしたときに有効なのが個人賠償責任保険です。法律上の損害賠償責任を負った場合に保険金が出ます。自動車事故は対象外です。かつては単体商品として売られていましたが「今は自動車保険や火災保険などの特約としてセットで契約するのが原則」とファイナンシャルプランナーの平野敦之氏は話します。

■保険金額を比較

商品性は以前はほぼ一律でしたがここ数年、扱う損害保険会社や商品によって差が広がっています。他人にどんな害を及ぼす心配があるのかなど、自分や家族の事情に応じて商品を選ぶことが大切になっています。

比較ポイントとしてまず保険金額があります。国内事故の補償を無制限とする例もありますが1億円以下を上限とする商品も多くあります。同じ損保会社であっても自動車保険に付く特約は無制限、火災保険の特約は上限1億円などとする例が目立ちます。

保険でカバーできる家族の範囲も要確認です。従来は契約者本人のほかは「同居する家族」「別居する未婚の子」を対象者とするのが通常でした。しかし2007年、認知症の高齢男性が線路に立ち入って電車にはねられ、死亡した事故が見直しの契機となりました。鉄道会社が電車遅延の損害賠償を求めて遺族を訴え関心を集めたためです(最高裁は16年、この遺族には賠償責任なしと判決)。

認知症などで責任能力のない親が事故を起こし、子が代わりに賠償する場合、別居や既婚であっても対象に含めるのが今は一般的です。日本生命保険とあいおいニッセイ同和損害保険が18年に発売した「まるごとマモル」は認知症か否かを問わず、別居する親を補償対象に加えました。

■加入しているか確認を

電車事故を契機に事故の範囲を見直す例もあります。車両や設備などが壊れず振り替え輸送の損害などを求める場合、もともと「物損」を条件とする個人賠償責任保険ではカバーできませんでした。そこで東京海上日動火災保険は今年1月、物損のない電車遅延損害も補償対象としました。前出のまるごとマモルも電車遅延を対象に含めます。それでも物損が条件となる商品が多い点は要注意です。

「個人賠償責任保険にきちんと加入しているか、人生の節目ごとに確認したい」と平野さんは助言します。例えば高齢になってクルマを手放して自動車保険を解約すれば特約で付く個人賠償責任保険の補償を失います。その場合は特約付きの傷害保険などへの加入を検討しましょう。家の住み替え時などに火災保険を見直す際も注意が必要です。

[日本経済新聞朝刊2019年6月8日付]

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