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STU48の船上劇場発進 お約束を覆す初公演の狙い

日経エンタテインメント!

2019/6/17

国内6番目のAKB48姉妹グループで、「瀬戸内」エリアを本拠地とするSTU48。2019年4月16日に船上専用劇場「STU48号」がオープン。初公演は、これまでのAKB48グループの公演の数々の“お約束”を覆すチャレンジングな内容だった。

初日公演のステージに立ったSTU48の16人のメンバーたち。今村氏は「アイドルとして、そしてそれを超えた自然体の彼女たちの本来の姿を伝えるオリジナルショー」を目指したという(C)STU48
STU48号は全長77.8m、全幅12.5m。劇場の観客は300人規模を想定。初日公演の前にメンバーを乗せ、広島フェリーポートに入港した(C)STU48
1期生の合格発表から2年以上を要しての専用劇場での初公演は、姉妹グループと比べて異例の長期間

グループは17年3月に活動をスタート。しかし、当初から特色として掲げていた、船上劇場は着工準備と工事ともに遅れることに。さらに活動拠点が18年に西日本豪雨の被害を受けたこともあり完成が大幅に延期されていた。

船上劇場が完成するまでの約2年間、STU48は瀬戸内7県を巡るライブツアーや姉妹グループの専用劇場への出張公演などでスキルを磨いてきた。そして迎えた初日。STU48が見せた初の船上劇場公演では、長い歴史を誇るAKB48グループの公演のお約束が次々と覆された。

「GO!GO! little SEABIRDS!!」と名付けられたオリジナル公演の構成・演出を手掛けるのは、パフォーマンス集団「THE CONVOY SHOW」を主宰する今村ねずみ氏。AKB48グループの総合プロデューサー秋元康氏ではない。今村氏はSTU48の運営より「今までのショーをぶち壊してくれ」と、オファーを受けたという。

■海にまつわる楽曲をカバー

公演開始前と終了時には、「波をイメージした」(今村氏)というブルーシートが観客たちを包み込む演出もある(C)STU48

これまでのAKB48グループの公演は1つのテーマで統一されていたが、この公演は3つのパートで構成。ACT1は『フライングゲット』や『ヘビーローテーション』など先輩であるAKB48のカバーが続く。

観客席からもどよめきが起きたのがACT2。『島唄』(92年)、『め組のひと』(83年)、『亜麻色の髪の乙女』(68年)と様々な時代の海にまつわる、AKB48グループではない楽曲をカバーし幅広い世代に訴求する。このパートでは瀧野由美子のサックス、兵頭葵のピアニカ、中村舞のバレエなど、メンバー個人の特技をフィーチャーした演出があったのも異例だ。そしてACT3はSTU48のオリジナルソングをノンストップで披露した。

また「一番こだわったのは3部での構成とシーンの運び」と今村氏が語るように、楽曲と楽曲の間が間延びしないのも、既存の公演と異なる。これまでは、たわいない日常のエピソードなどを絡めてメンバー同士が突っ込み合う、曲間の自己紹介やMCもファンが喜ぶ時間だった。しかし、本公演ではACT1で『恋するフォーチュンクッキー』をインストゥルメンタルで流し、全メンバーが踊るなか、1人ひとりがテンポ良く自己紹介。ミュージカルや舞台などのそれをほうふつとさせた。

船内のロビーでは瀬戸内にちなんだオリーブやちりめん、タコなどを挟んだホットドッグや、ぶっかけうどんなどを販売することも、他の専用劇場とは異なる

“お約束”通りでないのは公演内容だけではない。STU48の全メンバー31人(4月中旬時点)のうち、本公演のステージに立ったのは16人。AKB48とSTU48を兼任するキャプテンの岡田奈々、全シングルでセンターの瀧野は含まれるが、握手会やSHOWROOMでは続く人気を誇るメンバーの多くが選に漏れている。初日公演では『フライングゲット』でセンターに抜てきされた、14歳の森下舞羽のスタイルの良さが際立つしなやかな動きや、矢野帆夏のパワフルなパフォーマンスやボーカルが印象に残った。森下と矢野は2ndシングルまでは選抜外のメンバー。レッスンを通して「何が何でもやるんだという意志を感じる子」から今村氏が16人を選んだというこの公演は、新たな人気メンバーを生み出すきっかけにもなりそうだ。

先輩たちが作り上げてきた公演を若手メンバーたちが引き継いでいくことで、固定ファンをつかんできたAKB48グループ。しかし、オリジナルメンバーを超える人気者がなかなか誕生しないという課題もある。このチャレンジングな公演はそうした現状の突破口になる可能性をも秘めているだろう。

(日経エンタテインメント! 伊藤哲郎)

[日経エンタテインメント! 2019年6月号の記事を再構成]

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