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IMF見明氏 本当の「男女平等」で経済に弾みを

日経ARIA

2019/6/17

出生率改善で有名なのはフランスです。民事連帯契約(PACS、事実婚に相当)の下で生まれた子どもが差別されず、結婚しているカップルと同等の税制上の優遇や家族手当を受けられるようになりました。さらに、保育施設を充実させ、家庭と仕事の両立が図られました。これらを主因に出生率が1990年代半ばから増加しています。2002年以降は男性にも育休取得の権利が付与されました。ただ、移民による出生率押し上げの効果も無視できません。

ドイツは出生率の回復には悩まされました。その対策として、保育の充実の他に、ユニークなところでは年金金額を子どもの数に応じて増やす方針を採りました。賛否両論ありますが、一つの考え方と言えます。最近の出生率の回復には、移民の増加の影響も大きいです。

先進国におけるジェンダー格差是正のための税・社会保障改革の動き(出所:IMF 2017)

■アジア新興国でも予測される「急速な人口減少」の理由

日経xwoman総編集長、日経ARIA編集長 羽生祥子(はぶ・さちこ)

羽生 アジア地域に目を向けたとき、特有の人口問題はありますか?

見明 日本ではそれほどでもありませんが、多くのアジア諸国では、生まれる子どもの男女比にゆがみがあります。男の子の割合が、本来生まれてくる数より明らかに多いのです。

自然の状態では出生時男女比は1.05:1となります。OECD諸国では1.053:1とほぼ自然な数値となっています。ところが、東アジアに目を向けますと、中国は男児 1.15:女児1(2017年)、ベトナム同 1.097:1(2017年)、タイ同 1.062:1(2017年)となっており、東アジア・太平洋地域では男児のほうが約5%不自然に多くなっています。男性が多く、女性の数が少ない状態では、より速いペースで人口動態に影響が出ます。

また、現在は先進国での少子高齢化が話題になっていますが、人口動態をつぶさに見ますと、タイやベトナムのような新興国でも少子高齢化が進行する見通しです。日本に比べるとタイムラグはあるものの、例えばベトナムではあと10~20年後には高齢化が急速に進みます。

人口動態のゆがみに対処するためには、女性の社会的地位の低さも改善していかなければなりません。IMFの全189加盟国のうち、9割の国で依然、女性の遺産相続や就労に制限があるなど、法的な差別があります。(※3)

■来なかった「日本の第3次ベビーブーム」 楽観論の末に

羽生「政策が現状のままだと、(直近の経済成長率が40年間続いた場合と比べて)40年後には日本の実質GDPは25%低下」。このインパクトがある数字を、ラガルド専務理事自身が発言してくれたことは非常に大きかったと思います。しかし、労働市場におけるさまざまな男女格差(働き方改革を含む)について、喫緊の経済問題であるにもかかわらず、いま一つ真剣に取り合わない経営者の姿も見てきました。女性の労働力に頼らなくとも、男性中心でやっていけると思ったのでしょうが、そうはなりませんでした。男性にとって、「男女平等」という言葉へのアレルギーは予想以上に大きく、残念です。

見明 楽観論の帰結が、現在の労働力不足です。人口動態への楽観的な見方の背景には、「第3次ベビーブームが来るだろう」という予測がまだあったのではないでしょうか。昨年が第2次ベビーブーマー(第2次ベビーブーム世代、1971~74年生まれ)の出産適齢期の最後の年でしたが、第3次ベビーブームは来ませんでした。一方で、待機児童数はやっと2万人を割りましたが、まだ多い状態です。働きたいのに働けないお母さんをサポートし、ポテンシャルを十分に生かした仕事に就けるようにしていかなければなりません。

日本の公的債務残高の対GDP比率は、第2次世界大戦末期よりも高い水準、237%に達しており、財政改善が急務となっています。2019年10月の消費増税を乗り切った後、どのような形で財政再建策を打つのか。限られた財源の中から、本当に支援が必要な世代や所得層に的を絞ったサポートを届けなければならないでしょう。

中期的な財政再建なくしては、日本は減り続けていく子どもたちに借金を押し付け続けることになります。(※4)

(※3)IMF 2015年
(※4)IMF 2018年対日経済審査報告書

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