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IMF見明氏 本当の「男女平等」で経済に弾みを

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日経ARIA

国際通貨基金(IMF)は日本の将来の実質国内総生産(GDP)について「直近の成長推移に比べ、40年後に25%減少する」という、試算に基づく警鐘を鳴らした。しかし同時に労働市場における二重構造解消や、非正規労働者の労働生産性上昇などの改革で、40年後には実質GDPを15%押し戻せるという分析もしている(※1)。日経xwoman総編集長・日経ARIA編集長の羽生祥子が、国際通貨基金 アジア太平洋地域事務所 エコノミスト、見明奈央子氏へインタビュー。諸外国の人口動態や経済成長の動向も含め詳しい内容を聞いた。

非正規雇用者も、アウトプットが同じであれば同賃金に

羽生祥子編集長(以下、羽生) 「労働市場における二重構造」のうちの一つに、正規・非正規という格差問題があります。日本では女性の非正規雇用が多いままです。

見明奈央子氏(以下、見明) 大切なことは、雇用形態の議論よりも、非正規雇用者にも職業訓練や昇進の機会を広げ、生産性と賃金水準を引き上げることだと思います。また現在の日本では、正規雇用であっても、コース別管理制度の運用の名の下で総合職と一般職との間で給与体系や福利厚生が大きく異なり、待遇格差が生まれる要因があります。経済学的な視点からも、生産性、つまりアウトプットが同じであれば同じ賃金という「同一労働同一賃金」が徹底されるのがベストだと思っています。

羽生 子育て中の女性にとって、月曜から金曜までフルタイムで働くことが難しいこともある。その場合、非正規雇用者の道しか選べないとなると、待遇格差が待ち受けている。これは、悪しき二者択一ですね。非正規雇用者でもアウトプットに応じて正規雇用者と同じレベルの賃金が得られるとなれば、働き方が幅広く選択可能になります。

男女格差解消に取り組むカナダ・フランス・ドイツの例

羽生 海外の動向も伺いたいと思います。労働市場における男女の格差(賃金や就労形態の差)の改善が経済成長にとってプラスに働いた国はありますか?

見明 あります。例えばカナダは配偶者控除を撤廃し、また公的部門の賃金格差是正で経済成長がプラスに動くことに成功しました。日本は女性の労働参加率は男性と比べてまだ7%ほど低い状況ですが、同等水準への引き上げによってGDPは4%程度上昇するとの試算(※2)があります。翻って日本ではまだ配偶者控除が撤廃されていません。この点について、非常に残念だと申し上げたのは、一人のワーキングマザーとしての私個人の本音です。

(※1)Colacelli and Corugedo, 2018 "Macroeconomic Effects of Japan's Demographics: Can Structural Reforms Reverse Them?"
(※2)Petersson, Mariscal and Ishi 2017 "Women Are Key for Future Growth: Evidence from Canada"

出生率改善で有名なのはフランスです。民事連帯契約(PACS、事実婚に相当)の下で生まれた子どもが差別されず、結婚しているカップルと同等の税制上の優遇や家族手当を受けられるようになりました。さらに、保育施設を充実させ、家庭と仕事の両立が図られました。これらを主因に出生率が1990年代半ばから増加しています。2002年以降は男性にも育休取得の権利が付与されました。ただ、移民による出生率押し上げの効果も無視できません。

ドイツは出生率の回復には悩まされました。その対策として、保育の充実の他に、ユニークなところでは年金金額を子どもの数に応じて増やす方針を採りました。賛否両論ありますが、一つの考え方と言えます。最近の出生率の回復には、移民の増加の影響も大きいです。

アジア新興国でも予測される「急速な人口減少」の理由

羽生 アジア地域に目を向けたとき、特有の人口問題はありますか?

見明 日本ではそれほどでもありませんが、多くのアジア諸国では、生まれる子どもの男女比にゆがみがあります。男の子の割合が、本来生まれてくる数より明らかに多いのです。

自然の状態では出生時男女比は1.05:1となります。OECD諸国では1.053:1とほぼ自然な数値となっています。ところが、東アジアに目を向けますと、中国は男児 1.15:女児1(2017年)、ベトナム同 1.097:1(2017年)、タイ同 1.062:1(2017年)となっており、東アジア・太平洋地域では男児のほうが約5%不自然に多くなっています。男性が多く、女性の数が少ない状態では、より速いペースで人口動態に影響が出ます。

また、現在は先進国での少子高齢化が話題になっていますが、人口動態をつぶさに見ますと、タイやベトナムのような新興国でも少子高齢化が進行する見通しです。日本に比べるとタイムラグはあるものの、例えばベトナムではあと10~20年後には高齢化が急速に進みます。

人口動態のゆがみに対処するためには、女性の社会的地位の低さも改善していかなければなりません。IMFの全189加盟国のうち、9割の国で依然、女性の遺産相続や就労に制限があるなど、法的な差別があります。(※3)

来なかった「日本の第3次ベビーブーム」 楽観論の末に

羽生「政策が現状のままだと、(直近の経済成長率が40年間続いた場合と比べて)40年後には日本の実質GDPは25%低下」。このインパクトがある数字を、ラガルド専務理事自身が発言してくれたことは非常に大きかったと思います。しかし、労働市場におけるさまざまな男女格差(働き方改革を含む)について、喫緊の経済問題であるにもかかわらず、いま一つ真剣に取り合わない経営者の姿も見てきました。女性の労働力に頼らなくとも、男性中心でやっていけると思ったのでしょうが、そうはなりませんでした。男性にとって、「男女平等」という言葉へのアレルギーは予想以上に大きく、残念です。

見明 楽観論の帰結が、現在の労働力不足です。人口動態への楽観的な見方の背景には、「第3次ベビーブームが来るだろう」という予測がまだあったのではないでしょうか。昨年が第2次ベビーブーマー(第2次ベビーブーム世代、1971~74年生まれ)の出産適齢期の最後の年でしたが、第3次ベビーブームは来ませんでした。一方で、待機児童数はやっと2万人を割りましたが、まだ多い状態です。働きたいのに働けないお母さんをサポートし、ポテンシャルを十分に生かした仕事に就けるようにしていかなければなりません。

日本の公的債務残高の対GDP比率は、第2次世界大戦末期よりも高い水準、237%に達しており、財政改善が急務となっています。2019年10月の消費増税を乗り切った後、どのような形で財政再建策を打つのか。限られた財源の中から、本当に支援が必要な世代や所得層に的を絞ったサポートを届けなければならないでしょう。

中期的な財政再建なくしては、日本は減り続けていく子どもたちに借金を押し付け続けることになります。(※4)

(※3)IMF 2015年
(※4)IMF 2018年対日経済審査報告書

「男女平等」のスローガンは、経営者こそ掲げてほしい

見明 構造改革の鍵となるのは、4月から順次施行となった「働き方改革」ですが、忘れてはならないのが男性の存在です。ただ早く家に帰ることが重要なのではなく、女性が「育児も仕事も介護も全部やる」のでなく、家事のようなケア労働、アンペイドワークに男性も含めて従事してもらうことです。そのことで女性が働きやすくなり、財政を支える側の層が厚くなります。(※5)

羽生 急がば回れですね。

見明 IMF季刊誌『ファイナンス&ディベロップメント』の2019年3月号に、ラガルド専務理事が『今世界が取り組むべき緊急課題』という新しい記事(※6)を寄稿しています。それによると、ジェンダーギャップ(労働参加率、賃金格差等)を埋めればIMF調査対象国の約半数で35%のGDP押し上げにつながる、と述べています。労働現場に女性が加わることで、男性側も生産性が上がると言われているゆえんです。日本だけでなく多くの国で、女性という大事な資源を活用していくことが必要です。

羽生 IMFの新しい試算では、調査対象国中、男女平等の面で下位(半分以下)となった国々では、雇用の男女格差解消によってGDPが平均で35%増加する可能性がある、と。また増加分のうち7~8%ポイントはジェンダー多様性がもたらす生産性改善によるもの、とも指摘していますね。このような冷静かつ最新のデータ分析を見るにつけ、「男女平等」という言葉がフェミニストだけのものではなく、経営者こそ掲げるスローガンになれば、経済も文化も前向きになると思いました。詳しい解説をありがとうございました。

(※5)Miake, 2017 "Japan's Lifetime Employment and Gender Inequality"
(※6)IMF『今世界が取り組むべき緊急課題: クリスティーヌ・ラガルド、ファイナンス&ディベロップメント2019』

(文 阿部祐子、羽生祥子=日経ARIA編集長、写真 鈴木愛子)

[日経ARIA2019年4月26日付の掲載記事を基に再構成]

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