相続手続き、デジタル化で手間省く マイナンバー活用法改正で利便性向上へ

写真はイメージ=PIXTA
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行政手続きのデジタル化を推進する一連の法律が今国会で改正された。個人にとっては相続や税金、社会保障の分野で利便性向上に一定の影響がありそうだ。

関連法の根幹であるデジタル行政推進法は(1)手続きを原則デジタル化する(2)同じ手続きを1回で済ませる(3)手続きを1カ所で済ませる――を目標に掲げた。「2019年度以降、できる分野から始める」(向井治紀・内閣官房IT総合戦略室長代理)という。

マイナンバーカードを保険証に

目標に沿ってマイナンバー法や健康保険法なども改正。行政機関が個人情報の管理や取得に使うマイナンバーや、本人確認手段であるマイナンバーカードの利用範囲を広げた。戸籍情報とマイナンバーをひもづけたほか、マイナンバーカードを21年3月から健康保険証にも使えるようにする。

注目されるのが死亡・相続手続きへの影響だ。同じような手続きを、多くの機関に行う必要がある割には「デジタル化が大幅に遅れている」(総務省や自治体の関係者)からだ。

現行の手続きは大きく4つに分かれる。まず、被相続人の死亡を自治体に届け出て、火葬や埋葬の許可を得る手続き。2つ目に公的医療保険、公的年金の資格喪失や遺族年金の申請などがある。3つ目は法定相続人の確定のため、被相続人が生まれてから死亡するまでの全戸籍謄本の取得など。4つ目は遺産分割に基づき、不動産などの財産名義を相続人に変更する手続きや相続税の申告がある。

「全体のデジタル化を一気に進めるのは難しいが、部分的には進展が見込める手続きもある」。マイナンバー法などに詳しい弁護士の水町雅子氏は指摘する。

遺族の申請の手間省く

現在、死亡時の届け出は書面で行われている。ネット上で済ませるにはそもそも病院の死亡診断書の発行からデジタル化が必要だが、対応できない小規模病院も多い。一方、死亡届を受理した後の行政手続きでは自治体が被相続人のマイナンバーを把握できるので、公的な医療保険や年金の資格喪失手続きを自治体などがデジタル化でき、遺族の申請の手間を省けそうだ。

戸籍法改正も相続手続きのデジタル化に役立ちそう。法務省は24年前半までに全国の市区町村が保有する戸籍情報のバックアップシステムを再構築。戸籍のデータを最寄りの市区町村からも取得できるようにする。遺産の名義変更で必要な被相続人の全戸籍謄本の収集は今より楽になる。

年末調整や確定申告もデジタル化

税務の電子申告も加速化しそうだ。国税庁は20年分の所得税の年末調整や確定申告から生命保険料や住宅ローン残高の情報を、21年分の申告から医療費の情報を、政府の運営サイト「マイナポータル」を通じて集められるようにする。同庁は紙が介在する年末調整や確定申告などの手続きを一変させたい考えだ。

医療費については、健康組合などのサーバーにある医療データを、マイナンバーの情報提供ネットワークを経由してマイナポータルに集められるようにする。

(後藤直久)

[日本経済新聞朝刊2019年6月8日付]

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