昔、そのような仕組みは「複線型人事制度」といわれていました。
複線型とは、課長などの管理職に出世するコース以外に、また別の出世コースを用意している仕組みのことです。
多くの複線型人事制度では、管理職と専門職という2つの出世コースを用意していました。
ほとんどの大企業では、この複線型人事制度は導入されていたはずです。
しかしその実態はあくまでも名目的であり、多くの場合、専門職の出世コースは、管理職になれなかった人たち向けのコースとして運用されてしまっていました。
これが今次第に変化しつつあるのです。
たとえば現在セレクションアンドバリエーションで制度設計を行っている某上場大企業では、メインの出世コースを専門職に変化させました。
管理職になることが出世なのではなく、専門職になることが出世である、としたのです。そして専門職になるということは「会社が求める人材像に沿った行動ができるようになる」というように定義しています。その定義には、チャレンジとかイノベーションとかの行動を示すキーワードは入っていますが、業績責任は入っていません。だからたとえば、たとえ失敗してもチャレンジし続け、創造的な活動をし続けた人が今までの管理職相当に出世するようにしたのです。
では業績責任はどうしたのか?
それは専門職の中で、業績責任を負うことに向いている人たちをピックアップして、特別なポストとして課長や部長などの肩書を与えることで解決しました。その報酬水準を今までよりも大きなものにすることで、責任に見合った報酬を支払う考え方も適用しているのです。
このような人事改革を行っている企業はたしかにまだまだ少数派かもしれません。
けれども、短絡的に「課長=嫌な出世」と考えるのではなく、まず自社の人事の仕組みを知ってみることをお勧めします。あなたが働いている会社が本当に成長を目指しているのであれば、人事制度も環境にあわせて修正しているはずだから、新たな選択肢があるかもしれないのです。
