マネー研究所

野尻さんの定年1年生

週2日「複業」します 資産づくりのプロの定年事始め

日経マネー

2019/6/14

現在の業務の継続は前提になりました。ただ、60歳を過ぎていつまで続けられるか分からない、まして外資系です。そこで、現在の業務を週3日にして、残りの2日を他の仕事にと考えました。6割と4割に分けた仕事、「ロクヨン人生」です。働くだけで10割かと言わないでください。まだまだ働きたいのですから。

その4割の「他の仕事」が、「お金のソートリーダーシップ」です。なじみのない言葉かもしれませんが、「お金に関する新しい考え方を提示する」仕事と思ってください。

■「フィンウェル」に込めた意味

私はこれまでフィデリティ退職・投資教育研究所長として、「老後難民」「逆算の資産準備」「定率引き出し」「デキュムレーション(資産活用)」といった言葉や考え方を世に問うてきました。そのいずれもが日本では新しい考え方や気付きだったと自負しています。これが「ソートリーダーシップ」です。これをさらに運用の枠にとどまらず広く考えていけないだろうか。「退職の定義」「地方都市への移住」「独立的な資産運用アドバイス」などは、もう少し広い意味での「お金のソートリーダーシップ」になると思います。

(イラスト:平田利之)

例えば英国のIFA(独立系金融アドバイザー)といった業務は超高齢社会の日本で一段と求められます。しかしまだ日本には根付いていません。私はアドバイザーではありませんが、より客観的にその重要性を伝えられる立場に自分を置こうと思っています。

「これまでと変わらないのか」といわれるかもしれませんが、こうした思いは、30年近く前から自分の中にあったように思います。

バブル経済崩壊の1991年から95年まで、私はニューヨークに駐在して金融担当アナリストとして、米国の金融機関の経営を調べていました。その中で「株式市場の死の時代」といわれた70年代を分析したことで、金融ビジネスは「個人を出発点とすることが不可欠」との思いを強く持っています。

その分析は、『米国株式市場の死と再生』(経済法令研究会)という本として上梓できました。これが、自分の根っこにあるように思います。退職してからの方が、このことを突き詰められるかもしれません。より独立的に、現場に根付いたものにしたいとも思っています。

「白雪姫と7人の小人」の絵は野尻さんの自宅のリビングに飾られてある

そのための新しい仕事の足場として、「合同会社フィンウェル研究所」を立ち上げました。フィンウェルは「ファイナンシャル・ウェルネス(金銭的な健康度)」を短くした言葉です。家計の予算、負債の削減、万一のための資金準備、そして退職準備を総合的に考えること。こうした個人のレベルのお金の話を研究して世に問うていくというのが、この会社の目標です。

フィデリティ退職・投資教育研究所の所長としての仕事を6割でやりながら、残り4割は新しい仕事を行う「複業」態勢です。どちらかをメインにして、どちらかをサブにするという「副業」ではなく、どちらも同等な「複業」にすることがまずは最大のポイントです。

そう、退職を記念して絵を1枚買いました。「白雪姫と7人の小人」の絵です。女房からは買う時に「即決だね」と言われましたが、7人の小人が主役だったのが気に入りました。「そうだ、まだまだ金鉱掘りを続けよう」という自分の気持ちにつながったのが即決させたのだと思います。まあ、ちょっとした決意表明みたいなものです。

野尻哲史
フィデリティ退職・投資教育研究所所長、フィンウェル研究所所長。一橋大学卒業後、内外の証券会社調査部を経て2006年にフィデリティ投信に入社。07年からフィデリティ退職・投資教育研究所所長。19年にフィンウェル研究所を立ち上げ「複業」をスタート。アンケート調査を基にしたお金に関する著書・講演多数

[日経マネー2019年7月号の記事を再構成]

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日経マネー 2019年 7 月号

著者 : 日経マネー編集部
出版 : 日経BP
価格 : 750円 (税込み)


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