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著者に聞く 仕事の風景

二刀流・大谷を育てた監督 「サーバント上司」に学ぶ 『部下に9割任せる!』 吉田幸弘氏

2019/6/12

部下に仕事を任せるリーダーが心がけたいのは「叱らない」「怒らない」「追い込まない」の「3ない」だ。うまく結果を出せなかった部下をきつくとがめてしまうと、「任せた判断がそもそも間違い」「過重な業務」「助けてくれなかった」など、反発や不満を呼び起こしかねない。信頼感が崩れ、目標未達よりも大きなダメージをチームに与えるリスクすらある。「失敗に至った事情を聞き出して部下と共有し、善後策を一緒に考えてあげないと、部下がついてこなくなる」と、吉田氏は懸念する。

■部下は「働いてくれるお客様」

きつく叱られた部下は以後、「上司から怒られないように動きたい」という気持ちを募らせてしまう。結果的に「目標の低い設定」や「ミッションの固辞」などにつながりかねない。上司との接点を避けたり、無難な物言いにとどめたりもしがちになる。「仕事を引き受けるのは、自分にとって損」という意識が強まれば、「チーム全体のパフォーマンスが下がる。任せる相手がいなくなって、上司が立ち往生に追い込まれる。つまり、自分の降格リスクが大きくなる」と、吉田氏は部下を追い込むことの愚を語る。

部下にチャレンジの意欲を持たせるのもリーダーの役割。写真はイメージ=PIXTA

過剰にへりくだったり、部下のご機嫌をとったりするには及ばないが、一種の「部下マーケティング」は意味があると吉田氏はみる。本来は顧客や上得意に向けて行う、接客や販促の取り組みを、チーム内の部下に対して試みるのだ。吉田氏は「部下は『働いてくれるお客様』といえなくもない。少なくとも気持ちよく自発的に働いてもらえる環境づくりは上司・リーダーの職務であり、そうであるなら、お客様の好みやニーズに目配りするのは当然ともいえる」という。

サーバント型リーダーには部下の話を聞く能力や、共感できる人柄、成長を助ける態度などが求められる。しかし、現実のリーダーは時に年齢や経歴が部下とは大きくずれていて、部下側から距離を置かれてしまうケースもある。こういう場合にもナンバー2、3の存在が助けになる。「チームをまとめる業務さえも、ナンバー2、3との間で分かち合っておけば、立場の異なる若手ともチームを組みやすくなる。自分が別の業務に集中しても、チームのパフォーマンスに影響が出にくい」と、吉田氏はチーム内分権の意義を強調する。

■一人ひとりに対して丁寧に

指導者的な存在の旧来型リーダーは今の部下の感覚からは「上から目線」と嫌がられがちだ。2018年の新入社員を対象にしたアンケート調査(リクルートマネジメントソリューションズ調べ)によると、「あなたが上司に期待することは何ですか?」という質問で、最も多かったのは「相手の意見や考え方に耳を傾けること」(47.4%、複数回答)だった。2位は「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」(41.7%)で、上意下達や叱咤(しった)激励は支持を得にくくなっていることを示す。吉田氏は「時代は変わったと気づくことが大事」と、変化の受け入れを求める。

チームで働く、チームを盛り上げるといった、新リーダーの働き方は転職に際しても身を助けそうだ。かつてプロ野球の世界では有力球団から移籍してきた選手がチーム内で嫌われて、真価を発揮できないケースがあった。「俺がかつて在籍していた球団のやり方は~」といった、移籍先を低く見るような態度が原因だった場合もあっただろうと、吉田氏はみる。「スムーズにチームへ溶け込んで、全体のパフォーマンスを高めるのは、転職が当たり前の時代に必須のスキル」(吉田氏)となりつつあるようだ。

吉田幸弘
人材育成コンサルタント、上司向けコーチ。リフレッシュコミュニケーションズ代表。経営者・中間管理職向けに、人材育成、チームビルディング、売り上げ改善の方法を中心としたコンサルティング・研修業務を手掛ける。著書に『リーダーの「やってはいけない」』など。1970年東京都生まれ。

部下に9割任せる!

著者 : 吉田幸弘
出版 : フォレスト出版
価格 : 1,620円 (税込み)

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