夫の鈍さに「爆発」してしまう
著述家、湯山玲子さん
時々主人に私の考えが伝わらず爆発してしまいます。「どうして怒っているの?」と主人は言います。時間をかけて話せば分かってくれるのですが、少し鈍すぎると思います。だから、こんな私とやっていけるのかもしれません。今のように爆発を繰り返していていいものでしょうか。(埼玉県・60代・女性)
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世の中にはよく、物事に感情的に「キレる」人がいます。そういう場面に出くわしたり、自分がキレた話を躊躇(ちゅうちょ)なく披露する人に出会ったりするたびに、私は「よく、この人はそんな恐ろしいことができるなぁ」と、あきれてしまうのです。
爆発の原因が相手にとって意味不明の場合、それはただの暴力。その場はやり過ごしても、回数とともに澱(おり)のようにたまって、結果、恐ろしい反動となって、言葉の発し手に襲いかかるのが常。理不尽な攻撃は、必ず相手を不快にさせ、因果応報のように自分に返ってきます。そう、これはキレる方が無自覚なほど恐ろしい。
なので、私は仕事でもプライベートでも、相手に爆発することはほぼありません。そういう風に見えているときも、キレるという暴力を意図的に使うという慎重かつ戦略的なもので、相手の反撃を見積もったうえでのあえての行為なのです。
相談者氏は夫君に対して「鈍すぎる」と思っている。それは「妻への忖度(そんたく)ができない」鈍さもあるでしょうが、キレる妻に正対しないオトナの対応を夫君がしている、言葉を換えれば「甘え」を許しているからなのではないでしょうか。
「人に自分の気持ちや考えを分からせる」ということは、実は本当に難しい。
というか、もはや分かってもらおうとすること自体をあきらめた方が、人間関係は良好にいくというのが今まで私が生きていた中の実感ですらある。そのうえで、相談者氏が自分の考え方にもっと理解を示してくれる「同志」を探すのならば、それはもう外に求めるしかありません。
気になるのが、分かってくれない夫に爆発を繰り返すことが、いつの間にか、ストレス発散の快感につながっていそうな気配があることですかね。それは夫婦関係においてフェアではないし、相談者氏の精神状態にとってもあまりいい状態ではありません。
ですから今後は、爆発はナシの方向で! イラっときたら、まずは深呼吸。アングリーマネジメントの方法に関しては今、たくさんの本が出版されていますので、それらを読んでみることもオススメです。
[NIKKEIプラス1 2019年6月8日付]
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