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深海底の地図を作る国際コンペ、日本チームが準優勝

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/6/17

ナショナルジオグラフィック日本版

「700万ドル・シェル・オーシャン・ディスカバリ・Xプライズ」で優勝を手にしたのは、14カ国の海洋科学者が参加した「GEBCO-日本財団」チーム。同チームが作製したSeaKIT(写真)と呼ばれる低コストの無人水上艇には、地球の海底をすばやく視覚化できるクラウドベースのデータ処理システムが搭載されている(PHOTOGRAPH COURTESY, XPRIZE)

地球の海底地形は、まだ大半が地図になっていない。少なめに見積もったとしても、未知の海底は80パーセントにおよぶという。つまり我々は地形に関して、地球よりも月のほうがよく知っているくらいなのだ。

この状況が、大きく変わりそうだ。非営利組織「Xプライズ財団」は2019年5月31日、海底マッピング技術を競うコンペティション「700万ドル・シェル・オーシャン・ディスカバリー・Xプライズ」の優勝チームを発表した。このコンペティションでは、海底をより安全に、すばやく、安価に地図化する技術を3年前から競ってきた。最終的に目指すのは、すべての海底とその生物圏を地図化し、将来の探索や科学的発見につなげることだ。

Xプライズの事務局長であるジョティカ・ヴィルマーニ氏は、こう述べている。「ガス・石油企業や米海洋大気局(NOAA)など海洋に関わるあらゆる団体が、共通の目標を目指して力を合わせています。その目標とは、だれもが利用できる海底地図を作ることです」

同コンペティションには、世界中から、プロの設計グループ、商業探査団体、大学の研究室、高校生のチームなどを含む数十チームが参加した。競技における基本的な課題は、水深4000メートルの海底から高解像度の画像を送信し、複雑な海底地形図を生成できる自律型水中探査機(AUV)を開発することだ。

これは一見、さほど難しくない課題のように思われるかもしれないが、水深4000メートルというのは、高い水圧、光のまったく届かない暗闇、冷たい水、好奇心旺盛なサメなど、機械にとって極めて過酷な環境だ。AUVはまた、完全に自律している必要がある。それはつまり、海岸から船も人の力も借りずに水に入り、収集したデータを人間の直接的な介入なしに送信する能力を持っていなければならないということだ。

驚くべきことに、複数のチームが、この条件を見事クリアしてみせた。

■2位は日本の「Team KUROSHIO」

3年間のコンペティション期間中に、12を超えるチームが、実用可能性のある次世代海底マッピング技術の開発に成功した。決勝に進出した5チームには、モナコ海洋博物館で行われた授賞式において、賞金が授与された。

400万ドルの大賞は、14カ国の海洋科学者が参加する「GEBCO-日本財団」チームに贈られた。同チームが開発したマッピングシステムは、無人水上艇とクラウドベースのデータ処理を組み合わせたもの。2018年12月にギリシャ沖で行われた実地試験の決勝における課題を完全にやり遂げたのは、このチームだけだった。

ギリシャのカラマタ沖で海底マッピング技術のテストを行う「GEBCO-日本財団」チームのメンバー(PHOTOGRAPH COURTESY, XPRIZE)

2位に入賞したのは、日本の「Team KUROSHIO(クロシオ)」だ。Team KUROSHIOのマッピングシステムは、最終の実地試験の大半をクリアしたうえ、さまざまなタイプのAUVが利用できる柔軟性の高いソフトウエアプラットフォームを開発したことで、大きな称賛を集めた。このほか特別賞として「ムーンショット賞」が、英国の「チーム・タオ」に贈られた。同チームのマッピングシステムは、観測モジュールが水中を回転しながら垂直に動くというユニークなものだ。

■海を守るには、まず「知る」必要がある

気候が変動し続けている今、海の複雑さと自然現象に与える影響を理解することは極めて重要だ。だからこそ海底の地図が必要と、ヴィルマーニ氏は言う。

「Xプライズ財団では、海洋に関するより大きな計画を進めています。わたしたちが目指すのは、海を健康に保つことです。何かを健康に保つには、人々がその価値を認めている必要があり、価値を認めるには、それについて人々が理解している必要があります。そして、理解するための最も基本的な方法が、地図を作ることなのです」

フォトジャーナリストのブライアン・スケリー氏は、40年以上にわたって、海の生物と水中環境を専門に撮影してきた。2016年、スケリー氏は、Xプライズの科学委員会の一員に加わった。3年間のコンペティションは、探査の重要性に世界の注目を集めるという点で大きな貢献をしていると、氏は述べている。

「わたしたちは、技術の進歩のおかげで、海について学び、海を守るための活動ができるすばらしい時代にいます。より速く、より多くを学べば、すべての人にとってよい結果が得られるでしょう」

ヴィルマーニ氏は、今回のコンペティションのおかげで多くの人々が力を合わせることのパワーを実感したと述べている。

「2015年12月にこのプロジェクトをスタートしたとき、専門家からは、わたしたちが定めた目標は無謀で、基準が高すぎるため、時間内にこのレベルの自律テクノロジーを開発できるチームは存在しないと言われました」とヴィルマーニ氏。

「今こうして、目標を実現できたと言えることが、とても誇らしい気持ちです。これは、人々が問題解決に全力で取り組めば、自分でも驚くほどの成果を上げることができるという証明です」

(文 GLENN MCDONALD、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年6月5日付]

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