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エベレストの登山渋滞 惨事を防ぐには何が必要か

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

2019年5月27日、米コロラド州のクリストファー・クリシュ氏(62歳)が、エベレスト登頂後の下山中に、標高7900メートルのキャンプ4で亡くなった。クリシュ氏の兄弟によると、死因は高山病ではなく心臓まひだという。

これで、エベレストでの2019年の登山シーズンの死者は11人になり、ヒマラヤの8000メートル峰における2019年春の死者数は計21人にのぼった。

ネパールの登山家ニルマル・プルジャ氏が5月22日に撮影したエベレスト渋滞の写真は、瞬く間に拡散した。頂上付近の尾根で何百人もの登山者が渋滞し、ほぼ途切れのない列を作っている写真だ。そして、多くの犠牲者が出たことと渋滞を結びつける議論に一気に火が付いた。

現地にいたガイドや登山者はどう考えているのか。下山後、ベースキャンプを離れた彼らは、何が起きたのかを今語り始めたところだ。意見はバラバラで、まったく一致は見られない。

カナダの撮影監督エリア・サイカリー氏は、インスタグラムにこう投稿した。「そこで目にしたものが信じられませんでした。そこには死、死体、混沌、行列がありました。登山ルートやテントの中の遺体、引き返そうとして亡くなった人、抱えられて下山する人、遺体の上を歩く人。あなたたちがセンセーショナルな見出しの記事で読んだことは、すべて私たちが登頂した夜に起きたことなのです」。この投稿はその後、削除された。

もっと日常的なものに例えた人もいた。「混雑する週末にスキー場の列に並んでいるかのようでした」と米ワイオミング州に拠点を置く映画製作者で、ナショナル ジオグラフィック協会に協力する、ダーク・コリンズ氏は話す。「エベレストで並ばなければならないというのは、予想とは異なり、いらいらするし、とても退屈なことでした」。ナショナル ジオグラフィック協会が率いる登山隊は、登頂を計画していたが、混雑のため引き返した。

しかし、一部のベテランガイドは、順番待ちの行列が人々を殺しているという意見に異を唱える。行列が直接の原因なのではなく、背後にあるもっと大きな問題が「行列」というかたちで表面化しているのだと言う。

「そのストーリーは誤解です。私の知る限り、順番待ちが原因で死亡した人は1人もいません。これは主に決断の問題なのです」と、登山ツアー会社「アルパイン・アセンツ・インターナショナル(Alpine Ascents International)」の米国人ガイド、ベン・ジョンズ氏は話す。

標高8500メートルでの順番待ちとは

問題は、写真が撮影された22日だけのことではなかった。翌日である5月23日、ジョンズ氏は登山ツアー隊の登頂を手伝っていた。「2人の登山者の後ろに50人の列ができていました。それが、私たちが出くわした唯一の問題でした」と同氏は話す。「その2人は、進むことも後ろの人を通すこともしなかったのです」。ジョンズ氏の推定では、約2時間も待っていたという。

長年エベレストについてのブログを書いてきたアラン・アーネット氏は最近、エベレストでの今シーズンの死者11人のうち5人が混雑によるものかもしれないと投稿した。

「下山するまでの十分な酸素がないにもかかわらず山頂を目指し続けるというのは、お粗末な決断です」とジョンズ氏の同僚ガイド、エリック・マーフィー氏は話す。「順番待ちをしているときには酸素の流量を少し下げ、使い果たすことのないようにしています」と同氏は、エベレスト山頂付近で必要な酸素を確保する方法を説明する。

同氏によると、行列の動きが遅いのは、何よりもリーダーシップの問題だという。「遅い登山者にシェルパが付いているなら、本当はそのシェルパが『人が通れるように脇に寄って少し休みましょう』と言うべきなのです。しかし、それは多くのシェルパにとっては、責任が重すぎるのです」と同氏は話す。

登山技術の微妙な差も移動速度を遅くしていると、マーフィー氏は指摘する。「平らな地形であっても、すべてのロープに登高器を取り付ける人もいるのです」と同氏は話す。登高器とは、固定ロープに取り付け、登山者の滑落を防ぐ道具だ。地形が平らな場合、通常のカラビナの方が速く、比較的安全でもある。登高器の付け外しには10~15秒かかる。「カラビナよりも、遅い方法なのです」

「混雑がニュースになりましたが、問題は登山者の経験不足なのです」と経験豊富なガイドで、ナショナル ジオグラフィック協会が率いる科学チームの一員でもあるマーク・フィッシャー氏は話す。「自己管理や効率的な登山技術、環境への適切な準備などを知らないようでした」

山頂付近の登山者数に影響を与えたもう1つの問題は、天候だ。例年、エベレストでは、登山者が登頂を目指せる比較的穏やかな天候の日が、5月に10~15日間ほどある。しかし、今シーズンはサイクロンの余波を受け、シェルパ隊が登山者のためにあらかじめ設置する固定ロープの完成が数日遅れた。5月14日に登山ルートが山頂まで開通した後も、天候が安定せず、登頂に適した期間がさらに短くなった。

5月19日ごろには、天気予報が完全に変わった。それまで最高の条件だと考えられていた5月24日が、最悪の条件に突如変わったのだ。風速が30メートルに達するとも予想されたため、多くの登山隊は5月22日か23日までに登頂に挑戦するよう日程を変更した。

ラッシュアワーを避けるという新たな戦略

2019年シーズンの最終的な公式のエベレスト登山者数はまだ発表されていないが、登頂者数の点では、今年は記録的なシーズンになるだろう。最新の報告によれば、今シーズン、ネパール政府が最多記録となる381通の許可証を発行したほか、許可を受けた登山者およそ140人がチベットから登頂を目指した(山で働くプロのシェルパは、この集計には含まれていない)。アラン・アーネット氏の報告によると、シェルパを含めた今年の登頂者の非公式記録は891人に上ったという。これまでの最多記録は2018年の802人だった。

中国は、許可証の発行数をはるかに少なくすることで、中国側のエベレスト混雑の問題を最小限に抑えている。

ジョンズ氏は、一部のガイドサービスの質にも言及する。「エベレストについて概観したとき、私が最大の問題と考えるのは、経験の浅い人や実力のない人を引き受けて登山させる地元企業です。関係者は耳を塞ぎたいでしょうけれど」

今年8000メートル峰で亡くなった21人の登山者のうち15人は、国際ガイドサービスの顧客ではなく、ネパール人が主催した登山隊の顧客だった。

「私たちは、どうやって混雑を避けるか、常に戦略を立てています」と同氏は説明する。「キャンプを発つ時間を数時間早くまたは遅くすると、まったく違う一日にできるのです。これがエベレストに関する決断のもう1つの面です。欧米のガイドサービスは互いに連絡を取り合っていますが、その他の事業者は違います」

これはデリケートな問題だ。ネパールの登山産業は儲かるため、欧米のガイドが長く独占してきた。ネパール人オーナーの企業が大きく進出し始めたのは、わずか過去10年ほどのこと。主に外資系企業よりも料金をはるかに低くすることで、顧客の望みに応えたのだ。

混雑が直接の死因ではないとしても、登頂に要する日数が長くなることが、リスクが増す原因であることに疑問の余地はない。エベレスト登山の力学を完全に変えてしまったのだ。

今シーズン、ネパール側からエベレストに挑んだドイツの登山家デイビッド・ゲトラー氏は、無酸素登頂を試みたが、結局、山頂まで200メートルの所で引き返さざるを得なかった。混雑によるリスクを許容できないと同氏は判断したのだ。

「たとえ今すぐ下山したいと言ったとしても、ほかのすべての下山中の人の列に並ばなければならないのです。体を暖かく保つのに十分な速さで動くこともできません」と同氏は説明する。「それは取るつもりがなかったリスクであり、大惨事につながる可能性が非常に高いものだったのです」

ゲトラー氏はこう続ける。「そうなることは予測できていました。エベレストに行って、混雑や技術に不平を言うのは誠実ではありません。メディアではよく取り上げられるでしょうが、モンブランやマッターホルンも同じなのです。私たちプロは、こうした場所に探検に行くのがいかに素晴らしいか、世界に伝えているのです。混雑するのも当然です」

ベン・ジョンズ氏もエリック・マーフィー氏も、10年以上もの間、顧客と共にエベレストに登ってきたことに触れ、否定的な報道が続いていることを嘆く。「人間関係を築けば、その目標を達成するうえで培った友情は特別なものになります」とマーフィー氏は語る。

「家に帰ると、友人や家族から、現地で何が起きているのかを聞かれます。彼らが耳にするのは、毎年報道されるこうした否定的な内容ばかりだからです。しかし、それは真実ではないと私は思います」とジョンズ氏。「登山で悪い結果を招くのは、1つの決断ではなく、判断ミスを重ねることなのです」

(文 FREDDIE WILKINSON、訳 牧野建志、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年6月1日付]

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