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エベレストの登山渋滞 惨事を防ぐには何が必要か

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/6/15

ナショナルジオグラフィック日本版

エベレスト登山で最も危険な場所の1つであるクンブ・アイスフォールを通る登山者の列(PHOTOGRAPH BY MARK FISHER/FISHER CREATIVE, NATIONAL GEOGRAPHIC)

2019年5月27日、米コロラド州のクリストファー・クリシュ氏(62歳)が、エベレスト登頂後の下山中に、標高7900メートルのキャンプ4で亡くなった。クリシュ氏の兄弟によると、死因は高山病ではなく心臓まひだという。

これで、エベレストでの2019年の登山シーズンの死者は11人になり、ヒマラヤの8000メートル峰における2019年春の死者数は計21人にのぼった。

ネパールの登山家ニルマル・プルジャ氏が5月22日に撮影したエベレスト渋滞の写真は、瞬く間に拡散した。頂上付近の尾根で何百人もの登山者が渋滞し、ほぼ途切れのない列を作っている写真だ。そして、多くの犠牲者が出たことと渋滞を結びつける議論に一気に火が付いた。

現地にいたガイドや登山者はどう考えているのか。下山後、ベースキャンプを離れた彼らは、何が起きたのかを今語り始めたところだ。意見はバラバラで、まったく一致は見られない。

カナダの撮影監督エリア・サイカリー氏は、インスタグラムにこう投稿した。「そこで目にしたものが信じられませんでした。そこには死、死体、混沌、行列がありました。登山ルートやテントの中の遺体、引き返そうとして亡くなった人、抱えられて下山する人、遺体の上を歩く人。あなたたちがセンセーショナルな見出しの記事で読んだことは、すべて私たちが登頂した夜に起きたことなのです」。この投稿はその後、削除された。

もっと日常的なものに例えた人もいた。「混雑する週末にスキー場の列に並んでいるかのようでした」と米ワイオミング州に拠点を置く映画製作者で、ナショナル ジオグラフィック協会に協力する、ダーク・コリンズ氏は話す。「エベレストで並ばなければならないというのは、予想とは異なり、いらいらするし、とても退屈なことでした」。ナショナル ジオグラフィック協会が率いる登山隊は、登頂を計画していたが、混雑のため引き返した。

登山隊は一連のキャンプを設営する。キャンプ3で十分に休んだ後、さらに山を登りキャンプ4で次の休息を取り、山頂を目指す(PHOTOGRAPH BY NATIONAL GEOGRAPHIC)

しかし、一部のベテランガイドは、順番待ちの行列が人々を殺しているという意見に異を唱える。行列が直接の原因なのではなく、背後にあるもっと大きな問題が「行列」というかたちで表面化しているのだと言う。

「そのストーリーは誤解です。私の知る限り、順番待ちが原因で死亡した人は1人もいません。これは主に決断の問題なのです」と、登山ツアー会社「アルパイン・アセンツ・インターナショナル(Alpine Ascents International)」の米国人ガイド、ベン・ジョンズ氏は話す。

■標高8500メートルでの順番待ちとは

問題は、写真が撮影された22日だけのことではなかった。翌日である5月23日、ジョンズ氏は登山ツアー隊の登頂を手伝っていた。「2人の登山者の後ろに50人の列ができていました。それが、私たちが出くわした唯一の問題でした」と同氏は話す。「その2人は、進むことも後ろの人を通すこともしなかったのです」。ジョンズ氏の推定では、約2時間も待っていたという。

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