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W杯だ!ラグビーを語ろう

ぶつかり、疾走する体に魅力 寺山修司にもラグビー詠 歌人・佐佐木幸綱さん

2019/6/11

――詩歌のモチーフになるとすれば、ラグビーのどのようなところでしょうか。

「やっぱり(頭ではなく)体で感じとるようなところでしょうね。ラグビーにはメンタルな面はもちろんあるけれども、(作品として)表現するときにイメージするのは、フィジカルというか体のことになるんじゃないかな。駆け引きみたいなものが通用しない部分もありますからね」

楕円球のバウンドには「ドラマみたいなものが隠されている」(東京・世田谷)

「体のぶつかり合いは見る側にも面白い。ヨーロッパの6カ国対抗なんか見ていると、相撲と似ていると思うんだよね。お相撲さんはおなかが大きかったり、背が高かったり、特別な人がやっているでしょ。ラグビーも普通の人とは次元が違う2メートルを超すような選手の肉体同士がぶつかり合う。夢を見ているような楽しさがあると思いますね」

――早稲田大学でラグビーを続けなかったのはどうしてですか。

「そろそろ将来のことを考えたんじゃないですかねぇ……。体も小さかったですから。ただ早稲田の試合はずいぶん、見に行きました。1990年より前の早稲田は集散のスピード感がとても良くて、それがチーム全体のイメージになっていましたよね。素早く広がったり縮まったり。自分がバックスをやっていたこともあって、早稲田の展開の速さには憧れのようなものがありました。夫婦で早稲田のレプリカジャージーを買ったこともありますよ」

――早大の先輩で親交があった寺山修司さんとラグビーについて語り合ったことは。

「それは特になかったですが、寺山はラグビーが好きだったんですね。大学に入ったころ体が悪くなって入院しちゃう。プレーをしたことはなかったと思いますが『ラグビーの頬傷は野で癒ゆるべし自由をすでに怖じぬわれらに』といった歌がありますよね。彼はボクシングも好きで、僕がジムに通っていたときに『ファイティング原田に会ったことがあるか』という話をしたのは覚えています」

■W杯、若いファン増えるきっかけに

――万葉集が出典の「令和」に改元した年のラグビーW杯。広く万葉集をPRするチャンスでは。

「なかなか外国人には無理でしょうけど、日本人だけでも関心をもってくれるといいですよね。万葉集の本も結構、売れてますよ」

「W杯は若いラグビー好きが増えてくれるきっかけになってくれればと思いますね。日本代表には、なんとか1次リーグを抜けてほしい」

――ラグビー観戦の初心者に『ここを見てほしい』というポイントはありますか。

「走るところですかね。疾走感覚みたいなもの、そこじゃないかな。スクラムの面白さは、やってみないとわからないでしょ」

――ラグビーを詠んだ自作からあえてひとつ選ぶとすれば。

「うーん……。(ボールを高く蹴り上げる)ハイパントの歌(ハイパントあげ走りゆく吾の前青きジャージーの敵いるばかり=『群黎』)が、自分でも割といいんじゃないかと思っています」

佐佐木幸綱
1938年(昭和13年)10月、東京生まれ。57年成蹊高卒。59年、自身の誕生日に父・治綱さんが急逝したことをきっかけに歌人の道に進む。63年早大一文卒、66年早大院修士課程修了。87年早大教授、2008年早大名誉教授。現代歌人協会賞、迢空賞、若山牧水賞、斎藤茂吉短歌文学賞など歌集の受賞多数。著書に『底より歌え』『万葉集の〈われ〉』『芭蕉の言葉』など。歌人の俵万智さんの師としても知られる。

(聞き手 天野豊文 撮影 岡村亨則)

これまでの「W杯だ!ラグビーを語ろう」はこちらです。併せてお読みください。

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