適度なストレスは健康にいい 休息とのバランスがカギストレス解消のルール(9)

日経Gooday

写真はイメージ=(c)Aleksandr Davydov-123RF
写真はイメージ=(c)Aleksandr Davydov-123RF
日経Gooday(グッデイ)

まずは、こちらをご覧いただこう。これをどう思うだろうか?

一、ストレスは「生きる幸せ」を感じさせるもの

二、ストレス反応である疲労は心身を守る「安全弁」

三、ストレスは休養とのバランスがとれることで「心の健康」につながる

これは、「ストレスの正体」だ。

「ストレス」は何かと悪者に思われる。かくいう私、健康ジャーナリストの結城未来も、疲れるたび、嫌な気持ちになるたびに「最近、ストレスが多くて……」と、ストレスを言い訳にしてきた気がする。「ストレスがなければ、どんなにハッピーな毎日が訪れることだろう」とも思ってきた。

そんなわけで、この連載のタイトルは「ストレス解消のルール」なのだが、実はストレスは一種の「必要悪」であり、「生きるためのマストアイテム」でもあるらしい。日本大学医学部精神医学系・内山真主任教授に取材し、ストレスの正体を探った。

ストレスのない人生は実は不幸せ?

――内山教授「そもそも、『ストレス』という言葉をどういう意味で使っていますか?」

インタビュー開始直後、内山教授からのいきなりの質問に驚いた。そういえば、当たり前のように「良くないもの」として使っている気がする。

――内山教授「恐らく『心労』『懸念』などの意味で使っているケースが実際には多いでしょう。では、そういう意味でのストレスは、昔に比べて現代人のほうが多いと思いますか?」

世の中には、「ストレスの多い現代」という言葉が闊歩(かっぽ)しているし、そう思い込んでいたふしもある。

スイスの山岳地帯。一見のどかでストレスとは無縁に見えるが…。写真はイメージ=(c)Hirotaka Ihara-123RF

――内山教授「実は、時代によって内容が変わっているだけで、昔から人類にストレスはつきものだといわれています。

例えば、『アルプスの少女ハイジ』の舞台になるスイスの山岳地帯。一見のどかでストレスがなさそうに思えますよね。実際スイスは梅雨もなく、春夏は気候が穏やかで過ごしやすい場所のようです。一方、冬はとても寒く厳しい環境に一変します。それ以外の季節でも心配や懸念は多い。欧州では羊がオオカミに襲われる脅威などもあるので、夜はぐっすり眠るわけにはいかなかったという記録もあります。

これは、昔の日本でも同様です。夜は畑を荒らしにくるイノシシを撃退しなければいけなかったので、おちおち眠ってはいられなかった。昔の人たちは、農業などで過酷な自然の脅威と闘いながら生きていたのです。つまり、生きていくうえで心労、つまりストレスは昔からあったことになります」

なるほど。現代に限らず、昔から人間は「ストレス」の原因になる困難と闘ってきたことになる。

――内山教授「そもそも、『ストレスがない』ことが本当の幸せだと思いますか?」

「ストレス=心労=自分を疲弊させる原因」だとしたら、ないほうが幸せのように思える。

――内山教授「より良く生きようと思うと現実とのギャップを感じます。何らかのストレスを感じるものです。反対に、『このままでいいんだ』と思うとこの落差はなくなるけれど、今度は生活の満足度が低くなってきます」

「生活の満足度」、というのは「幸せ」ということだろうか?

――内山教授「そうですね。『幸せ』であり『心の健康』にもつながるものです。では、『やりがいのない仕事を機械的にこなすだけで、食べるには何とか困らない生活』と、『ちょっと大変なこともあるけれど自分の能力を生かした仕事で達成感がある生活』、どちらの満足度が高いと思いますか?」

それはもちろん、やりがいを感じられたほうが満足度が高い。

――内山教授「以前に行った国内調査でも、その通りでした。『達成感の高い人が心の面で健康』ということが分かったのです。『ストレスを避けなさい』というのは正しいことだと思います。でも、それはあくまでも程度問題。ストレスをとことん避けたらそれだけ幸せなのかというと、必ずしもそうでもなさそうなのです。そもそも、みんなで協力しながら生きている実生活の中では、多少なりとも人に気を使うことが多い。自分だけストレスが全くないというのは現実には難しいですね」

では、「ストレス」について、どう考えたらよいのだろうか?

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