医療費や保育料の負担が変わる 住民税の意外な仕組み住民税の基本(中)

良男 年金暮らしの親といえば、国民健康保険や75歳以上なら後期高齢者医療制度に加入しているはずだけど、保険料は住民税と関係あるの?

幸子 以前は住民税額を基に保険料を決める自治体もあったけど、いまは加入者の総所得を基に計算する方式に統一されたわ。総所得というのは年金収入だけでなく、不動産所得や配当所得などを合計したものね。国保の保険料は均等割と所得割の合計だけど、扶養家族という考え方がないので、均等割は加入者すべてが負担するのよ。

 均等割と所得割って住民税と似てるね。

幸子 所得割は加入者の総所得金額から、基礎控除額33万円を引いた金額に、自治体が定めた保険料率を掛けて計算するの。住民税は総所得から基礎控除だけでなく扶養控除や配偶者控除なども差し引けるから、国保のほうが負担は大きいといえるわね。ただ、総所得が33万円以下などの低所得者世帯は均等割が最大7割減額されるのよ。

 65歳以上の介護保険の保険料も住民税の課税・非課税で違ってくると聞いたことがあるな。住民税っていろんなことにかかわっているのね。

幸子 年金生活者など高齢者が注意したいのは、株式の配当金や売却益が多額にあった年は総所得が膨らみ、翌年の住民税や保険料負担が重くなってしまう点ね。医療費の窓口負担も例年なら1割で済むところが、所得が増えて「現役並み」の区分になり、3割負担になることもあるわ。その年には高額療養費制度の自己負担限度額も上がってしまうので、大きな病気をして入院や通院が増えると、一時期に家計が圧迫される可能性もあるわね。

良男 社会保険の負担や自治体による給付など、幅広い分野に住民税が関係してるんだな。

幸子 10月の消費税増税に伴って幼児教育・保育の無償化や、恒久的な給付金である「年金生活者支援給付金」も創設されるのよ。この給付条件にも住民税非課税世帯かどうかがかかわっているわ。住民税は賦課課税なので、工夫をして負担を減らすということはできないけれど、社会保障や福祉サービスのいろんなところで顔を出すので、もっと意識してもいい税金だと思うわ。

■高齢の親、世帯分離で負担減も
社会保険労務士 井上大輔さん
会社を定年退職すると、健康保険については住んでいる自治体の国民健康保険に加入する、健保の任意継続制度を2年間利用するなどの選択肢があります。健保では配偶者を扶養に入れていた人も、国保に入ると加入者数に応じた保険料負担が発生します。前年の所得と加入者数から世帯ごとに保険料を計算するため、家族の所得も保険料に影響します。
同居する親を健保の扶養に入れている人も注意が必要です。親が75歳になると扶養から外れて後期高齢者医療保険制度に加入します。同一世帯に所得が多い人がいると、親は保険料の減免が受けられないため、親だけを別の世帯に分けることがあります。親はほぼ年金収入だけになるので、住民税や保険料の負担を軽減できる場合があります。世帯分離は自治体で手続きをします。(聞き手は川鍋直彦)

[日本経済新聞夕刊2019年6月5日付]