2019/6/23

最大トルクを3950rpmの低回転で発生するパラレルツインエンジンは、トラクションがつかみやすい270度クランクを採用し、スロットルのオン/オフに対して過不足なくレスポンスする。エンジン回転の上下動にサスペンションのストロークがぴったりと追従してくれるため、右手の動きひとつで走りのリズムを作れるところがいい。そのせかされないアナログ感がほどよく、ハンドリングもネオクラシックなデザインに見合うように仕立てられている。

充実した装備も「スクランブラー1200」の特徴。キーレススタート機構やUSB電源ソケットに加え、「XE」ではグリップヒーターも標準装備される
「ボンネビルT120」のエンジンをベースに独自の改良を施した1.2リッター直列2気筒SOHCエンジン。90psの最高出力と110Nmの最大トルクを発生する

とはいえ、サスペンションのストローク量は前後ともに250mmずつある。これは、一般的なオンロードモデルの倍ほどの数値で、同クラスのオフロードモデルでも180~200mm程度であることを踏まえると絶望的に(?)足が長い。870mmのシート高もかなり高い部類で、身長が180cmあってもツマ先立ちはまぬがれない。それくらいのサイズ感である。

もしもこれで車重が重たければ心底ツラい日常が待っていそうだが、装備重量は227kgと常識的で、車幅もスリムだ。そのため、取り回しやUターンは比較的容易である。もちろん、街中での扱いがまったくストレスフリーとまでは言わないものの、この抜群のスタイルとの引き換えなら、利便性や快適性に少々目をつぶるだけの価値はある。少なくとも体を鍛え、筋力をつけて挑むほどのストイックさは必要なさそうだ。

アドベンチャーモデルとしての資質が高い

それでも「いくらなんでもこれは…」というライダーの受け皿もちゃんと用意されていて、それが「スクランブラー1200 XC」である。

これはXEを少しコンパクトにしたバージョンで、エンジンやフレームを共有しながらサスペンションのストローク量を前後とも200mmに制限。それに伴ってホイールベースは40mm短くなり、シート高も30mm下げられたフレンドリー仕様だ。

ライダーをサポートする先進装備も「XE」の特徴。同グレードには慣性計測ユニットが搭載されており、リーンアングルに応じてABSとトラクションコントロールの利きを自動調整する

ただし、XCを選ぶとバンク角や加速度を検知するIMU(慣性計測ユニット)が省略されるところが痛し痒(かゆ)し。これによってトラクションコントロールやABSの制御範囲がせまくなるため、オフロードも含めて本気でスポーツしたいライダーは、やはりXEに優位性がある。

レバー比の変更が可能なブレーキレバー、精度の高いシフトフィーリングをもたらすチェンジペダルとギアボックス、直感的な操作が可能でグラフィックも美しいメーターなど、操作系コンポーネントの完成度は最近のトライアンフに共通する美点だ。ライダー本位のバイク作りは明らかに他メーカーをリードし、エンターテインメント性も持ち合わせている。

今回、オフロード走行の機会はなかったため、本当のポテンシャルには迫れていない。しかしながら、ネオクラシックやスクランブラーという枠組みを超え、1台のアドベンチャーモデルとして高い資質を備えていることは十分伝わった。

シートにまたがり、スロットルを開けた先にある縦横無尽の感覚。実際にそこへ至るかどうかは別にして、その入り口に立てることの意味は大きい。車名の末尾に付く「XE」に込められているのは「エクストリーム」の意味だ。それこそがこのモデルの本質に他ならない。

(ライター 伊丹孝裕)

【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2325×905×1250mm
ホイールベース:1570mm
シート高:870mm
重量:227kg
エンジン:1200cc 水冷4ストローク直列2気筒 SOHC 4バルブ
最高出力:90ps(66.2kW)/7400rpm
最大トルク:110Nm(11.2kgm)/3950rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:4.9リッター/100km(約20.4km/リッター、WMTCモード)
価格:217万4100円

[webCG 2019年5月23日の記事を再構成]

MONO TRENDY連載記事一覧