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VRで見る歌舞伎 津田大介「両方の世界広げるかも」

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さまざまな場面で活用されている「VR」(仮想現実)。この最新技術を「歌舞伎」という伝統芸能と組み合わせたのが、松竹が手掛ける「VR歌舞伎」だ。世界各地でVRコンテンツを取材してきた津田大介氏が実際に体験して感じたのは、歌舞伎とVR、両方の世界を広げる可能性だった。

◇  ◇  ◇

今回、体験したのは兵庫県豊岡市出石(いずし)町にある永楽館で撮影された「永楽館歌舞伎」。歌舞伎俳優の片岡愛之助さんが10年以上にわたって行っている公演を、2018年10月、4K VR撮影したものだという。実際には公演すべてを収録しているそうだが、僕が見たのはそれを3分程度にまとめたダイジェスト映像だ。

実際に見て、そのリアリティーに驚いた。永楽館は明治34年に開館した近畿で現存する最も古い芝居小屋。収容人数368人という小さな施設で、観客は椅子ではなく座布団に座って舞台を見る。その最前列にカメラが置かれているのだ。

役者との距離が非常に近く、所作や表情、着ている衣裳(いしょう)の模様や質感までしっかりと見ることができる。舞台から視線を外すと、周囲に座る人たちの表情、そして大正11年ごろの姿に再現されたという小屋の様子が目に入ってくる。花道も近い。4Kで撮影された映像はクリアで没入感があり、劇場の雰囲気も含め、とても楽しむことができた。

実際で見るのと異なる魅力

僕は芝居が好きでよく見にいくのだが、実はこれまで歌舞伎を劇場で見たことはなかった。今回のVR歌舞伎を制作した松竹の子会社ミエクル(東京・中央)の井上貴弘社長によると「歌舞伎よりも先にVR歌舞伎を体験したのは津田さんが初めてかもしれない(笑)」。いい機会なので、VR歌舞伎を楽しんだ直後に、東銀座の歌舞伎座を訪れ、実際の舞台で歌舞伎を鑑賞することにした。

歌舞伎座で見た歌舞伎とVR歌舞伎を比べると、劇場の雰囲気や音の響きなどは、当然ながら迫力が違う。ただ小さな永楽館に比べると歌舞伎座の収容人数は「1808席+幕見席」とかなり大きい。僕が見たのは2階席で、舞台や花道とは距離があった。全体を見渡して歌舞伎の華やかな雰囲気を感じたり、舞台全体の動きを追うにはある程度離れていたほうが見やすい。しかし、VRで体験した細かなディテールは見えない。2階席から双眼鏡で舞台を見ていた人がいたが、質感や迫力という点はVR映像のほうが満足度は高いのではないかと考えたほどだ。

芸術監督を務める「あいちトリエンナーレ2019」(8月1日~10月14日)でVRを活用した展示ができないかと、ここ数年、さまざまなVRコンテンツを体験してきた。アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の「CARNE Y ARENA」に代表されるような、完成度の高い作品もあるが、正直、VRで撮影しただけという質の低いものも少なくない。そんな中で、VR歌舞伎はその世界に没入できる、魅力的な体験に仕上がっていた。

VR用の演目がほしい

VR歌舞伎の可能性について、井上社長は「実際に歌舞伎を鑑賞するのが難しい人に歌舞伎を体験してもらいたい」と話す。「もともと歌舞伎は好きだったけれど、何らかの理由で劇場へ足を運べなくなった人は多くいます。例えば、高齢で老人ホームへ入った人でも、VRならその場で観賞できます。今は、高齢者が集まる施設へ出向いて、VR歌舞伎の観賞会などを提案しています」

また「新しい歌舞伎ファンを獲得する役割も期待している」という。確かにその路線も有効だろう。未体験の人間からすると、歌舞伎は気軽に行きづらいという雰囲気があるのではないか。まずVRで体験できれば、僕のように劇場でも鑑賞してみたいと興味を持つ人も増えるに違いない。

インバウンドが盛り上がっている今なら、空港や観光地などに設置する手もある。VRなら大がかりな設備を作らなくてもいい。ヘッドセットだけ用意して地方巡業や海外公演を行うこともできるかもしれない。

ただVR歌舞伎を本格的に展開していくなら、歌舞伎の演目自体をVR用に作り替えることも検討したほうがいいのではないか。僕がVRで見たのは3分間のダイジェストだったが、実際の歌舞伎は一幕で2時間近くに及ぶ演目もある。それだけの時間、ヘッドセットをつけ続けるのはかなりの負担になるだろう。

松竹では「VR酔い」などの健康面の問題について大学と協力して検証に取り組んでいるそうだが、それと並行して、VR歌舞伎は30分程度にまとめて実際の舞台では再現できない派手な演出を見せるなどといったアプローチを試してみてもいいのではないか。

漫画「ワンピース」やボーカロイド「初音ミク」とコラボレーションした演目を披露するなど、歌舞伎界は伝統を守りつつ新しいチャレンジを続けている印象がある。そういった取り組みにVRを取り入れることで、初心者の背中をさらに押すことにもつながると思う。

親和性の高いVRと歌舞伎

今回、VR歌舞伎を体験して、改めてVRと歌舞伎は親和性が高いと思った。

歌舞伎には花道という舞台装置があり、役者の登場に合わせて振り返るなど視線の移動が発生する。映画などの視線が固定されている作品よりVRを使う意味が大きいコンテンツといえる。それは「VRとはどんなものか」を理解・体験する入門編としても適していることも意味する。

歌舞伎とVRを組み合わせることで、より多くの人が歌舞伎を楽しめるようになるだけでなく、VR活用の可能性も広がっていくと思うのだ。

津田大介
 ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。「ポリタス」編集長。1973年東京都生まれ。メディア、ジャーナリズム、IT・ネットサービス、コンテンツビジネス、著作権問題などを専門分野に執筆活動を行う。主な著書に「情報の呼吸法」(朝日出版社)、「Twitter社会論」(洋泉社新書)、「未来型サバイバル音楽論」(中公新書ラクレ)など。近著に「情報戦争を生き抜く」(朝日新書)。芸術監督を務める「あいちトリエンナーレ2019」が8月1日から開催される。

(編集協力 藤原龍矢=アバンギャルド、写真 渡辺慎一郎=スタジオキャスパー)

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