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ジャガーEV 俊敏に走る都会派SUV 問題は充電環境

2019/6/20

EVだけど、過度にEVらしさを演出しない。これも歴史を持つ高級車ブランドのプライドではないのだろうか。正直、エンジン車から乗り換えても違和感がないEVだと思う。航続距離が438kmと長めとなる点も重要だろう。

このようにI-PACEは、単純に乗用車として捉えても、かなり魅力的だ。モダンなスタイルは、個性的でクール。バッテリーなどのシステムから高価となるEVだけに、価格が959万円からとなるが、エントリーグレードの「S」でも装備は充実している。価格に納得できれば、ユニークなスタイルと未来的なコックピット、ボディーサイズを超えた広々した車内、静かで快適に移動しながらも環境負荷が抑えられるなど、先進的な高級車を所有しているという満足感が得られるはずだ。

実際にI-PACEを買おうかどうか考えたとき、最大の問題となるのは、クルマではなく、充電インフラではないか。EV全体で駆動バッテリーの大型化が進む今、日本の急速充電器(CHAdeMO規格)の出力では物足りなくなってきている。しかも一般的な充電の制限時間として設定されるのは30分間。これではバッテリーを80%まで回復するのは難しく、ロングドライブする場合はこまめに充電を繰り返す「ちょい足し充電の旅」となってしまうだろう。

しかも急速充電器の中には、現状システムの最大出力となる50kWまで出力が出ていないものも多く、たとえ充電できても想定よりも充電量が少ないという事態もあり得る。さらに急速充電器の設置は増えているものの、ほとんどの設置場所は一基が基本。先客がいる場合、最大30分間、その場で待つかバッテリー残量を気にしながら次の充電所まで向かうことになる。

とはいえ、自宅に普通充電器を設置し、自宅周辺や多用する出先付近に急速充電器があるならば、充電に対するハードルはぐっと下がる。使用環境がマッチすれば、EVも未来の乗り物といえない状況にはなってきているのも確かだ。またカーナビでは、充電器の設置場所を検索することもできる。

世界的な環境政策もあり、冒頭に「数少ない」と書いたEVの選択肢は、今後、続々と増えていくことだろう。例えば、メルセデス・ベンツは、年内に、初のBEVとなる「EQC」の日本投入を予告している。ただ日本では、そのスピードにインフラの充実が追いついていないのが現実。しばらくは、クルマは気に入ったけれど環境のせいで購入に二の足を踏むという人も多くなりそうだ。

しかし、それを踏まえても、I-PACEは「もっと乗ってみたい」という感情を呼び起こしてくれた。今後登場するEVが単なるエコカーではなく、クルマ好きの心を引き付けるEVであることへの期待が膨らむ。

自動車の電動化は、環境施策の点ばかりがフォーカスされるが、車両が高価な分、ユーザーの期待が大きいのも確か。また今後もテスラのような新規参入も予想されるだけに、自動車メーカーもプライドをかけて開発に取り組んでいる。多くの人が想像する以上に、EVは我々に新たな楽しみをもたらしてくれるかもしれない。

大音安弘
1980年生まれ、埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在は自動車ライターとして、軽自動車からスーパーカーまで幅広く取材している。自動車の「今」を分かりやすく伝えられように心がける。

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