エシカルジュエリーの伝道者、白木夏子氏の原点

日経doors

2019/6/12

白木:そうそう、そういう感じ。それらを「当たり前」として振る舞えるのも、時代が変わってきた証拠なのでうれしいですよね。

マリエ:そこに至るまでに、白木さんの「在り方」にも多少の変化はあったんですか?

白木:メッセージは変わらないんですけど、立ち回り方は少し変わったかもしれないですね。今は「自分で決める」っていうことを大切にしています。

マリエ:自分で決めない時期もあったんですか?

白木:人生のいろんな局面において、親の意見や友達の意見に左右されることもあったんです。でも、エシカルな事業を立ち上げるとか会社をつくるとかって、自分も家族も友達もしたことがないことなので、最終的には自分の考えを優先することにしています。自分の人生に責任を取れるのは自分だけなので。

■「新しい資本主義」を目指して、次の展開を考える

マリエ:「HASUNA」は2019年4月に10周年を迎えたそうですね。これからはどんな展開を考えているのですか?

白木:「世界を少しでも良くしたい」を中心にやはり考えているんですけど、HASUNAのようなエシカルでサステイナブルな会社をたくさんつくったら、世の中が変わるんじゃないかって仮説が自分の中にあり、その実現に向けて動きたいと考えています。HASUNAの作り上げたい世界観やブランドの姿を実現しようとすると、一社で1000億円規模の会社を目指すことよりも、複数の会社で一つの志を追いかけられる事業体なりネットワークを作りあげるほうが良いのではないかと思っています。

マリエ:1000億円規模の会社が1社あるより、10億円規模の会社を100社つくる、みたいな?

白木:そうです。前者だと社長は1人ですけど、後者だと社長は100人。コンパクトでビジョナリーな会社が増えていくといいなと思っています。起業って大変なことも多いけど、未来を自分でつくっている実感が得られるんです。HASUNAからのビジネス面でのサポートを通じて、志のある起業家や、人にも環境にも社会にも配慮したビジネスを応援していきたいと思っています。

マリエ:今って、持続可能な開発目標(SDGs)がファッション誌で特集される時代じゃないですか。私はあれ、けっこうビックリしたんですけど、こういう潮流って想像してましたか?

白木:世界はきっとエシカルなほうに向かうはずとは思っていました。SDGsも(企業の環境や社会への配慮を評価基準とする)ESG投資も、私が思い描いていた理想的な状態なんですよね。お金が正しいことに使われて、正しい方向に流れるのがあるべき姿だと思っていたので。利益や売り上げだけが中心の資本主義ではなく、やはり共生や共感のある「共に生きる」形の新しい資本主義にスイッチすることが今の時代に必要なのでは、と。

マリエ:ちなみに、白木さんがよく海外に行かれているのって、ビジネス以外にも、そういう平衡感覚みたいなものを得るためだったりもするんですか?

白木:それはありますね。1カ所にいると、既存の価値観や今ある枠組みにとらわれてしまうので、動けば動くほど自分の考えが柔軟になっていく。古いものを打ち破って、新しい価値観や枠組みをつくり続けるのが起業家の役割だと思います。定期的に長距離移動をしているのは、そのためでもありますね。

マリエ:めっちゃかっこいいなと思いました。白木さん、ありがとうございました!

ユニバーサルな女性からの学び

・「世界を少しでもいい方向に」が行動指針
とにかく選択肢は多ければ多いほどいいと思っていた時期がありましたが、最近はそうは思わなくなっている自分がいます。なぜなら迷うことに時間が取られるから。けれどもやっぱり、心配性な私は選択肢が多いほうが安心できるような気もして。……なるほど! 行動指針があればいいのか! 私も自分の軸を考えてみることにします。

・エシカルをもはや「当たり前」に
白木さんは事業レベルでおっしゃっていましたが、当たり前にエシカルでサステイナブルなものを選ぶのは、私たちの生活レベルでも実践できることかなと思います。長寿命でエネルギー効率のいいLED電球を選ぶ、フェアトレード商品を買う、シェアリングサービスを活用するなど。ただ、エシカルな製品って現状ではちょっと割高なので、可処分所得に余裕がないと難しいかもしれないなとも思ったり。

・最終的には「自分で決める」
経験豊富な人のアドバイスはついうののみにしたくなります。就活でも「親が喜ぶかどうか」を気にする人は少なくないように思います。でも、それをやるのは自分だから。誰かを立てるとかいう発想は平成に置いていって、自分はどうしたいのかに純粋に向き合いたい。私もそうだし、家族や友人にもそうであってほしいなと思いました。

・新しい資本主義の形を模索する
こないだ海外で洋服や化粧品などを爆買いしたのですが、買い物が大好きだったはずの自分の中にちょっとした「むなしさ」を発見しました。今年も私はまたファッションを消費するのか、と。「たくさん稼いで、いいものを持つ」を繰り返していると、自分自身が消費されていくような感覚に陥ります。それより、クラウドファンディングで友達の挑戦を応援したり、学んだりするためにお金を使ったほうが幸せの総量が増える気がしています。「共に生きる」ことを掲げる白木さんの次の活動も、心から応援したいです

ニシブマリエ
ライター/広報PR。青山学院大学英米文学科を卒業後、大手人材情報会社の営業と広報を経験。「広報もやりたいけど、ライターもやりたい。そもそも何をするかは自分で決めたい」と思い立ちフリーランスに。現在は、企業の広報支援をしながら、HRなどのビジネス領域と、ジェンダーや多様性といった社会的イシューを中心に取材・執筆を行っている。趣味は、海外一人旅と写真と語学。グローバルインタビュアーを目指して、コーチング英会話「TORAIZ」にて英語の特訓中。

(文 ニシブマリエ、写真 飯本貴子)

[日経doors2019年5月7日付の掲載記事を基に再構成]