リーダーが語る 仕事の装い

横浜のダンディーな先人 スタイル受け継いでいく キタムラ社長 北村宏氏(下)

2019/6/7

――着用するスーツは海外ブランドが多いのですか。

「会社に入る前はヨーロッパで輸出の仕事をしていて、高級ブランドに触れていました。クオリティーは確かで、私も一時はトム・フォードとブリオーニばかり着ていました。40年前のエルメスは今でも愛用しています。ただ、今の海外ブランドは高すぎると思います。100万円のスーツなんてね。この10年は、一流どころにまったく引けを取らない信濃屋の服ばかり買っている。きょう着ているジャケットもそう。北村さんにはこの生地が絶対合うな、と探してきてくれて、こちらも勉強する」

■デザイナーにこれだけは守れ、と言っているのは「品」

――横浜では、商売する側と客が互いに磨き合うのだといわれます。その伝統が受け継がれているのですね。

「そういう先人たちに育てられましたね。一番ダンディーな方を挙げると、ホテルニューグランドの原範行会長(三渓園の原家4代目)でしょう。フランス生活が長く、帽子をかぶったときのしぐさが優雅で、ダンスのステップが華麗。服装はまったく隙がない。心から憧れた横浜のヒーローですよ」

こよなく横浜・元町を愛する。この日のチーフは近沢レースと組んで作ったもの。「元町だけで一流品がすべてそろうの」

――ご自身はコーディネートで何を意識されますか。

「僕は欠点だらけ。身長は低いし、原さんに憧れたって体形は見劣りします。僕の身長ですと三つぞろいは着てはいけません。余計小さく見えてしまう。僕だってロングコートは着たい。でも、絶対似合いません。欠点をカバーできて自分のオリジナリティーとクオリティーを表現できるファッションとは何かと考えてきました。時計も含めて貴金属は一切身につけないのも僕のスタイル」

――きょうのシャツやチーフにはどんなこだわりがありますか。

「シャツは有名メンズショップ、ザ・ポピーさんのもの。40年体形が変わっていませんから同じ型紙で仕立てています。チーフは近沢レース。全身元町ブランドだな。すべてに共通しているのは素材を吟味して、形はオーソドックスだということでしょうか」

「うちのデザイナーにこれだけは守れ、と言っているのは『品』です。『俺にはない品を出せ』とね。横浜は外国人に育てられた町で、水玉のワンピースを着た女性が歩いているのを記憶しています。僕が小さい頃、アメリカのファミリーが輝いていて清潔感や品がインプットされました。品というのは蓄積があって出てくるもの。守るべきものを守っていかないと」

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