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ソニー創業者 盛田昭夫 縞柄タイににじむ装いの教養 服飾評論家 出石尚三

2019/6/10

■スーツ・スタイルと縞柄タイとの相性を知り尽くす

1974年、盛田氏はソニーの英ブリジェンド工場の開所式に、英チャールズ皇太子を招待しました。お迎えした時の写真を見ると、盛田氏は濃紺のスリーピース・スーツに白いシャツ、そして縞(しま)柄のネクタイを結んでいます。このネクタイの縞の向きは向かって右下がりになっています。

アメリカや日本でレジメンタル・タイと称するこの縞柄タイ、イギリスではクラブ・タイと呼びます。レジメンタルの語源は「レジメント(連隊)」、つまり英国の連隊旗にちなんだ斜めストライプのことですが、もともとこの柄のタイは、パブリック・スクールなど英国のクラブごとの制服用タイに起源があります。

1990年、米ドーサン工場を訪れた盛田昭夫氏(右から2番目)。左隣はソニー元副会長の中鉢良治氏

1919年に後のウィンザー公爵となる英皇太子がアメリカを訪問しました。この時の服装がラウンジ・スーツにタブカラーのシャツ、そして英国砲兵隊の縞柄タイでした。これをきっかけに、アメリカにレジメンタル・ストライプのネクタイが流行するのです。

ネクタイの縞には向かって見て右上がり(ノの字)と、右下がりとがあります。これを服飾用語では「ハイ・ライト・ロウ・レフト」、「ロウ・ライト・ハイ・レフト」といいます。人間の目には右上がりの縞のほうがなじみやすいといわれます。現在、多くのタイは右上がりですが、米ブルックス・ブラザースは独自性を出すため、逆の右下がりの縞柄とした経緯があります。

実は19世紀は右下がりの縞が多数派でしたが、20世紀に入って右上がりが多くなり、現在に至っています。いうなれば右下がりはクラシック、右上がりはモダンということになります。こうした縞の向きの変遷は、上着の前開き(Vゾーン)の変化と、タイの結び目(ノット)と大剣(ブレイド)で縞の向きが逆になる現象に関係しているのです。

昔の上着は、首元近くまでボタンで留める「ハイ・ボタン」の前開きでした。これだとタイを結んだ時、胸元から垂れるブレイドはほとんど上着に隠れ、ノットしか見えません。そこで、横縞の生地を右下がりになるよう裁断したのです。これだと外から見えるノットの部分が、目になじむ逆向きの右上がりになるからです。

しかしその後、上着の前開きが広くなり、タイのブレイドがたっぷり見えるようになります。するとブレイド部分が右上がりの縞になるよう、生地も右上がりで裁断するケースが主流となりました。

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