「破壊的イノベーション」の原動力

田中道昭氏

米アマゾンは「アマゾン恐怖銘柄指数」の言葉に象徴されるように、ある産業や顧客の利益を食い尽くす巨大な存在になっています。著者はアマゾンを「なお破壊的イノベーションを自ら起こす企業であり続けようとし、それに成功している」と評価しています。成功の秘訣は「将」、つまりリーダーであるジェフ・ベゾス氏の個性と能力にあります。ベゾス氏は新ビジネスを始めるときに、既存ビジネスとの「カニバリゼーション」(新旧サービスの食いあい)が起ころうともちゅうちょしないのです。

アリババについて著者は「中国の新たな社会インフラ企業」であると表現します。物流事業やリアル店舗、クラウドコンピューティングなどに事業を広げていく姿は、アマゾンの成長過程をほうふつとさせますが、両者には大きな違いがあります。アリババではEコマースやリアル店舗、物流サービスを含む「コアコマース」と呼ばれる事業が売り上げの86%を占めています(18年4-6月期決算データより)。

一方、アマゾンはクラウドコンピューティングサービス「アマゾン・ウェブ・サービス」(AWS)で効率的に稼いでいます。プラットフォームやビジネスモデルをクラウドサービスとして販売しているのです。著者はこう述べます。

アリババはコアコマースで利益をあげ、その儲けをその他の事業に投資しているわけです。たとえばデジタルメディア&エンターテインメントでは、ネットフリックスやアマゾンプライムのように動画配信事業で自社コンテンツの制作にも着手しているため、先行投資がかさんでいるのではないかと考えられます。このような収益構造は、アマゾンがAWSで大きく利益を稼ぎ、その他の領域で利益率の低さをカバーしていたのとは対照的だといえます。
(第1章 アマゾン×アリババ 96ページ)

日本企業の活路はどこにあるか

最終章では「GAFA×BATH」の時代に日本はどう対処していくべきかについて議論されています。日本企業は何を考えて行けばよいのか。そして、どこに向かえばよいのかが示されます。

著者は「日本人はホスピタリティーやおもてなしの心を見失っているのではないか」と指摘します。例えば最近日本でも増えてきた「無人レジ」では、袋の有無や決済の手段など、消費者が何度も画面をタッチする構造になっています。これでは、有人レジのほうが楽でしょう。「サービスの劣化」とすら言えそうです。

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