収納王子 片づけ苦手な子どもにかける「魔法の言葉」
どうやって子どもに片づけを教えていけばいいか、「収納王子コジマジック」こと、一般社団法人日本収納検定協会代表理事の小島弘章さんに具体的なテクニックについて伺っていきます。遊びに組み込みながら片づけが身につく方法や、上手な声かけのポイント、つい言ってしまいがちなNGワードなど、今日から使えるテクニックが満載です。
片づけは「出す→分ける→しまう」の3段階
片づけは「出す→分ける→しまう」の3段階で成り立っています。
「出す」=大きめのシートや古新聞を広げて、引き出しなどそのスペースに入っているモノをすべて出す。出すことで、入っていたモノの総量が分かり、モノの重複などにも気付けます。
「分ける」=出したモノを、使っているモノと使っていないモノに分ける。分けるときは3秒以内で分ける、過去1年間に使ったかどうかで分けるなど、基準を明確にすることがポイント。
「しまう」=よく使っているモノは引き出しの手前に置くなど、使いやすいように工夫して、定位置を決めて収納する。明らかに使っていないモノは人に譲る、売る、寄付するなどして、前向きに手放してみましょう。手放すかどうか迷うモノは「一時保管箱」へ。納得しないままにとにかく捨ててしまうとリバウンド(急にモノを減らすことによるストレスから生じる、散らかった状態)の原因になるので、注意してください。
とにかくモノが多過ぎて、どこから手をつけたらいいか分からないという場合は、よく使う引き出し1段分など、気軽に始められて効果を実感しやすい小さなスペースから始めるのがオススメです。
同じように、子どもにも「片づけの仕組み」をつくってあげることが必要です。ここで大切なのは、その仕組みを子どもと一緒につくっていくということです。
片づけを遊びにしてしまおう
わが家には5歳と3歳の兄妹がいますが、お兄ちゃんのおもちゃにはグリーンのシール、妹のおもちゃにはピンクのシールが貼ってあります。グリーンやピンクのカラーも、子どもたちと一緒に決めました。寝る前がお片づけタイムという約束なので、二人にそれぞれのカラーの箱を持たせて、おもちゃを集めてもらいます。箱を戻す棚の枠には、色別のマスキングテープが貼ってあり、おもちゃを集めて箱を棚に戻せばゴール。これを「よーい、どん!」で競争します。
つまり、片づけも寝る前の遊びにしてしまうんです。子どもたちは毎晩、勝った負けたで喜んだり悔しがったりして、大騒ぎ。特に妹は、負けると泣くほど悔しがって、もう一回やる羽目になります(苦笑)。二人同着で勝つとものすごく喜んで、頭をなでて褒めてほしくて頭の出し合いです。
片づけを遊びにしてしまおう
このように、まだ文字を習っていない未就学児には、お気に入りのカラーシールでマークをつけたり、衣類をしまうカゴには肌着やパンツのイラストをラベルにして貼ったりするといいでしょう。うちの息子は最近ひらがなが読み書きできるようになってきたので、文字も添えたりしています。このように子どもに合わせて工夫してあげると、子どもは遊び感覚で喜んで片づけてくれるようになります。
散らかりがちな玄関も、同じ方法で解決しました。玄関の土間とげた箱の中に、それぞれお気に入りの色の足形シートを作って貼ってみたんです。すると、ぐちゃぐちゃだった玄関に、足形シートに合わせて小さい靴がちょこんと並ぶようになりました。左右逆だったりすることもありますが、「こんなことができるようになったんだな」と子どもの成長を感じ、とてもうれしくなりました。
仕組みづくりをしても、なかなかやってくれないというときは、子どもなりの理由があることも。息子は最初、足形シートがブルーだったのが嫌だったようで、グリーンに変えたら翌日からやってくれるようになりました。「この前までブルーが好きと言っていたはずなのに、今はグリーンなんだ」みたいな小さな発見や、好きなおもちゃやキャラクターも聞いて初めて分かることがあったりします。そうやって、子どもとのコミュニケーションにつながるのもうれしいことです。
「捨てるよ!」より「好きなモノを教えて」
子どもに対して「片づけなさい!」はNGワードですが、「片づけないんだったら捨てるよ!」もなるべく言わないほうがいいでしょう。皆さん、つい一度は言ったことありませんか? 「捨てるよ!」と言っても、子どもは「全部いる!」と言い張って、いつまでも片づくことはありません。
では、モノがあふれて、片づかないときはどうしたらいいのでしょうか。「捨てるよ!」の代わりに、「この中から好きなモノを5個教えて!」と聞いてみてください。子どもは好きなモノを人に教えるのが大好きなので、一生懸命考えながら「あと何個選んでいいの?」と面白がってやってくれます。
そして、好きなモノだけをいくつか選んでもらい、残りは分けておく。そして「こっち(残り)はどうする? お友達にあげよっか? バザーに出してみよっか?」と聞いて、子どもが納得できるような形で仕分けの練習をさせてあげるんです。箱に入るモノしか持たないと決めると、散らかることも少なくなります。このように、モノを手放すことをポジティブに伝えて遊びに変えれば、片づけが楽しみになります。
片づけられるようになったときの喜び
使ってなさそうなモノを、親が定期的にこっそり捨てているという話も聞きますが、子どもは驚くほど小さなことを覚えているもの。とっくに興味がないと思っていたモノも、ある日突然「あれ、どこ?」なんて言い始めたりするので、自分で選ばせることが重要です。たとえ処分してしまっても、「自分で使わないって言ったよ」と伝えれば、子どもは納得するものです。
僕も子どもたちと一緒に「おもちゃ箱の中に入るだけにしようね」と決めて、入り切らなくなったら、定期的に「好きなものベスト5」をやります。うちでいつの間にか増えていくのが、マクドナルドのハッピーセットについているおもちゃ(笑)。子どもたちが大好きなので、わが家ではハッピーセットのカテゴリーの箱も用意しています。片づける箱におもちゃの写真を貼ると、さらに分かりやすく、喜んで分けながら片づけてくれます。
そしてラベリングにはもう一つポイントがあります。それはおもちゃを入れる箱だけではなく、その箱を戻す棚にもラベリングをすること。お友達がたくさん遊びに来てくれたとき、どうしても部屋がおもちゃでいっぱいになりますよね。帰り際に子どもたちやそのママ友が片づけを手伝ってくれるんですが、その際に一つひとつ「どこにしまえばいい?」と聞くのは大変。でも箱、そして棚にもラベリングをしていることでどこに何をしまうかすぐに分かるので、子どもも大人も片づけやすいんです。
仕組みづくりをしたからといって、すぐにできるようになるわけではないかもしれません。特にうちの息子は発達障がいがある分、本当にちょっとずつしか進んでいきません。ただ、ちょっとずつでも、いつの間にかできるようになるときが来るんです。そのときは本当にうれしいですよ。できるようになるタイミングは必ず来るので、根気強く接することが大切だと思います。
イライラすることも当然あるでしょう。僕自身、感情的に叱ってしまって、後悔してしまうこともあります。思い通りにいかない子だと理解はしていますが、それでも腹が立つことはあって、子育ては難しいなといつも思います。
でも、自分の親もこうやって育ててくれてたんだなぁという感謝の気持ちも湧いてきますし、どうせやらなくてはいけないことなら、少しでも楽しくやりたい。きょうだいによっても全然違うから、その子に合った答えを見いだしてあげるのが親の役目です。それには、根気を持って向き合うしかないと思います。「親の根気は、子どものやる気につながる」、これは息子や妻から教えてもらったことです。
このように片づけから学べることは本当に多いんです。僕自身も自分の子育てを通じながら「こういうときはこうしてみよう」「こうしたら伝わりやすいだろう」と常に工夫しています。こうした収納を通して子どもも大人も幸せに生きる力を育む「収育」を伝えていこうと思っています。
収納王子コジマジック(小島弘章さん)
一般社団法人日本収納検定協会代表理事。片づけ・収納・住まいに関する確かな知識と実績を持ちながら、松竹芸能で25年の芸歴を積んだ、主婦層に圧倒的な支持を受ける男性ライフスタイル系タレントのパイオニア的存在。収納に"笑い"を取り入れたセミナーが話題となり、年間講演依頼数は200本以上、著書・監修本は累計35万部以上。近著に『子どもの頭が良くなるお片づけ』(KKベストセラーズ) 。"収育"を理念として掲げた一般社団法人日本収納検定協会を設立し、お片づけを楽しむ検定「収検(収納検定)」をスタートさせた。https://shu-ken.or.jp/
(取材・文 宇野安紀子)
[日経DUAL2019年3月25日付の掲載記事を基に再構成]
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