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ファッションは性差を超える 展覧会で見る歴史と今

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ナショナルジオグラフィック日本版

女の子が産まれたらピンク、男の子なら青いおくるみを巻くというように、誕生したときから性別のメッセージは植えつけられているかもしれない。そして、女の子はスカートを、男の子はズボンをはかせられる。

だが、この性差が流動する時代、変化が起きている。男か女かの二元論が崩れれば、ファッションもそれに続く。今に限ったことではなく、同じような現象は過去にも時折見られた。紀元前1507年から1458年に、古代エジプトを治めたハトシェプスト女王は、男のファラオの服を着て、偽のひげをつけていた。

LGBTQIA+(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、ジェンダークィア、インターセックス、アセクシャリティ、その他)の権利が叫ばれ、ソーシャルメディアの及ぼす影響が増している昨今でも、ジェンダーとファッションというテーマは分かちがたく結び付いている。

2019年3月21日から8月25日まで、米マサチューセッツ州のボストン美術館で開催されている「Gender Bending Fashion(異性装)」展は、そのファッションとジェンダーの関係を模索する。大規模な美術館がこのテーマを取り上げるのは初めてのことだ。美術館のテキスタイル・ファッションアート部門に所属し、展覧会のキュレーターを務めたミシェル・フィナモア氏に話を聞いた。展示会の写真も紹介する。

――これまで性別によって区分されてきた衣服の境界線が、不明瞭になってきています。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、米大手ディスカウント小売りチェーンのターゲットは、店内の表示板から性別の表記を削除したそうです。異性の友だちは、互いのクローゼットのなかを覗いて、自分に着られそうなものを品定めしているとか。この展示に至った社会的精神についてお話しください。

最初は、現代のメンズウエアに起こっていることを調べていたのですが、革命的なことが広範囲に起きているのに気づきました。デザイナーは、時代の変化に敏感です。ストリートで起こっていることや、ミレニアル世代(1980年代前半から1990年代半ばに生まれた世代)からジェネレーションZ(1990年代後半以降に生まれた世代)にまで、すぐに反応します。服を通じたジェンダーの表現法を変える新しいエネルギーに反応し、特定のジェンダーにあてはめられることを拒む考え方に反応しているのです。これは、1920年代、60年代、70年代にも、反抗期の若者たちに見られたことですが、それが今現在も起こっています。

――英語には「ズボンをはくのは誰か(ズボンをはく者が家庭内で権威を持つ)」という決まり文句があります。

過去にも、何度か女性がズボンをはこうとして失敗した時代がありました。1851年、女性の権利運動家であるアメリア・ブルーマーは、合理的な女性服を提案しましたが、あまり普及しませんでした。彼女の推奨した女性用ズボンは、トルコの民族衣装にヒントを得たもので、彼女の名にちなんで「ブルマー」と名付けられました。やがて、女性が自転車に乗ったり、テニスやゴルフを楽しむようになり、それに合わせた服を着るようになると、ズボンへの抵抗も少なくなります。南北戦争の従軍医師メアリー・エドワーズ・ウォーカーは、「不適切な服」を着たとして8回も逮捕されましたが、それでもズボンをはき続けました。1993年に、ズボン姿で議会に現れたキャロル・モーズリー・ブラウン元米上院議員(とバーバラ・ミカルスキー議員)は、「ドアを入るまで、本に書かれていない規則があるとは思いもしませんでした」と、後に語っています。こうした歴史を経て、ヒラリー・クリントン氏の白いパンツスーツ姿は政治的なシンボルになるまでになったのです。

――本に書かれていない規則は、長いこと存在していましたね。1968年に、ニューヨークの資産家ナン・ケンプナーがフレンチレストランにズボン姿で入ろうとして店側に止められた話は有名です。彼女は、ズボンを脱いでロングジャケットをミニドレスに見立てたところ、入店を許されました。1980年代初期に、私がナショナル ジオグラフィックで働き始めたころも、スカートとストッキングが必須でした。

私もつい最近、ある女性に言われました。「1990年代にウォール街で働いていたのですが、女性はドレスとスカート以外許されていませんでした」。いまだに、自分の法廷で女性弁護士にズボンの着用を禁じる裁判官もいますよ。

――展覧会では、川久保玲、イキレ・ジョーンズ、ジギー・スターダスト時代のデビッド・ボウイへ衣装を提供したフレディ・ブレッティなど、20世紀から21世紀のファッションに重点を置いています。その一方で、1930年の映画「モロッコ」でマレーネ・ディートリヒが着た燕尾服と山高帽の展示など、歴史的な背景にも触れていますね。

あの映画の監督を務めたジョセフ・フォン・スタンバーグは、この衣装をディートリヒに着せるために、映画スタジオとずいぶん争ったそうです。スタジオは、過激すぎると反対しました。ですが、映画で男装をやったのはディートリヒが初めてではありません。1910~20年代、サイレント映画では同じように、短い髪に少年のような服装の女優がたくさんいました。古いしきたりに挑戦する若い世代や、職場へ進出し、選挙権を獲得した女性たちの影響です。社会的・文化的変革に関係しているのです。

――ディートリヒの装いは、エロティックな雰囲気をまとっていました。「交際相手のTシャツや下着を着る女性には、何かとてつもない色気がある」といったのは、カルバン・クラインだったでしょうか。

女性が男の服を着ると、少しだけ罪を犯しているような気分になります。男装だが、女性の体の線に沿い、髪を整え、メイクをする。独特な色気を醸し出すように、両者がうまく融合されるのです。

――18世紀には、男性もヒールのある靴を履いていましたが、今の男性でハイヒールを履く人はまずいません。靴の歴史家エリザベス・センメルハック氏は、高さが優位性を意味するなら、なぜ男性はもっとハイヒールを履かないのかと言っていますが。

その通りです。ラッド・ハウラニは、男性用と女性用に同じハイヒールのブーツをデザインしています。かなり前に、コメディアンのエディ・イザードのライブを見に行ったのですが、彼はジーンズ姿にメイクを施し、ヒールの靴を履いて舞台に上がりました。あるインタビュアーに「エディ、なぜ女性の服を着るんだい?」と質問されて、「女性の服じゃない。僕の服だ」と答えていました。私の好きな言葉のひとつです。展覧会の開会式には、たくさんの男性がヒールを履いてやってくると思います。

――会場に展示されている歴史年表には、ジャンヌ・ダルクについての言及があります。彼女の男装は当時ひどく非難され、異端審問にかけられた際にも問題にされ、1431年の処刑に至りました。

異端審問でジャンヌ・ダルクは、「女性の服を着ていたときには、ひどい扱いをたくさん受けました」と答えています。その言葉を読んだとき、彼女の服を見る目が変わりました。確かに、男装は彼女の身を守るために非常に重要だったのです。

――俳優のビリー・ポーターは、2019年のアカデミー賞授賞式にタキシードドレスを着て登場しました。大衆誌「The New Yorker」は、「まるでブランデー片手に葉巻を吸っているような胴部、そしてゴシック・ビクトリア朝の戴冠式にそのまま着ていけそうなスカート」と批評しています。

あのドレスをデザインしたクリスチャン・シリアーノは、ここで展示しているジャネル・モネイのドレスも手がけています。ポーターは、これまでも服を通して境界線を押し広げてきました。「僕の目的は、表へ出るたびに歩く政治的芸術作品になること」と、彼はファッション誌「Vogue」に書いています。「期待を裏切ること。男らしさとは何か。それは何を意味するのか」。これがニュースになる価値があるということ自体が、私には驚きです。もうそんな部分は乗り越えたと思いたいのですが。でも、そうではない。男性がスカートをはくということに対する固定観念は根深いものがあります。でも、女性のズボン姿のほうが男性のスカート姿よりも歴史はずっと長いです。10年後、どうなっているのかが楽しみです。

――あなたのクローゼットには、何か異性装の服はありますか。

テーラードスーツをたくさん持っています。性的に中立な服を売る店として早くから実店舗を展開しているフルイッド・プロジェクトが、美術館でポップアップ・ショップを出店します。ニューヨークの店へ行ったとき、「Gender Bender」と書かれたTシャツと、スパンコールのついたユニセックスのロングスカートを購入しました。開会式には、夫にスカートをはかせようと思っているんです。

――ボストン美術館の解説員長であるアダム・テシェール氏は、対話の終わりを象徴する展覧会が多いなか、この展覧会は始まりになるだろうと述べています。その対話が起ころうとしている兆しはあるのでしょうか。

展覧会が一般公開される前、私の同僚が連れてきたある若いLBGTQの人が、こう言っていました。「ようやく私も、人に見てもらえたような気がする」と。

次ページでも、異性装展に足を運んだ人々と、ファッションを楽しむ姿を紹介しよう。

(文 CATHY NEWMAN、写真 DINA LITOVSKY、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2019年4月20日付記事を再構成]

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