Men's Fashion

シミ隠しやクリーム… 色白美肌で男もインスタ映え

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2019.6.11

色白できめ細かな肌を求める「美肌男子」が若者を中心に増えている。男性向けコンシーラーやパウダー、フェースマスク、口紅などの人気が高まり、新製品や専門売り場が相次ぎ登場。「インスタ映え」を狙った自己演出のニーズに加え、映像機器の高画質化が美肌志向を支えている。




■新興ブランドが市場をけん引

「男の肌にうるおいを」「スキンケアで男を磨く」――。生活雑貨店の渋谷ロフト(東京・渋谷)は4月から2階に男性化粧品の新製品や人気商品など22ブランドを集めた特設コーナーを開設した。最近、美肌作りのための男性スキンケア用品の売り上げが急速に伸びているためだ。

売り場には鏡が付いたコンパクトタイプのフェースパウダー(2808円)のほか、目の下のクマやシミを隠すコンシーラー(2160円)やBBクリーム(2376円)、唇を薄いピンクに彩るリップバーム(1944円)などが並ぶ。

時間を節約したい人向けには洗顔、スキンケア、下地作りなどが一度にできるオールインワンタイプのフェースマスク(1404円)もよく売れている。ロフト大型店(大都市圏12カ所)の5月の男性スキンケア用品の売り上げは前年比で1.8倍に拡大した。

渋谷ロフトで特に人気が高いのが「バルクオム」「リップスボーイ」などの新興ブランド。「リップスボーイ」は若い男性に人気のヘアサロン「リップス」が開発を手がける。「顔のスタイリング」をテーマに客からの要望をきめ細かく商品に取り入れた。このほかメーキャップアーティストでオネエタレントの小椋ケンイチ(おぐねー)さんが監修した「フィトグラム」なども客の問い合わせが多い。

男性用美肌化粧品の実演場面(東京都渋谷区の渋谷ロフト)

「これからは紫外線が強くなるので日焼けしないようにしっかりと肌を守りたい」と語るのは都内の男子大学生(20)。憧れるのは人気俳優の菅田将暉さん、山崎賢人さん、三浦春馬さんやフィギュアスケート選手の羽生結弦さん。韓国の男性音楽グループ「防弾少年団(BTS)」なども意識しているという。

■野性的から清涼感へ 変わる理想像

いずれも野性的な風貌というよりは、繊細で清涼感が漂う美形男子が多い。「かつて若者が憧れた理想像は坂口憲二さんや木村拓哉さんら男っぽいタイプが主流だったが、トレンドが明らかに変わってきた」。「リップスボーイ」プロダクトマネジャーの長島幹孟さんはこう指摘する。

美肌男性が増える背景には、交流サイト(SNS)を通じた自分の顔の「インスタ映え」を良くしたいというニーズの高まりがある。さらに映像機器の高画質化も美肌志向に拍車をかける。4K対応のビデオやテレビ、フルサイズカメラなどの普及に伴い、肌の手入れがより目立つようになったからだ。

伊勢丹新宿本店メンズ館(東京・新宿)は今年3月に1階に男性用化粧品を体験できるスペースを新設した。5台分の洗面台や鏡を備え、スキンケアやメークの効果を客が自分の目で確かめることができる。西武池袋本店(東京・豊島)も男性用の肌診断装置などを備えた専門売り場を拡充し、男性の美肌志向の高まりに応えている。

女性が使うような鏡付きコンパクトもある(リップスボーイ)

一方、大手化粧品メーカーの動きも活発だ。資生堂はヘアケア主体だった男性向けブランド「ウーノ」のスキンケア部門を拡充し、今年3月に肌の色の補正効果があるBBクリームを発売。マンダムも昨年9月に主力ブランド「ギャツビー」で肌のテカリや毛穴の目立ちを防ぐオールインワンタイプの男性用ローション(税抜き700~900円)を売り出した。

「男性客が女性用化粧品を使うのにはやはり抵抗感がある。BBクリームは最初は白いが、肌に塗ると色が素早く変化し、自然な風合いになじむように工夫した」(資生堂)。美肌は目指しても、女性のような美白にはしたくないという男心に配慮したようだ。

調査会社、富士経済(東京・中央)によると男性用化粧品の市場規模は2008年から19年までの間に964億5000万円から1183億円へと1.2倍に増えた。けん引しているのはスキンケア用品。国内人口の減少傾向が続くなかで、男性の美肌・美顔市場は有力な成長分野として注目されている。

(編集委員 小林明)

[日本経済新聞夕刊2019年6月1日付]