プロ経営者の松本晃氏は、会長兼最高経営責任者(CEO)としてカルビーを率いた2009年から18年の間、働き方改革を大胆に推進しました。当時から「僕は午後4時には仕事を切り上げる」「社員も仕事が終わったなら午後2時でも帰ればいい」と公言していた松本氏。現在多くの企業が取り組む働き方改革について、その「元祖」である松本氏はどうみているのでしょうか。
働いた時間より、出した成果に意味
働き方改革が今、世の中のブームになっていますが、そもそも何のためにやるのかという大枠の議論が欠けているようにみえます。一番大事なところを議論しないで、長時間労働がけしからんとか、過労死をどう防ぐかとか、各論が先行してしまっている。だから思うような成果が出ないんです。
歴史的にみれば、戦前の日本、戦後の高度経済成長時代の日本、そして高度成長が終わって世の中のパラダイムが大きく変わってからの日本は、まったく違います。まず、それをしっかり認識してから議論しないと改革はうまく進みません。
今も続く様々な日本のあしき労働慣行は、高度経済成長を実現するには最適な働き方でした。だから僕は、当時の働き方にケチをつけるつもりはありません。しかし、ビジネスモデルから何からすべて変わってしまった現在、同じように続けてもうまくいくはずはない。それも確かなんです。
バブル経済がピークを迎えた1990年ぐらいまでは、仕事の成果は働く時間に比例していました。だからみんな必死で長時間働いた。しかし今は、時間と成果はまったく比例しません。長時間働いたからといって、いい成果は出ない。だから僕はカルビーの会長兼CEOに就任して早々、就業規則を見直して働き方を劇的に変えたんです。
「ノー残業デー」をもうけて強制的に労働時間を短くするようなやり方は、以前からありました。でも僕の改革のポイントは、働いた時間でなく成果で評価するようにした点です。会社が求めるのは成果なんです。