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投信の評価は「配当込み」 運用のモノサシ見直し機運

2019/6/8

写真はイメージ=123RF

三菱UFJ国際投信は7月以降、株式などのインデックス(指数連動)型投資信託約110本のベンチマーク(運用の指標)を、配当抜きの指数から配当を含む指数にすべて切り替える。投信の成績評価の在り方が見直されるきっかけになりそうだ。

ベンチマークはいわば運用のモノサシ。運用リポートなどに投信の基準価格の値動きと一緒に表示されることが多く、比較の参考とされる。日本株なら日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)、海外先進国株ならMSCI KOKUSAI指数がよく使われる。

■配当抜きが多数派

こうした指数は通常、配当抜きと配当込みの両方が算出されている。ただ他の運用会社も含め、ベンチマークに使われる際は配当抜きと配当込みが混在し、多数派は配当抜き。インデックス投信が最初に設定された数十年前の時点で、配当込み指数が公表されていなかったり一般的でなかったりしたことが背景にある。

現実の投信運用では、組み入れ銘柄から配当が入り続けるので、投信の成績は配当抜きの指数を通常上回る。このため指数に連動するはずのインデックス投信の成績が、時間がたつほどベンチマークから上方に乖離(かいり)しがちで、投資家の混乱を招いていた。

投信評価会社モーニングスターの朝倉智也社長は「変更は情報開示の面で大きな前進。他社にも波及するのでは」と評価する。

では、どれくらい差が出るのか。日経平均株価(通常使われるのは配当抜き)と配当込み指数である日経平均トータルリターン・インデックスを比較しよう。

乖離が特に拡大し始めたのは配当利回りの水準が高まった2000年代以降。09年4月から19年4月までの10年間で、配当抜きの指数は2.5倍になったが、配当込みの指数は3倍に上昇している。

ちなみに1989年末の最高値に比べ配当抜きの指数はまだ半値だが、配当込みは8割の水準まで回復している。株式を持っていれば配当が入るので、日本株の長期保有の損益は配当込みで判断すべきだろう。

■ベンチマークの議論、アクティブ型にも

ベンチマークの議論は、市場平均を上回ることを目指すアクティブ(積極運用)型にも及んでいきそうだ。朝倉氏は「アクティブ型のベンチマークも配当抜きが使われがち。それに比べて投信の運用成績が相対的に良いと誤認する投資家も多い」と指摘する。

ある外資系運用会社幹部は「ベンチマークを配当込み指数に変えると、これまで指数を上回っていた投信の成績が一転して下回る結果になるケースもあり難しい」と本音を打ち明ける。

そもそもベンチマークの指数は配当抜きか込みかの表示すら不明なことが多い。「配当込み」と明示されていない場合は配当抜き指数であることが多いが、わからない場合は販売会社などに問い合わせたい。

「現在、配当抜きか込みのどちらを使うかや表示方法についてのガイドラインはない」(投資信託協会)。「貯蓄から資産形成」の流れのなか、投資家本位の情報開示の改善が求められる。

(編集委員 田村正之)

[日本経済新聞朝刊2019年6月1日付]

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