新しい地図 今の自分の肩書きはファンの人に委ねたい
「新しい地図」として活躍する稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾。5月には、3人としては5曲目になる新曲『星のファンファーレ』をリリース。2月には初のファンミーティングツアーを実施するなど、活動の幅を広げている。10代~40代と、トップランナーとしてエンタテインメント界を走り抜けてきた3人が、今思うアイドル論を語ってくれた。
――「何でもやる」というのがアイドルだと思うのですが、新しい地図としてスタートした皆さんがSNSを含め、その「何でもやる」の幅をどんどん広げている感じに、ワクワクさせられている方も多いと思います。改めて問いたいのですが、皆さんは自分がアイドルだという自覚はありますか?
香取慎吾 僕はあります! ただ、ここにいる3人とも、アイドルとは何かをどう思っているかは、それぞれ違うんじゃないかな。
稲垣吾郎 そうですね、香取くんと違って僕は、自分から「アイドルです」というのは、少し恥ずかしい(笑)。僕の場合、アイドルかどうかっていうのは、見てくださる人、応援してくださる人が決めればいいことだと思っていて。「吾郎ちゃんが永遠のアイドルです!」って言ってくださるようなファンの方がいることはとてもありがたい。ただ、20年前ぐらいに比べて変わったと思うのは、アイドルってどうしても"一瞬の花"というイメージだったのが、いつしか年齢制限がなくなったことですね。
――それは皆さんの功績も大きいですよね。いわゆる「おじさん」と呼ばれる年齢になっても皆さんがアイドルとしての輝きを失わなかったことで、男性アイドルの寿命はぐっと延びました。
稲垣 だとしたら、実は時代の先を行っていたのは僕らじゃなく、ファンの皆さんなんじゃないかな。僕らのファンって、「ずっと応援する」スタンスでいてくださるんですよ。「新しいコが出てきたからそっちに行こう」じゃなく、「この人の行く先をちゃんと見届けたい」みたいな長期戦(笑)。なんかそういう、ミーハーじゃないファンの皆さんとの出会いに恵まれたと思います。だから今は、僕らのことを応援してくださるNAKAMA(=新しい地図のファンの総称)のみんなと一緒に年を重ねていけている。僕らが皆さんの物語の一部になれている感じがして幸せです。
草彅剛 僕は、この間ファンミーティングで久しぶりにファンの皆さんの前に立った時、応援してくださっている人の中で、僕らは多分アイドルなんだな、と実感しました。僕も吾郎さんと同じで、今の自分の肩書きは、ファンの人に委ねたい。いろんな見方があっていいと思います。
香取 あ、僕もこの間、個展に来てくださった方から、「アーティストとしての香取さんが好き」と言っていただいて。それが驚きであり、発見でした。いろんなことをやれてよかったなって思った。
――お互いを「アイドルだなぁ」と感じる部分はありますか?
稲垣 アハハ。もうね、長い付き合いなので、「アイドルだ!」なんて思わないですよ(笑)。
香取 えっと僕は、SNSをあまりやらない稲垣吾郎は「アイドルだな」と思います(笑)。吾郎ちゃんがブログをアップすると、すごくうれしいから。「あ、久々!」って思う感じとかアイドルっぽい。
稲垣 (動揺して)あ、そうなんだ。
香取 逆につよぽん(=草彅)は、すごくマメにツイートするところが、アイドルだなって(笑)。
草彅 "アイドル性"って人によって違って何通りもある。僕にとっては、絵を描くことも慎吾のアイドルらしい表現だと思うし。僕や吾郎さんは舞台をやっているけれど、気持ちとしては、"自分は舞台俳優だ"なんてことは微塵も思っていなくて。どこかに「アイドルが役者ヅラしてすみません」みたいな申し訳なさもある(笑)。
でも今は、アイドルって誰でもなれる時代ですよね。YouTube界のアイドルとか、SNSの世界での有名人とか、いろんな分野にアイドルが存在していて、新しいアイドルの可能性は一般の方のほうが秘めていたりする。そんななか、僕らが勝負するとしたら、いかにちゃんと、応援してくださる方の希望の光になれるか。僕らも年齢を重ねて、それなりの経験も積んで、「目立ちたい」とか「愛されたい」みたいな自分たち中心の時代を経て、もっと皆さんを喜ばせたいとか、感謝の気持ちを伝えたいとか、潜在的に、"何かに貢献したい欲求"みたいなものが生まれているような気がします。
――その「感謝の気持ちを伝えたい」という思いが結実したのが、ファンミーティング。
香取 それはそうなんだけれど、実際にファンミーティングをやってみたら、あれはむしろファンの方が作ってくれた時間だと思いました。「会いたい」という声があって、実現して。実際に足を運んでくれて、ものすごいエネルギーで僕らを励ましてくれた。
――9曲披露しましたが、コンサートとファンミの違いは?
香取 カッコつけるかつけないか、ですかね。ミーティングではカッコつけてないんです。逆にコンサートって、「カッコいいところを見て欲しい」っていうのが基本にある。でも今回は、皆さんにこの1年の感謝の気持ちで歌っていたから、いい一体感も生まれて純粋に楽しかったです。
稲垣 あ、でもファンミーティングの時、僕は、2人のアイドルオーラを目の当たりにして、1人でにやけてましたよ(笑)。僕、昔から、ファン目線でステージを見るのが好きなんです。例えば草彅くんと香取くんの歌の時に、ステージの陰から2人を眺めて、「お客さんから見たらこんな感じかな」って想像してみたりとか。客観的になると「すごくキラキラしてるな」って感動しますよ(笑)。
香取 (照れて)いやでも、ステージは照明とか衣装とかあるから。
稲垣 でも一番大きいのは、声援かな。それと、ファンの方が作る空気。ステージに立っている僕らだけじゃなく、そこにいる誰もがキラキラして見える空間で、それはライブもファンミーティングも同じでした。すごく特別な空間だと思います。
(ライター 菊地陽子)
[日経エンタテインメント! 2019年7月号の記事を再構成]
※インタビューの全文は、発売中の日経エンタテインメント!7月号に掲載しています。全文では、この1年半で改めて見えたこと、湧き出た感情、未来のアイドルたちへの提言や、3人の個別のインタビューを掲載しています。
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