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著者に聞く 仕事の風景

部長ポストは「通過点」 一流の管理職は割り切り上手 『部長の一流、二流、三流』志倉康之氏

2019/6/5

ここで言う「なりたい自分」は役員や社長といった肩書レベルの話ではない。むしろ、勤め先を生かした自己実現や、仕事を離れてのセルフイメージを指す。こうした考え方は今の若い世代の感覚に近く、チームで意識を共有するのにも役立つ。「ビジョンや自分軸のようなものを持っていないと、経営陣のメッセンジャーのようにみえてしまう」(志倉氏)。自分にドライブをかけるうえでも、経営目標とは別の将来像を描いておきたい。

部下との接し方でも、一流と二、三流の部長は差が付く。「上から言われたんだから、やるしかないだろう」と愚痴まじりに部下にノルマを押しつけるイヤイヤ部長は「自分がないイエスマン」と映り「部下から軽んじられてしまう」(志倉氏)。会社のせいにする物言いは責任逃れと見え、「いざというとき頼りにならない部長」のイメージも増幅してしまう。

■部下をねたむことなかれ

「熱い人のほうが一流部長になりやすい」と話す志倉康之氏

ウキウキ部長はミッションをチーム内で共有することに手間を惜しまない。一見、無謀にみえる目標数値に関しても、必然性や経営意図を読み取って部下に語りかける。疑問点は一緒に掘り下げ、ゴールを共有する。必要に応じてゴールの再設定もいとわない。「一方的に押しつけられたミッションには部下が反発しやすいが、一緒に決めた場合は達成意欲が高まる」(志倉氏)。一流の部長は「巻き込みが上手」ともいえるだろう。

残念な部長は、部下をねたむこともあるようだ。近年は年功序列が崩れ、入社年次がずっと下でも部長のライバルになり得るようになってきた。プログラミングや英語、交流サイト(SNS)、社外人脈などの面で部長をしのぐ能力やネットワークを持つ部下も現れている。部下に取って代わられるリスクを意識した部長が、優秀な部下を冷遇するケースも起こり得る状況だ。「優れた部下は味方につけて、能力を発揮してもらい、成果を分かち合うのが一流部長の立ち回り」と志倉氏は指摘する。だが、プライドが邪魔して部下の提案をすげなく突き返す三流部長もいるという。

一流部長にも様々なタイプがあり一概にイメージを決めつけにくいが、「あえて言うなら」という条件付きで志倉氏は「熱い人のほうが一流部長になりやすい」という。仕事にも趣味、プライベートにも情熱的で、行動に移すスピードが早い。人が好きで、話すのも好き。思考がポジティブで、根に持たない。こういったキャラクターが一流部長に多いようだ。近ごろは「レジリエンス」と表現される、へこたれない性格、苦境から立ち直る力も望ましい資質だろう。

■「オールマイティーである必要はない」

同じ業務を受け持っても、一流部長タイプとそうでない人では向き合い方が異なるそうだ。たとえば、全国の固定資産リストをチェックするという、割に単調な仕事を任されたとしよう。三流部長タイプは「退屈」「閑職」とふてくされてしまい、叱られない程度の最低レベルでしか働こうとしない。でも、一流部長タイプは「全国の支社長に会える」「営業所ネットワークを知る機会になる」と前向きにとらえ、社内人脈を広げていく。さらに、積み上げた知見に基づいて新たな販売網を提案し、手柄を立てる。志倉氏がコンサルティングを担当した企業で実際にあった話だそうだ。

自分が長年にわたり担ってきた業務の成果が認められて就くことが多い係長や課長までのポストとは違って、部長の場合は不慣れな部門を任される場合が少なくない。部長の横滑り人事では営業部から調達部へといった異動もざらだ。財務や総務・人事といった、さらに畑違いの分野に移るパターンもある。こうしたケースでは新任部長が不安に駆られ、チーム内で浮いてしまう、あるいは成績を落としてしまうという事態も起こりやすい。

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