米中摩擦は米優位 景気好転を読む市場(武者陵司)武者リサーチ代表

写真はイメージ=123RF
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「米中貿易戦争とファーウェイ問題は米国が優位に進めており、中国は譲歩を迫られる公算が大きい」

米中貿易戦争が山場を迎え、米国の戦略の全体像が明らかになってきた。究極の狙いは中国の覇権奪取の野望をくじくことであり、そのために(1)最先端技術企業に躍り出た中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の存在を抑える(2)中国の不公正な台頭を可能にした仕組み(知的財産権の侵害、技術移転の強要、政府補助金、外国企業への差別など)を変える(3)巨額な対中赤字を削減する、の3つにより中国経済の活力をそぐことを目指している。具体的な手段が、関税の引き上げをテコにした貿易交渉とファーウェイに対する制裁の2つと整理できる。

対ファーウェイ、米政府の決意示す

ファーウェイに対する制裁の激しさは驚きであったが、米政府の決意が示されたといえる。次世代通信規格「5G」関連設備で世界最強に飛躍したファーウェイを事実上締め出すという決意を固めたようだ。ファーウェイは基地局の31%のシェアを持つ世界最大の基地局メーカーになり、スマートフォン(スマホ)でも米アップルを抜き世界2位になった。米政府は2018年8月、国防権限法に基づきファーウェイからの政府調達を禁止し、19年5月15日にはファーウェイに対する米国企業の製品供給を禁止する措置を決定した。パナソニックや英半導体設計大手のアーム・ホールディングスなど米政府の規制に従う企業が続出し、ファーウェイは新型の製品開発が著しく難しくなる見通しだ。

ファーウェイは米国から禁輸される半導体を自力で開発できるとしている。実際に海思半導体(ハイシリコン)という強力な半導体設計会社を傘下に抱えているが、アームからの技術提供がなければ新規開発は困難とされる。また米グーグルが無料で提供しているスマホ用基本ソフト(OS)「アンドロイド」は利用できるが、グーグルからのアプリ技術が使用できなくなれば、世界での販売戦略は大きな打撃を受ける。今後さらにファーウェイを追い込む手段としては、銀行取引の停止、米ドル使用禁止という究極の手段もある。中国側からできる手段は限られており、ファーウェイはいずれ経営困難に陥る可能性が大きいとみられている。

この苛烈な米国の制裁に正当性はあるのか。イラン制裁違反を別とすれば、同社の通信機器にデータを抜き取る装置「バックドア(裏口)」が組み込まれているなどという米政府の主張は証拠が乏しく、言い掛かりとの反論を完全には否定できない。

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