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カリスマの直言

米中摩擦は米優位 景気好転を読む市場(武者陵司) 武者リサーチ代表

2019/6/3

しかし米国にはファーウェイへの禁輸を正当化できる理由が2つある。第1は17年に成立した中国の国家情報法により、当局が求めれば企業や国民は情報収集に協力せざるを得ないという点だ。つまり、そもそも中国企業にインターネットプラットフォームをゆだねるわけにはいかないのである。第2はこれまでのファーウェイの台頭が不公正な通商慣行によるところが大きいと米政府がみていること。一旦決めた以上、米国によるファーウェイ排除は揺るがないだろう。

ただトランプ大統領はファーウェイ制裁も通商協議に加えられるとも発言しており、急転直下の合意もあり得るが、ファーウェイは大きなビジネスモデルの修正を余儀なくされるだろう。

ファーウェイは日本企業から年間66億ドル(7000億円強)の購買をしている、その直接の影響は避けがたいが、日本企業への影響を大きく心配する必要はなさそうだ。ファーウェイの無線通信基地局やスマホのシェアが他メーカーに移り、そこで代替の需要が生まれるはずである。

■制裁関税、米経済への影響は限定的

関税問題でも米国側が圧倒的に優位にある。中国の不公正慣行をやめさせる手段が制裁関税である。制裁関税の影響は米国経済に対しては限定的だが、中国経済へのダメージは大きいだろう。

まず米国に対する影響をみてみよう。トランプ政権は対中輸入額2500億ドルに対する25%関税に続き、中国がフリーライド(知的財産権の侵害、技術移転の強要、政府補助金、外国企業への差別)をやめないなら、最大で全輸入品目5400億ドルに25%関税を課すことを準備している。これは米国の輸入業者にとって年間1350億ドルの負担増になり、全てが転嫁されれば米国年間消費の0.8%に相当する。それが2年にわたるとすれば年率0.4%の物価上昇要因となる。しかし多くは中国の輸出業者による輸出価格の引き下げ、人民元安、他国への生産移転などで吸収され、消費者への打撃は軽減されると筆者はみている。

他方で米国の関税収入は同額(1350億ドル)増加し、それは貿易摩擦被害救済の原資となりえる。米国の対中輸出は1210億ドル(GDP比0.6%)とわずかで、中国による関税引き上げの影響も限られる。貿易摩擦に対応する金融緩和も期待できる。米中貿易戦争は米国にとって、深刻な景気後退をもたらすほどのものではないだろう。

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