脱炭素型都市へTOKYOが加速 選手村は水素タウン

都は2020年の東京五輪・パラリンピックをきっかけに水素利用の普及を目指す。五輪後に選手村を改装して中央区晴海に民間住宅を整備する際、水素を利用した電力や熱を生むエネルギーを活用する。臨海部での燃料電池バスの走行も大幅に増やす予定だ。

「Tokyo declares that it will become a Zero Emission Tokyo」。東京都の小池百合子知事は5月21日に開いた国際会議で、50年に向けて『ゼロエミッション東京』を宣言し、世界のCO2排出量実質ゼロに貢献すると訴えた。

小池氏は「50年までに国内で80%削減」という国の目標に先んじた方針を掲げ、国や行政だけでなく、消費者や企業・団体の取り組みを後押ししたい狙いだ。ゼロエミッションにつながる事業が湾岸地区で進んでいる。

選手村ではパイプラインの敷設も進む(東京都中央区)

1日に約500両もの工事車両が行き交う晴海地区の選手村。住宅の工事と並行し、エネルギーの供給と利用を完結させる「水素タウン」構想の実現に向けたインフラ整備が急ピッチで進む。中心となるのが東京ガスによるパイプラインでの水素供給だ。水素は熱や電気をつくりだしてもCO2を排出しないため、究極のクリーンエネルギーとも言われる。

晴海地区では都市ガス事業の技術を生かしたパイプラインを全長約1キロにわたって敷設する予定で、すでに「6割ほどの工事が終わった」(同社)。水素タウンは北九州市が先行しているものの、約1万2000人が居住予定の巨大街区での試行は世界でも初めてという。

選手村は五輪後の22年に民間マンションや商業施設に転用される。水素は主にマンションや商業施設の共用部でのエネルギーとして利用する。さらにステーションに水素を貯蔵しておけば、停電時に非常用電源としても確保できる。五輪期間中は「環境先進都市のモデル」(小池氏)として、来日したVIPや関係者へのプレゼンテーションも予定している。ビルや住宅以外での水素の利用が期待されるのが燃料電池車(FCV)だ。

黄緑色の車体に交じって、見慣れぬ青色の車体の都営バスが東京臨海部を中心に走行する。この「青い都バス」は、都がこのほど15台導入した燃料電池バスだ。CO2を排出しないだけでなく、走行音も小さく、乗り心地が良い。都はオリパラ大会までにFCVの都営バスを70台まで増やす計画を掲げる。

導入にあたって最大の課題は、1台あたり約1億円とも言われる燃料電池バスの購入費だ。さらに燃料である水素の補給場所が少ないこともネックになっている。

都内のガソリンスタンドは1000カ所ほどある一方、水素ステーションは14カ所にすぎない。その一つ「ニモヒス水素ステーション世田谷」は世田谷区が水素供給会社と連携して開設した。清掃工場の敷地に水素を積んだトラックが停車し、燃料電池車に充填するシステムだ。営業は週2回だが、それでも「常連さんが1日1~2台みえるくらい」(区の担当者)。燃料電池車、水素ステーションとも普及はまだ道半ばといえる。

小池氏らは「ステーションの整備には国の財政支援と規制緩和が必要」と訴えており、国の全面的なバックアップが実現のカギを握りそうだ。

(亀真奈文)

[日本経済新聞朝刊2019年5月29日付、30日付を再構成]