ライフコラム

ヒットを狙え

バーモントカレーに神州一味噌 パウダーに変身の理由

日経クロストレンド

2019/6/17

共働き夫婦は土日に翌週分の食材をまとめ買いすることが多かった。土日の夕食は、買ったばかりの食材を使った豪華なメニューになり、月火もハンバーグや唐揚げ、麻婆豆腐など子供に人気の定番メニューを作るケースがほとんど。しかし、水木金となると使い残した食材を組み合わせて作る。ありあわせの食材で作った炒め物などが多くなり、子供がなかなか食べてくれなかった。

「水木金の料理を『名もなきメニュー』と名付けた。これに対して何か貢献できるのではないかと考えた。幅広い食材に使え、炒め物だけでなく副菜、汁物も作れ、子供が喜んで食べてくれる味付けというキーワードを結んでいくと、カレーパウダーに可能性があるのではという結論に行き着いた」(石井氏)。

自社の社員など働く母親に毎日の夕食の写真を撮ってもらった結果、水曜日から金曜日はありあわせの食材で「名もなきメニュー」を作っていたことが分かった。ここにカレーパウダーのチャンスがあると判断した(写真提供:ハウス食品)

■ブランド名をコミュニケーションツールに

パウダー状のカレーというと、カレー粉がある。だが、カレー粉でカレー味の炒め物などを作ろうとすると、他に調味料や塩を入れないとおいしくならない。調味料をあれこれ組み合わせて料理するには、かなりの料理スキルが必要になるうえ、調理時間もかかってしまう。

「忙しい働く母親が、簡単に子供が喜ぶ料理を作れるというポイントからすると、これ1つで味付けが決まるものでなければいけない。また、子供が好きなのは、カレールーの味ではなく、カレーライスの味。ルーをパウダー状にしただけではだめだ」(石井氏)。カレーライスの味とは、肉や野菜などのうまみやおいしさが溶け出した味だ。それをパウダーで再現するため、食材の種類や量を変えて試作を何百回も繰り返したという。

試作途中でペースト状にすることも検討した。そのほうが風味がよいからだ。だが、炒め物には向くが、サラダに混ぜたり、フライを味付けたりするには使い勝手が悪い。モニターに聞くと、片手でササッと振りかけるほうが使い勝手がいいという声が圧倒的で、パウダーで行くことにした。

「商品コンセプトは『子供が食べる汎用カレー調味料』とし、商品名も『甘口カレーパウダー』で行こうと考えていた。しかし、カレーパウダーには辛いイメージがあるというモニターが多かった。そこで、ハウスと言えばバーモントカレーなので、お客さまとのコミュニケーションツールとして、バーモントカレーの名称を使い、味も寄せた」(石井氏)。

パッケージのセンターには大きく「バーモントカレー味」のロゴを入れ、「味付カレーパウダー<甘口>」のロゴはその下に控えめに入れた。ホームページには同製品を使ったレシピを数点掲載しているが、「『名もなきメニュー』のための調味料だから自由に使ってほしいという意味で、レシピ集は付けていない。また、子供向けの調味料だから『中辛』や『辛口』を出す予定もない」と石井氏は言う。

発売から2カ月たった4月末時点で「想定の2倍売れている」(石井氏)という。スーパーマーケットではカレールーやカレー調味料の棚に置かれているが、「バーモントカレー」の横に並べられているところも多いという。

日本人の味覚になじんだ味噌味と、子供に人気のバーモントカレー味。いつかスーパーマーケットの調味料の棚にも置かれるようになり、ライバル調味料として競い合う日が来るかもしれない。

ハウス食品が作ったPOPには、子育て共働きの世帯の悩みを解決する製品としてイラストでアピール

(ライター 原武雄)

[日経クロストレンド 2019年5月22日の記事を再構成]

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