絶好調だから「裏切る」 RAV4全面改良の狙いは…

佐伯 ブランド力は決して1+1=2ではありません。2+α、それくらいあってはじめて魅力を感じられるんじゃないかと。僕はエンジニアなので、あまりマーケットを語りすぎても笑われますが、プラスαをしっかりやっていかないと、今認められているブランドでも25年経ったら飽きられちゃうよと。

小沢 だからこそ、日本で売られていませんでしたが、世界中で去年83万台も売れ、SUV世界販売ナンバーワンになったRAV4を大きく変えたわけですね。

佐伯 お客さま全員に「今度のRAV4、まあまあだね」って言われるより「あっ、この車!」って言われ、LOVEが付くくらいがいい。I like it、ではなくI Love it!と(笑)。

小沢 だからこその今回のRAV4の濃いめデザインと4WD性能なんですね。

新型RAV4は活動的な30~40代やファミリー層を狙うという

お客様を裏切りたい

佐伯 その昔、フロリダにサウス・イースト・トヨタという会社がありまして、ジムさんという販売の神様がおられたんです。既にお亡くなりになられましたが、20数年前にお会いしたとき、「どんなクルマがいいクルマなんですか?」って聞いたんです。

小沢 なんともストレートな質問を(笑)。

佐伯 その時いただいた返事をいまだに心に刻んでいて、ジムさんは「シンプルで力強いメッセージを持つ商品がいい」「ワォ! って言葉が出るくらい。それは計算してないから出るんだよ」と教えてくれました。

小沢 「ワォ!」と言われるのがいい商品の目安。それこそがブランドだと。

佐伯 それと今回の5代目には、僕が3~4代目を作った経験も生きていて、3代目はバックドアにスペアタイヤを背負わせ、あえて2代目とイメージを変えなかった。その結果、何が起こったかというと、一部で「オールドファッション」と言われちゃったんです。

小沢 ダメですね。革新SUVのRAV4がオールドファッションじゃ。

佐伯 だから今回は原点に立ち返り、新ジャンルのパイオニアになろう、チャレンジしようと思ったんです。「この先もたぶん延長線上に来るんだよねえ」というようなことをやっちゃいけない。「ワォ!」にならないと。

小沢 常にお客を驚かせたいんですね。

佐伯 いい意味でお客様を裏切りたい。確かに去年お陰様で全世界で年間80万台以上も売れ、北米でいちばん売れたトヨタ車となりましたが、だからこそ攻めなきゃいけないだろうと。

小沢 そこが大変で、一度勝つと守りたくなったりしませんか。

佐伯 逆に負け試合が続くと全てがネガティブになっちゃうじゃないですか。負け続けている野球チームがあったとして、ここで新人ピッチャー入れようか、となった瞬間、「また負けちゃうかも?」って気分になりますよね。でも勝ってるチームに新人ピッチャーを先発で入れたとして「もしや?」って期待感は出ませんか。

小沢 勝ってる時こそ勝負に出るべき! だと。 

佐伯 そうです。だから今回は攻めるんです。

小沢 相当な勝負師じゃないですか。

佐伯 いやいや(笑)。

さえき よしかず 1984年入社。シャシー設計部で「ランドクルーザー」のサスペンション設計。その後製品企画部に異動、2代目「アバロン」、6代目「カムリ」「ES300」を担当。97年に北米の研究開発部門TTC-USA(Toyota Technical Center、現TMNA R&D)赴任。帰国後、7代目「カムリ」、3代目「RAV4」「ヴァンガード」「ハイランダー」「ハリアー」などのチーフエンジニアを務める
小沢コージ
自動車からスクーターから時計まで斬るバラエティー自動車ジャーナリスト。連載は日経トレンディネット「ビューティフルカー」のほか、「ベストカー」「時計Begin」「MonoMax」「夕刊フジ」「週刊プレイボーイ」、不定期で「carview!」「VividCar」などに寄稿。著書に「クルマ界のすごい12人」(新潮新書)「車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本」(宝島社)など。愛車はロールス・ロイス・コーニッシュクーペ、シティ・カブリオレなど。

(編集協力 北川雅恵)

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