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書店員 新井見枝香さん(写真・タナカヨシトモ)

書店員 新井見枝香さん(写真・タナカヨシトモ)

芥川賞・直木賞より売れる文学賞。書店員の新井見枝香氏が、半年で一番面白かった本をたった一人で"勝手に"選ぶ「新井賞」だ。芥川賞・直木賞と同日に発表するが、あくまで独断のため、著者に受賞の連絡をすることはない。

記念すべき第1回の受賞作は、『男ともだち』(千早茜著・文藝春秋)だ。「2014年上期の直木賞候補作のなかで、自分は飛び抜けて面白いと思ったのに受賞しなかった」。芥川賞・直木賞が発表されれば、書店の棚は受賞作で埋め尽くされる。候補作は下げなければならないが、「この本に関してだけは引けなかった」。直木賞受賞作と同列に扱い、売り上げも伸ばす決心をした。目を付けたのは本の帯だ。「直木賞受賞作」に対して、「候補作」では弱い。そこで、自分の名前を冠した「新井賞」の手書き帯を苦肉の策として巻き、真剣度を伝えようとしたのが始まり。結果、当時勤務していた三省堂書店有楽町店では、直木賞受賞作を超える売り上げを見せたという。以来、芥川賞・直木賞の発表同日に「新井賞」を発表する、異色の文学賞がスタートした。

新井賞の選考方法は極めてシンプルだ。普段は全く賞のことは考えず本を読み、発表の直前に「一番面白かった本は何か」と自分に問い掛け、ぱっと浮かんだ1冊を発表する。これまでの受賞作には、第3回『朝が来る』(辻村深月著・文藝春秋)、第8回『ののはな通信』(三浦しをん著・KADOKAWA)など有名作家のものから、後に映像化した第2回『イノセント・デイズ』(早見和真著・新潮社)など、知名度の低かった作家のものまである。最新の第9回は、何と漫画作品『ダルちゃん』(はるな檸檬著・小学館)が受賞。新井氏本人も「新井賞が小説じゃなきゃいけないなんて誰が決めたよ」とツイッターに投稿。予測できないラインアップが、本好きの心をつかんでいる。

しかし、一介の書店員が発表する賞に、なぜこれだけの注目が集まったのか。第1回の開催当時から、新井氏には固定ファンがいた。常連客に話し掛け、的確な本を薦めることを自分に課していた新井氏のアドバイスは鋭い。わざわざ遠くから足を運ぶ人もいた。新井賞を開催しても、「何人かは絶対に買ってくれるだろうという勝算はあった」。

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