健康にみえる粗食と断食の盲点 筋肉や骨が細る恐れも

日経Gooday

たんぱく質は、人体の細胞のほとんどを構成し、1gあたり4kcalの熱量がある。炭水化物は糖質と食物繊維が結びついたもので、活動のための重要なエネルギー源となり、たんぱく質と同程度のカロリーだ。脂質は、ホルモンや細胞膜、核膜を作り出す役割を担っており、1gあたり9kcalという効率の良いエネルギー源にもなる。これら3つを合わせて「三大栄養素」ともいう。

ビタミン類やミネラル類は、ほかの3つの栄養素や器官が体内で正常に働くための手助けをするもので、それ自体には体を動かすために必要なエネルギーを含んでいない。

「ビタミンとミネラルをたくさんとると健康になるような気がします。でも、筋肉や臓器を構成し、エネルギー源にもなっている三大栄養素が不足すれば、いくらビタミンやミネラルをとっても、人体を構成している細胞を正常に働かせたり、成長させたりすることができないのです」(中野さん)

食物繊維は健康にいいイメージがあるが、そればかりを摂取しても逆効果になる。写真はイメージ=(c)Tatjana Baibakova-123RF

また、野菜を食べると、食物繊維が豊富にとれて健康になれると思うかもしれない。だが、ビタミンやミネラルと同じで、三大栄養素が不足している状態で食物繊維ばかり摂取しても、効果的だとは言い難い。

食物繊維は、人の消化酵素で分解されず、体内には吸収されない物質の総称で、水溶性と不溶性のものがある。

水溶性食物繊維は、水分を含むとゼリー状になり、小腸での栄養素の吸収速度を穏やかにして、食後の血糖値の上昇を抑えたり、コレステロールやナトリウムの排出を促したりする作用がある。一方、不溶性食物繊維は水分を吸収して便の量を増やし、大腸を刺激して排便を促したり、有害物質を吸着したりして大腸がんのリスクを低減させる働きもある。

「私のクライアントが、ほぼ野菜だけの食事をしてみたところ、『便の量が異常に多くなった』と言っていました。食物繊維には、便の量を増やすと同時に余計に取り過ぎた栄養素を排出する働きもあります。三大栄養素が不足したままで、食物繊維ばかりをたくさん含んだ食事を続けるのも、あまり健康的ではないかもしれませんね」(中野さん)

もちろん、植物性の食べ物をメインにしたベジタリアンで、健康的な食生活を送っている人もいる。植物性の食べ物を中心とした食事でも、五大栄養素をバランスよくとることは可能だからだ。

「ベジタリアンでバランスのとれた食事をしている方々は、大豆などの穀物から植物性たんぱく質を十分にとり、カロリーも必要なだけ摂取しています。ですから、健康的な生活が送れているのです」(中野さん)

断食をするとリバウンドしやすくなる

中野さんは、粗食と同様に、断食についても注意が必要だという。

2~3日の断食をすると、体重が数kg落ちることがある。それでダイエットできたと思う人がいるかもしれない。だがその大部分は、脂肪が減少したのではなく、腸内の便などが排出され、食物から摂取していた水分が減ったからであることが多い。

中野さんは「数日断食すると、体が“飢餓状態”になって、今度は脂肪をため込みやすくなります。つまり、断食直後はリバウンドしやすい体質になっているので、気をつけないとすぐに体重が戻ってしまうんです」と言う。

断食すると、「意識が研ぎすまれる」と言う人がいる。「精神的な部分でそう感じられるのであれば、私は否定しません。ただ、断食にハマってあまりにも頻繁に行い、体重の増減を繰り返していると、体への負担も大きくなってしまうので注意が必要です」(中野さん)

粗食や断食は、一時的に行う分には、気分がリフレッシュされるなどの効果があるかもしれない。しかし、継続的に行う場合は、中野さんの言うような問題もある。バランスのとれた食事が健康のためには基本であることを覚えておこう。

(ライター 松尾直俊)

中野ジェームズ修一さん
スポーツモチベーションCLUB100技術責任者、PTI認定プロフェッショナルフィジカルトレーナー。フィジカルを強化することで競技力向上やけが予防、ロコモ・生活習慣病対策などを実現する「フィジカルトレーナー」の第一人者。元卓球選手の福原愛さんなど多くのアスリートから支持を得る。日本では数少ないメンタルとフィジカルの両面を指導できるトレーナーとして活躍。最新刊は『医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本』(日経BP社)。

[日経Gooday2019年5月15日付記事を再構成]