旅行・レジャー

旅・風景(ナショジオ)

至高の茶を求める旅 中国5000年の歴史が育んだ味

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/6/5

ナショナルジオグラフィック日本版

高い位置から急須へ湯を注ぐ。中国、四川省で撮影(PHOTOGRAPH BY TUUL AND BRUNO MORANDI)

香りの良い新茶が出回る季節となった。水を除けば、茶は世界で一番よく飲まれている。紀元前2737年、中国の神農という伝説上の皇帝が湯を沸かしていたところ、器の中に偶然茶葉が入ったのが始まりとされる。それから4700年、茶は全世界に広がった。インドやネパール、日本、ケニアほか多くの国々で茶葉が栽培されている。今回は、写真とともに、米国人作家と最上のお茶を求める旅に出てみよう。

◇  ◇  ◇

緑茶、ウーロン茶、紅茶、白茶など、茶には様々な種類があるが、すべては同じチャノキ(Camellia sinensis)から作られたものだ。長い歴史のなかで、茶は貨幣や献上物として使われたり、貴重な農産物として税金をかけられたりもしてきた。

私、リサ・シーは、最上の一杯のお茶を求めて、中国を旅することにした。私は子どものころから茶を飲んでいるが、専門家ではなく作家だ。そこで、茶のスペシャリストに旅の案内役になってもらうことにした。それが、ネットのプーアル茶専門店「版納茶荘」のリンダ・ルーイ氏、茶の輸入販売業を営むジェニー・ドッド氏、そしてネパールで茶園と加工工場「ホライズン・パルドゥ・バレー・ティー」を経営するブッダ・タマング氏の3氏だ。

私たち4人はまず、中国広東省広州に集合し、茶の専門店が軒を連ねる世界最大の芳村茶葉市場を訪れた。その後、雲南省へ移動。最終的には、孟海(モンハイ)という小さな町を拠点に各地の茶山を訪れることにした。

中国の茶摘み。雲南省の山でも四川省の段々畑でも、茶葉は全て丁寧に手で摘み取られる(PHOTOGRAPH BY TUUL AND BRUNO MORANDI)

■1キロ90万円のお茶

翌朝、ホテルで中国の伝統的な朝食をいただくと、ロビーで茶の大家、陳国義(チェン・グオイー)氏の到着を待った。陳氏は、まるで映画スターのように堂々とした空気をまとって入ってきた。デニムシャツの裾を出し、歩くたびに大きく波打つワイドパンツを合わせ、カンフーシューズを履いて軽やかな足取りでロビーを横切る姿に、人々の目はくぎ付けになった。一緒に写真を撮ってもいいかと申し出る人もいた。そう、陳氏は有名人なのだ。

最初に、陳氏の経営する広州八八青干倉茶葉公司へ案内された。そこで、パートナーのリウ氏が茶の試飲を指導してくれた。蓋碗と呼ばれる蓋つきの試飲用茶器と、小さな茶碗にお湯を注いで温める。その湯を捨てて、蓋碗に茶葉を盛る。「プーアル茶の王様」とされる老班章産のプーアル茶で、男性的な力強い香りが特徴だ。1キロ8000ドル(90万円)の値が付くこともある。

ところがリウ氏は、値段のことなど気にするそぶりも見せず、あふれんばかりに注ぎ入れる。豊かさを象徴する注ぎ方なのだそうだ。これほど高価で、これほどおいしい茶を私は口にしたことがなかった。

陳氏は、プーアル茶の独特な回甘(フイガン)を感じるようにと促した。茶を口にすると、喉の奥からミントのようなさわやかな感覚がこみ上げ、口の中に広がるのを感じた。祖母がいれてくれた市販の紅茶とはまるで違う。

通常、茶葉は広大な茶園の段々畑で摘まれるため、一貫して同じ味が出せる。それがアールグレイになるか、正山小種(ラプサン・スーチョン)になるか、イングリッシュ・ブレックファストになるかは、加工と後処理によって変わる。

雲南省と四川省は中国の茶の主要産地だ(NG Maps)

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