カラーメーク・メンズ美容… 令和の美容ヒット予測
雑誌日経トレンディは全12の商品ジャンルを定め2019年上半期にヒットしたものを選定し「上半期ヒット」とした。そのなかから、「新規性・売れ行き・影響力」という 3つの評価項目に則り「大賞」を決めた。下半期に注目の新商品やサービス、これから売り上げが爆発的に伸びそうなものは「令和ヒット予測」とした。今日は美容・アパレルのジャンルを紹介する。
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19年、化粧品業界の最大のニュースは、FLOWFUSHIの再始動。「モテマスカラ」など数々のヒットを飛ばしたが、18年12月に突如ブランドの閉鎖を発表。19年3月にUZUへと変貌を遂げた。第1弾「ウズ アイオープニングライナー」は品薄が続く。
■19年上半期ヒット大賞 大人気ブランドがリニューアルで話題沸騰
成功したのは、カラーメークを前面に打ち出す戦略が支持されたからだ。トレンドの「くすみカラー」と逆行する「ビビッドカラー」を多数用意したところ、白が売上予想比の14倍で推移。これまでにない新市場をつくった点を評価して、「大賞」とした。
マーケティングも画期的だった。ニューヨークで行われた「KEEP OR DROP」は、ユーザーのジャッジで、米国での販売が決定する斬新な試みだ。
コスメの大きなトレンドは、「使いたいものだけ」のコラボ。「ビオレ おうちdeエステ 肌をなめらかにするマッサージ洗顔ジェル」(花王)と「ウォッシャブル コールド クリーム」(ちふれ)の組み合わせは、「最強の毛穴対策」としてSNSにクチコミがあふれた。化粧品クチコミサイト「アットコスメ」を運営するアイスタイルは、「コスメフリークのSNSから情報が集まることで、異ブランドのコンビ使いが拡大した」と分析。無印良品のパレットなどを使い、「スタメン」化粧品だけを自分でカスタマイズしてコンパクト化する「自作メークパレット」も話題だ。
「自分に似合う色を敏感に探す人が増えている。『使いきれないことがストレス』という考え方に」(アイスタイル)。ミニサイズのコスメの台頭には、このマインドが影響している。
アパレルヒットの潮流は、ワークマンを筆頭にした機能性衣料だが、単にストレッチ素材を使っただけではない。「4D 超撥水ストレッチパンツ」は、水を掛けると水滴が玉になってこぼれ落ちるほどの撥水性を持つ。グンゼ「エアーズ」は、腰ゴムを無くしたうえで、極限まで縫い目を少なくした。着圧や肌への刺激を低減することで、着心地の良さを追求。感動的な体験が得られ、SNSで語りたくなる技あり商品が、ユーザーの心をつかんだ。
【上半期ヒット】SNSで「組み合わせ買い」投稿が相次ぐ
「全年齢で悩みのトップにくる」(アイスタイル)という毛穴問題。「毛穴が消える」と評判の、ちふれのクレンジングとビオレの洗顔ジェルが最強の組み合わせとしてSNSで広まった。Instagramにはこの2商品を一緒に撮った写真の投稿が相次ぐ。ブランドどころかメーカーも異なるが、両者ともに大きく伸長。
【上半期ヒット】高級ブランドが「小型化」で新規層を開拓
パーソナル美容の考えが浸透し、「似合う色かどうか」がリップの最重要項目に。ミニサイズでのお試し需要が高まった。「マキアージュ」から発売されたミニリップは、容器のクオリティも高い本格派。客層を若年層に広げるきっかけとなった。「ピコ」のミニリップも18年2月の第1弾と比べ、購入者が2桁伸長と好調だ。
【上半期ヒット】自分流のカスタマイズで最小限を持ち運ぶ
「使いきれない」ことをストレスと捉える風潮が広がり、使うアイテムを自由に選んでコンパクト化できる自作メークパレットが人気に。最低限必要な化粧品を、好きな入れ物に収まる範囲で詰め込む自分流のアイデアを、SNSで披露する人が続出している。
【上半期ヒット】時短ブームでも「ちゃんとケア」をかなえる
「時間があればちゃんとケアしたい」ニーズもあるなか、「休日のスペシャルケアに向く」(アイスタイル)美容機器が好調。パナソニックの脱毛器は、「この商品から男性のヒゲと胸毛にも使えるように。発売直後から好調な売れ行き」(パナソニック)。女性ものを使うのに抵抗がない男性が増え、「ムダ毛ケア」需要が高まったことを象徴する。
【上半期ヒット】見落としがちなパーツに焦点
その名の通り「お尻」に特化したスクラブせっけん。肌を直に撫で洗いすることで黒ずみ、ざらつきを落とすという。ありそうでなかった着目点で、消費者のニーズを掘り起こした。発売したのは16年3月だが、18年秋ごろからSNSで「全身がすべすべになる」とバズり、「最大で1カ月で1万個売れた。欠品になったことも」(ロフト)。
【上半期ヒット】ワークマンプラスが好発進
デニムなのに水を弾く、カジュアルウエアと作業着の機能性を両立させたワークマンの新商品。3月の発売から僅か1週間で1万着も売れた。洗濯しても撥水機能が落ちないうえ、触り心地は普通のデニムと変わらない。ストレッチ素材を採用し、ウエストもゴム仕様にするなどはき心地にも工夫をこらした。価格は2900円(税込み)と安い。
【上半期ヒット】スーツのような作業着が急拡大
スーツに見える作業着をうたい、ストレッチ性、撥水性などを兼ね備える。動きやすく、汚れにくいためアクティブな職種を中心にヒット。じわじわと認知度を拡大し3月の売り上げは、昨年10月に比べて5倍に増えた。EC販売が中心だが、2月に三越伊勢丹でポップアップストアをオープンするなど販路も広がりつつある。
【上半期ヒット】働く女性の救世主
仕事上の制約でスニーカー通勤ができない女性に救世主が現れた。その名も「走れるパンプス」だ。代表格は、18年7月に発売されたGUの「マシュマロパンプス」。クッション性や高屈曲性を持ち、スニーカーのように動きにフィットする。「好評を受けサイズやデザインのバリエーションを拡充」(ジーユー)。
【上半期ヒット】アパレル在庫、「改名」してヒットに
アパレルの在庫を買い取り、新しいタグを付けて販売するビジネスが生まれた。百貨店系ブランドやファストファッションの売れ残った商品を買い取っており、消費者は元の価格より2~7割安く買える。18年10月には公式ECサイトを立ち上げた。19年3月までの売り上げ実績は前年同期比1.46倍と好調に推移。
次ページからは「令和」のヒットを予測する。
【令和ヒット予測】「メンズコスメ元年」到来の予感
「THREE」「シャネル」など女性向け高級ブランドがメンズコスメをそろって出した18年。19年は自然派の「メンズ専用」のブランドが台頭しそうだ。「BULK HOMME」はスキンケアとヘアケア。「LIPPS BOY」は、若い男性を中心に人気の美容室「LIPPS」から生まれた。「ヘアワックスなども出しており、男性にもなじみ深く手に取りやすい」(ロフト)。
【令和ヒット予測】時短メークの真打ち「ハイブリッド」
スキンケアも両立する「ハイブリッドファンデ」をうたう。発売第2週にはファンデーション金額シェアの週間ランキングで、単品で第1位を獲得と初速は十分。購入者の4割がファンデーションを普段買わない層といい、新規ユーザーの獲得が期待できる。
【令和ヒット予測】「いつでも」使えるセルフ式本格エステ
業界初の定額制、通い放題のセルフエステ。高性能の業務用マシンを使えるにもかかわらず、利用料金は月額5980円(税別)からでコスパがいい。「場所と時間を制限されるのを嫌う今の時代にうまくフィットしている」(アイスタイル)といい、店舗数も拡大中だ。
【令和ヒット予測】洗濯強度を高める新発想衣料
通年で薄手のニットを着る人も多くなり、それに対して「洗濯強度」を売りにした機能性衣料が発売された。ニットの編み目を細かくした度詰め仕様で、形崩れや縮みを最小限に抑える。3月発売で既に計画比の136%を達成。
【令和ヒット予測】ゴアテックスを超える次世代素材?
19年1月の「CES 2019」で展示された新素材「フューチャーライト」。独自の製造方法で「従来の防水生地とは一線を画す通気性を備える」(ザ・ノースフェイス)という。この秋からアウトドア用のウエアに導入され、製品化される予定だ。
[日経トレンディ2019年6月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。