「王さんに学んだ」 加賀屋5代目がめざすリーダー像加賀屋 小田與之彦社長(下)

――大学を卒業した後、加賀屋には戻らず商社に就職し、さらに米国留学までしたのはなぜですか。

「中学生のころから海外に行きたいと漠然と思っていました。加賀屋の後継者となることに疑いも抱かずに育ちましたが、一方で『加賀屋に戻ったら、旅行以外で海外に出ることもなくなる』と思っていました。今のように訪日外国人の方たちにおいでいただくなんて、まるで想像もできない時代でしたから。実は大学を卒業して丸紅に就職したのも、海外と縁のある仕事がしたかったからです。4年半、丸紅で働いた後、ホテル経営のビジネススクールで世界最高峰といわれる米コーネル大学ホテル経営大学院に留学しました」

ホテル経営のビジネススクールで世界最高峰といわれる米コーネル大学ホテル経営大学院に留学した

「コーネル大での学びはやはり面白かった。特に強く感じたのは、米国は表に見えない裏側の仕組みを徹底的にシステム化することにたけているということ。加賀屋は今から30年以上前に各フロアへ料理を自動搬送するシステムを導入するなど、旅館のなかではかなり先進的な取り組みをしてきたのですが、コーネル大で学んだシステム化はもっと徹底していました。『誰にでもできるようにする』という概念が徹底しているんですよね」

「実はこの『誰にでもできるようにする』というのが、大きくなった加賀屋がこれからもおもてなしの加賀屋であり続けるために必要なことなのです。私が導入したKPI(キー・パフォーマンス・インデックス)や、『メイ・アイ・ヘルプ・ユー・リポート』がその例ですが、加賀屋が得意とするおもてなしを、全て従業員ができるようにするためのシステム作りをするという発想は、コーネル大で学んだように思います」

――コーネル大へ進む前にハワイのシェラトン・ワイキキで、ホテル勤務も経験しました。

「ハワイではJTBの現地添乗員の方たちの働きぶりから学ぶところがありました。朝早くにハワイに到着するお客様のために、チェックイン前でも1時間でも早くホテルの部屋で休めるよう、添乗員の方たちはホテルに粘り強く交渉なさるのです。当時は正直『なぜここまで言うんだろう』と思っていましたが、自分が加賀屋に戻ってお客様に接するようになってようやく、お客様のためにとことんコミットする姿勢なのだと理解しました。石川県人はどこか遠慮がちな部分があるのですが、私たちもハワイの添乗員の方のように、お客様のためにしっかりコミットしなければならない。そんな姿勢を私が率先してみせることも、リーダーの役目だと思っています」

尊敬するのは王貞治さん

――リーダーとして尊敬する人はいますか。

「なんといっても王貞治さんです。まだ私が小学生のころ、加賀屋にお泊まりいただいたことがきっかけでお付き合いさせていただいています。王さんはお嬢さんが3人なので、私のことを息子みたいだと言ってくださっています」

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