出世ナビ

私のリーダー論

現場の輝くスター育成 伝える加賀屋の「おもてなし」 加賀屋 小田與之彦社長(上)

2019/5/30

「私は特に秀でたところもない凡人ですが、加賀屋グループにはそれぞれの現場にとびっきりのプロフェッショナルがいます。料理のレベルは高いですし、客室係には年齢や経験に関係なくすばらしい接客をするプロがいます。現場で私が何か指示をしようにも、私よりよっぽど優れた人がいるわけです。では、トップに立つ私は何の一番になるべきか。それはこの会社を良い会社にしたいという強い思いしかありません」

「そのうえで、各現場で輝くスターを育てて、現場が自主的に動いていく組織にするのが使命だと考え、『暗黙知』を『形式知』とする努力を常に続けています。加賀屋のおもてなしのモットーは『笑顔で気働き』。これまでは社員がなんとなく感性を磨いていったようなところがありましたが、人数も増え時代も変わりましたので、『なんとなく』ではうまくいきません」

■一人ひとりが目標を立て、実践できたかをチェック

「そこで、私が社長になってから導入した手法が2つあります。1つはKPI(キー・パフォーマンス・インデックス)です。『あいさつは立ち止まってする』といった部署ごとの大目標や社員一人ひとりの目標を立て、実践できたかを毎日チェックし数値化します」

加賀屋の経営面を小田社長(左)が取り仕切る一方、現場をまとめるのは妻で若女将の絵里香さん。福岡県出身の絵里香さんは「加賀屋のことをよく知らなかったから思い切って結婚できたのかも」と笑うが、小田社長は「九州らしいからっとした性格で、女性の多い職場をうまくまとめてくれている」と感謝の言葉を口にする

「もう一つが『メイ・アイ・ヘルプ・ユー・リポート』です。お客様と接するなかで、小さなことでも喜んでいただけたことを職場ごとに記録してシェアします。例えば、加賀料理『鯛(たい)のかぶと煮』で、こんなエピソードがあります。鯛の頭には鯛の形をした骨があり私たちは『鯛の鯛』と呼んでいます。この骨を取り出して洗ってから財布に入れると金運が上がるという言い伝えがあります。あるとき、お客様が挑戦されたのですが、一人だけ鯛の鯛が見つけられなかった。それを聞いた客室係が、お膳を下げた後で鯛の鯛を取りだして、お客様にお渡ししたところ大変喜んでいただけたそうです」

「旅行の途中にけがをされたお客様が、旅程の都合ですぐに次の目的地に移動しなければならないことがありました。客室係は次の目的地のそばの病院を調べてそっとお伝えしました。こういったエピソードを担当した一人だけの経験とするのではなく、全体でシェアする取り組みです。一つ一つは、決して会社経営上の大ホームランではありません。でも小さな引き出しをたくさん持った人を増やしていくことが、加賀屋らしさを育てることにつながると思っています」

(藤原仁美)

(下)「王さんに学んだ」 加賀屋5代目がめざすリーダー像 >>

小田與之彦
1991年慶応大商卒、丸紅入社。95年ハワイのシェラトン・ワイキキ・ホテル勤務を経て、1999年米コーネル大ホテル経営大学院を修了後、加賀屋に入社。07年に副社長、14年から現職。08年には日本青年会議所(JC)会頭を務めた。

「私のリーダー論」記事一覧

管理職・ミドル世代の転職なら――「エグゼクティブ転職」

5分でわかる「エグゼクティブ力」
いま、あなたの市場価値は?

>> 診断を受けてみる(無料)

「エグゼクティブ転職」は、日本経済新聞社グループが運営する 次世代リーダーの転職支援サイトです

NIKKEI 日経HR


マネジメント層に必要な4つのスキルを鍛える講座/日経ビジネススクール

日経ビジネススクールは、グローバルにビジネスを推進し、
社会に変革と活力をもたらす人材を育成します。

>> 一覧はこちら

出世ナビ 新着記事

ALL CHANNEL