4万年前から6世紀まで こんなに変わった英国人の顔

日経ナショナル ジオグラフィック社

それぞれ個性的だった

今回の展示の興味深い点は、科学によって彼らの人生が明らかにされたことだと、ニルソン氏は言う。「これまで数多くの頭骨を扱ってきましたが、7人はどれも個性的でした。完成した顔から、それぞれの人生が見えたのです」

特にホワイトホークウーマンには、ただならぬ事情があったことがうかがえる。この女性は5000年以上前に、現在のイングランドとウェールズとの境あたりで生まれ、その後ある時点でサセックスへ向かって東へ数百キロ移動し、新石器時代の墓地に幸運のお守りとともに埋葬されたことが分かった。

骨盤のあたりに胎児の骨があったことから、女性は出産時に死んだと思われる。顔を復元するという芸術的作業に取り組む際、ニルソン氏はこの科学的洞察を生かすようにした。

「少しばかり好奇心を抱いていて、未来のことを考えているような表情にしようと思いました。この女性は、出産が原因で亡くなったと思われますが、その直前の彼女の姿を想像して顔を復元しました」

ディッチリングロードマン、4400年前 1921年の道路拡張工事で発見された。この道路の名がディッチリングロードだった。男性は、紀元前2400年頃にユーラシア大陸からブリテン島へ大量に押し寄せた農民集団の第一波に属していた。彼らは広口で独特な形をしたビーカー式土器を作っていたことから、ビーカー人と呼ばれている。男性の骨を調べたところ、成長期に何度か栄養不足に陥っており、それが彼の成長を少しばかり妨げたとみられている。死亡時の年齢は25~35歳で、その足もとにはビーカー式土器が、口のそばにはカタツムリの殻が数個置かれていた(COURTESY ROYAL PAVILION & MUSEUMS, BRIGHTON & HOVE)

2300年前の男性「スロンクヒルマン」の制作も「苦労した」とニルソン氏は語る。骨の構造から、鉄器時代の20代男性で、「おそらくハンサムな部類に入っていた」と想像できるが、この手の顔はマネキンのようになりがちだという。また、目の上の額が大きく張り出していて、残酷そうな顔つきに見えただろうともいう。「笑みを浮かべさせようとすると、どうしても不気味になってしまいます」

1500年前の「スタッフォードロードマン」の顔も迷った点があるという。彼はアングロ・サクソン時代の男性で、顔にできたひどい腫れものが原因で死んだとされている。死亡時、腫れものは膨れ上がっていたはずだが、ニルソン氏はその部分をあえて目立たせないことにしたという。

「ある程度の尊厳を持たせ、博物館の来館者に、彼とのつながりを感じてもらいたかったのです」

次ページでは、このスタッフォードロードマンや、4万年前の同時期の現生人類とネアンデルタール人の顔も紹介する。

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