惰性で大酒続けた人を襲う「重症型アルコール性肝炎」

日経Gooday

写真はイメージ=(c)Sebastian Kaulitzki-123RF

「肝機能が落ちている状態のときは当然アルコールの分解能力も落ちます。こうした状態のときは、いつもと同じ量のアルコールを飲んでも、通常より多い量のお酒を飲んでいるのと同じ状態となり、肝臓のダメージも大きくなります。これが悪循環となり、肝障害の重症化を招く可能性があると考えられます」(浅部さん)

浅部さんによると、一般のアルコール性肝障害の場合は、お酒をやめれば良くなるケースがほとんどなのに対し、重症型の場合は、お酒をやめても回復しないことがあり、死に至ってしまうケースもあるのだという。

こ、怖い…。酒飲みの中には、調子が悪くても、酒を飲めばスッキリするなどと言う人もいるが、こうした行動の積み重ねが重症型アルコール性肝炎につながっている可能性があるわけだ。

黄疸、腹水、肝性脳症、急性腎不全などが起こる

次に、重症型アルコール性肝炎になると、どういった症状が起こるのだろうか。

「重症型アルコール性肝炎に罹患し、肝臓の機能が低下するとさまざまな症状が起こります。中でも目に見えて分かるのは黄疸(おうだん)です」と浅部さん。

確かに、勝谷さんについて報じたネットのニュースなどを見ていても、黄疸が見られたという話が載っていた。黄疸というと、肌や目が黄色くなるというのは知っているが…、恥ずかしながらよく分かっていない。具体的にはどういうものなのだろうか。

「黄疸は肝臓の機能が低下すると現れる典型的な症状です。血液中には、老廃物であるビリルビンという成分が含まれており、これが茶色い(黄色い)色をしています。健常者の場合、肝臓が血液中のビリルビンを取り込み、胆汁という形で腸の中に排せつします。ところが、肝不全になるとビリルビンの代謝・排せつがうまく行えず、血液中のビリルビンが上昇し、目や顔の肌の色が黄色くなります。また、おしっこの色も濃い黄色(紅茶のような濃い色)になります。これが黄疸です」(浅部さん)

もう1つ、目で分かりやすい症状が腹水だという。腹水(腸の外側にたまる水)でおなかがパンパンになって動けなくなって救急車で運ばれるというのが典型例なのだという。

さらに、意識障害や異常行動を引き起こす肝性脳症、肺炎などの感染症、急性腎不全などが起こると浅部さんは話す。また、血液中の凝固因子が減るため、内臓や脳で出血するリスクも高くなる。肝臓機能が低下している人は消化管などに静脈瘤ができやすく、これが破裂すると大出血を起こすのだという。

こうしたさまざまな症状を引き起こすのは、過剰なアルコールにより肝臓に負担がかかり、肝細胞が減っていき、解毒、代謝、胆汁の生成・分泌という肝臓の持つ働きが失われることにより起こる。これはアルコールを分解する際に生じる憎っくきアセトアルデヒドの毒性によるものなのだろうか。

「現時点では明確に分かっていません。ご指摘のようにアルデヒドもその原因の1つと考えられますが、それだけではありません。肝臓内のCYP2E1などの代謝酵素によりアルコールが分解される際に生成される酸化力が強い代謝物が炎症を起こすのではないかという指摘もあります」(浅部さん)

重症型アルコール性肝炎の治療法は?

先生、もしこの重症型アルコール性肝炎に罹患した場合、効果的な治療はあるんでしょうか?

「残念ながら、症状が重い場合、効果的な治療法はありません。肝不全に対して一般的には血漿(けっしょう)交換という処置を行いますが、劇的な効果はなく、その効果は1日程度しか持ちません。血漿というのは血液中の液体成分のことです。健康な方から血漿成分をもらい交換することで、血液中の炎症成分や老廃物を取り除こうというものです。また、肝不全になると血液中の凝固因子が減り、出血すると血液が固まりにくく、それが命取りになることもあります。それを防ぐために血漿成分をもらうわけです」(浅部さん)

また、炎症を抑えるためにステロイドを投与するという方法もあるものの、ステロイドは免疫機能を抑えるため、肺炎などをはじめとした感染症のリスクが高まるため、賛否両論があるのだという。

さらに、肝不全に対して最も有効な治療法は肝移植だが、一定期間の禁酒を条件にするのが普通で、日本で重症アルコール性肝障害のケースで肝移植が行われることは少ないのが現状だとのこと。

なお、浅部さんによると、どこからが「重症型アルコール性肝炎」に該当するかは必ずしも明確になっているわけではないのだという。「実際には、重症型まではいかないけれど、その間際という患者も多くいます。黄疸が出て腹水もたまって救急車で運ばれてきた人でも、点滴をして全身管理をして、お酒を絶っていただくと、回復される方も多くいます」と浅部さんは話す。

この話を聞いて少し安心した。「黄疸」が出たらもう後がないのかと思っていたが、必ずしもそうではないのだ。

重症型アルコール性肝炎にならないためには

ここまでの説明で、重症型アルコール性肝炎の怖さはよく分かった。では、重症型アルコール性肝炎にならないためには何をすべきか、そして重症化する前に、危険を察知する方法はないのだろうか。