まず1点目ですが、大半の新設学部・学科は前身があります。学科だったものを学部に格上げする、コース・専攻を学科にする、短大・専門学校を学部にする、などなど。
前身の学部・学科ないしコース・専攻がどのような教育をしていたか、どのような就職実績だったかを見ていくといいでしょう。新設学部・学科に前身がある場合、前身の教育・就職実績等を引き継いでいるからです。
例えば、2019年に開設した京都産業大学国際関係学部。やや乱立気味の国際系学部ですが、京都産業大学の場合、前身となる国際関係学科は2008年開設。それ以前も留学制度の整備などをしており、実績があります。
2点目の「文理融合」について。日本ではなぜか文系・理系と分けたがる慣習があります。本来は文系・理系を分けることに意味がありません。それもあって、日本の新設学部・学科は文理融合を標榜するところが多くあります。私は理念としての文理融合は理解できます。が、学部・学科選びという点において、文理融合は保護者・高校生を惑わせることになっているのも事実です。
それから、文理融合を標榜する新設学部・学科はごく少数の教養系学部・学科を除けば、文系・理系のどちらかに偏っています。そのため、前身の教育内容に加えて教員の陣容を見ていけば、文系・理系のどちらに偏っているかが判別できます。
文理融合の学部・学科と見られる(あるいは大学が標榜している)新設学部だと、横浜国立大学都市科学部は都市社会共生学科が文系寄り、建築・都市基盤・環境リスク共生の3学科は理系寄りです。滋賀大学データサイエンス学部は理系寄り。一方、九州大学共創学部は文系・理系教員が拮抗しています。
3点目は入学後の生活です。保護者にしろ、高校生にしろ、教育内容か就職実績だけを注目しがちです。それだけでなく入学後の生活も注目していただきたいところ。と、言いますのも、新設学部・学科は既存の学部以上に、学生生活にもこだわっています。TOEICのスコアを取らないと進級できない、とするところもあります。また、国際系学部を中心に留学が必須というところもあります。
留学は半年から1年などの長期間を必須にする大学もあります。留学先の学費は日本の大学の学費に込みのところが大半でしょう。しかし、生活費・渡航費は自己負担です。入学金・授業料以上に渡航費・生活費等がかかる、ということもあり得るので注意が必要です。アジア圏かヨーロッパ圏かなど留学先や期間にもよりますが、高いと数百万円近い負担となります。
文系だと観光や地域、理工系だと環境、IT(データサイエンスを含む)などの分野がこの10年で注目され、関連学部・学科も増えています。こうした新設学部・学科も含めて、志望校候補を検討するといいでしょう。6月6日に日経HRより「価値ある大学2019年版 就職力ランキング」が刊行されます。この中で私も学部学科の解説をしておりますのでもしよければお読みください。
1975年札幌市生まれ。東洋大学社会学部卒。2003年から大学ジャーナリストとして活動開始。当初は大学・教育関連の書籍・記事だけだったが、出入りしていた週刊誌編集部から「就活もやれ」と言われて、それが10年以上続くのだから人生わからない。著書に『キレイゴトぬきの就活論』(新潮新書)、『女子学生はなぜ就活で騙されるのか』(朝日新書)など多数。